ある時期ある企業で、第一線に達した技術があった。
他社の競合製品よりも良好な性能を出しているらしかった。
論文ベースで見る性能はそのようだった。
その技術を実装したリファレンスボードを購入して評価したいと思った。
担当の営業さんとコンタクトをとって説明を受けて、見積りをとった。
しかし、そのリファレンスボードを評価することはなかった。
リファレンスボードを購入するには数セット単位で購入する必要があった。
そうすると金額が100万円程度になってしまう。
そのため、購入を断念してしまった。
サラリーマン開発者が、自分の裁量でどうにかできる金額ではない。
既存のボードを置き換えることができるのかどうか、未知のボードを「うまくいきます」と言って購入・評価を推進しきる勇気はなかった。
そのボードを使い切るには、入手できる公開情報があまりにも少なかった。
- NDAにがんじがらめなのか、そのボードを利用して何かを実行した情報は入手できなかった。
- 使いたい機能がハードウェアブロックとして実装されている。その機能の使い方のサンプルコードなどもなかった。
- CPUは、よくあるCPUとはかなり異なるものであるらしかった。
- また、OSもよくあるタイプとは違っていた。
それらの理由のため、サラリーマン開発者は、その製品を利用する可能性を断念した。
それから数年後、世界的な技術の進展は、その技術を陳腐化させてしまった。
私見:
- 技術には賞味期限がある。技術の優位性があるうちに売り切ることが必要だ。
- 技術はユーザーコミュニティがあってこそ技術である。ユーザーコミュニティを作ることに失敗すれば、どんな優秀な技術であっても、普及しないままになってしまう。
- 営業とコンタクトをとって見積りをとって、高価なボードを購入して、評価してみて、これを次の製品に使えるかどうか判断して、製品設計に主要な部品として選定させるのは、とても大変なことなのです。
- 評価版を無料で利用できるようにしよう。開発に関わる情報を利用しやすくしよう。
- 評価ボードが必要な場合には、価格を抑えて、提供しよう。開発者が評価・開発に着手しやすくすることが、量産に使いうる可能性を高めるのです。
次の記事のアプローチでは、技術を積極的に公開することによって、利用者のコミュニティを作ろうとする動きの一例になっています。