先に「昆虫―驚異の微小脳」を紹介した。
この本を通して昆虫の脳のすごさを知った。その後「サイボーグ昆虫、フェロモンを追う」という書籍が出版されていることを知った。そこで、この本の紹介をしたい。
「サイボーグ昆虫、フェロモンを追う」(https://www.iwanami.co.jp/book/b265977.html)
私が思ったこと
- 生存・繁栄という目的に対して成功している仕組みが比較的小規模に実現しているのが昆虫であること。
- 現在の測定技術で測定可能な対象は、哺乳類の脳ではなく、昆虫の脳であるという趣旨の指摘である。
- そのことは、実験や理論を構築する上でも有意義な進展が可能なのは、哺乳類の脳の研究ではなく、昆虫の脳の研究であると考えるのは、私にも同意できる。
- 生物の進化について、一方が他方より優れているかどうかのような視点は、適切ではないことが確認される。
- 人は昆虫が見ることのできる紫外線を見ることはできない。
- また人には見えていない偏光を昆虫は見ている。偏光が見えることで、昆虫は太陽に位置を太陽が隠れていても太陽に位置を知ることができている。
- 人が視覚で認知する時間の応答速度と昆虫が認知する時間応答とは違っている。 時間応答が短いことは単純なロジックでも効果的に働くことが多い。 、
- 「昆虫はどう動作するか予め決められきっていて融通が効かない」という先入観は、昆虫操縦型ロボット http://www.brain.rcast.u-tokyo.ac.jp/research/bio_machine_theme1.html で否定される。 昆虫の脳が予期せず事態に対して適応して、カイコガ操縦するロボットを直進させることに成功している。
ロボットのモーターのゲインを非対称に(1:4)に制御した.この条件では,カイコガが直進しても左に旋回することになる.紙でカバーした条件(図2右)では,カイコガは回転するばかりだが,前方を見ることのできるカイコガ(図2左)は,ロボットの異常な動きを検知し,匂い源に向けて定位できるようにロボットの動きを補正する.
このようにカイコガにとって不自然な状況を作り出しても,カイコガは視覚情報をもとに補正を行い,フェロモン源へたどり着くことが示された.
実験対象が昆虫であることによる利点は多い。
- 蛍光タンパク質などを利用する実験が推進しやすい。
- ライフサイクルが短いことで、繰り返し実験を行うのがしやすい。
- 飼育に必要な面積が少ない。