物理法則は、時間の一様性がある。物理法則は時間軸を平行移動しても、物理法則が保たれる。
一方、ヒトが感じる時間はそのような一様性はない。
最近読んだ本の2つで、時間の感覚について述べているのを見つけたので紹介する。
概要
・時間は報酬の選択に関係する。
・行動を選択するときには、報酬期待値を用いている。
・予測のつかない未来に対して行動を選択していく積み重ねの中で、報酬期待値の計算式じたいが設定されていく。
・「報酬の選択には時間のコストが織り込まれる」
・そのため、物理法則として時間ではなく、報酬の選択に影響するのは歪められた時間である。
「ここで提案したモデルは、私たちの歪んだ時間感覚を、時間コスト的に適切な意思決定を行うことの自然な結果として合理的に説明しうるものである。この理論は、それに関連して、時間の知覚に関わるほかの多くの事実も説明できる(一方、今後理論的に論証されるべき新たな予測も含んでいる)。」(#1 p196)
各書籍からの引用
1. 「40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた」第19話 脳は時間を正しく歪める
「報酬の選択には時間のコストが織り込まれる」
「主観的時間のありかたを説明できるTIMERR仮説」
「TIMERR仮説は時間感覚の誤差も説明する」
2.「脳にはバグがひそんでる 進化した脳の残念な盲点」第4章 時間感覚が歪む
「時間差があると因果関係がつかめない」
「時間による割引」
「あなたの時間感覚はあてにならない」
「時間的な錯覚」
「脳はどうやって時間を知るか」
「長期的な思考の効用」
両者の指摘の共通点
- 報酬の評価が関係していることが、2つの書籍中の記述で共通している。
2の書籍でさらに述べていること
- 脳の中での知覚は、順序さえも入れ替えを行なっている動的なものであることが述べられる。
- 「1秒ほどのこの短い尺度では、脳は時間をかなり勝手に書き換える。時間を歪ませるだけではなく、時系列の中での出来事を削除したり挿入したり、出来事が実際に起こった順序を入れ替えたりしているのだ」
- 100m先のジンバルの奏者が鳴らす音を同時に聞こえるよう、知覚を遅らせている。
- このような知覚的な限界は、審判員によるオフサイドの判定の難しさにもつながっている。「誤審の原因として、人が視線を移すのには100ミリ秒かかること、2つの出来事が同時に起こったとしたら、自分が注視していた出来事が先に起こったと判断しがちだという二つが挙げられる。」
- フラッシュラグ効果 閃光遅延効果
[1] デイヴィッド・J・リンデン 編著、岩坂 彰 訳 「40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた」
第19話 脳は時間を正しく歪める
[2] ディーン・ブオノマーノ 著、柴田 裕之 訳「脳にはバグがひそんでる 進化した脳の残念な盲点」
[3] Namboodiri et al., A general theory of intertemporal decision-making and the perception of time