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はじめに

NestJSは、モダンなNode.jsフレームワークであり、効率的でスケーラブルなサーバーサイドアプリケーションの開発をサポートします。

その設計はAngularにインスパイアされており、強力な型システムやデコレータを活用したコーディングスタイルが特徴です。特に、依存性注入(DI)の概念を取り入れることで、コードの管理とメンテナンスが非常に容易になります。

しかし、DIの概念は初心者にとっては難解であり、理解に時間がかかることがあります。私自身も最近NestJSのプロジェクトに参画した際、DIの概念を理解するのに苦労しました。この経験を基に、この記事ではDIの基本概念から実践的な使い方、さらにそのメリットについて詳しく解説します。

本記事の目的と対象読者

本記事の目的は、NestJS初心者に対してDIの基本的な概念とその実装方法をわかりやすく解説し、DIをプロジェクトに導入できるようになることです。

対象読者は、以下です。

  • NestJSを初めて使う開発者
  • 依存性注入について理解を深めたいと思っているバックエンドエンジニア

この記事を読むことで、DIの概念がどのようにNestJSで実装され、どのように活用されるのかを理解し、実際のプロジェクトに適用できるようになります。さらに、DIを活用することで得られる具体的なメリットについても学び、効率的な開発を進めるための基礎を築くことができます。

次のセクションでは、DIの基本概念について詳しく説明します。DIが何であり、なぜ重要なのかを理解することで、実際のコード例に進む前の基礎を固めましょう。

依存性注入(DI)の基本概念

DIとは何か

依存性注入(DI: Dependency Injection)とは、オブジェクトが他のオブジェクトに依存している部分を外部から提供する設計パターンです。DIを使用すると、オブジェクトは自らの依存関係を作成せずに外部から受け取ることができるため、コードの再利用性とテストの容易さが向上します。

DIの利点

  1. 依存性の管理が簡単になる
    DIを利用することで、クラス間の依存関係を明示的に管理できるようになります。これにより、依存関係の変更が容易になり、新たな依存関係を追加する際も簡単に対応できます。
  2. テストがしやすくなる
    DIにより、モック(模擬オブジェクト)を使ったテストが容易になります。テスト対象のクラスに対して、実際の依存オブジェクトではなく、テスト用のオブジェクトを注入することで、ユニットテストが効率的に行えます。
  3. コードの再利用性の向上
    DIを活用することで、共通の依存オブジェクトを複数のクラスで共有できるため、同じコードを何度も書く必要がなくなります。これにより、コードの一貫性とメンテナンス性が向上します。

DIの一般的な使い方

DIの基本的な使い方は、以下のステップで説明できます。

1.依存するクラスを定義する

export class ServiceA {
  getHello(): string {
    return 'Hello from ServiceA';
  }
}

2.依存オブジェクトを注入するクラスを定義する

import { Injectable } from '@nestjs/common';
import { ServiceA } from './serviceA';

@Injectable()
export class ConsumerB {
  constructor(private readonly serviceA: ServiceA) {}

  greet(): string {
    return this.serviceA.getHello();
  }
}

3.モジュールにプロバイダーとして登録する

import { Module } from '@nestjs/common';
import { ServiceA } from './serviceA';
import { ConsumerB } from './consumerB';

@Module({
  providers: [ServiceA, ConsumerB],
  exports: [ConsumerB],
})
export class AppModule {}

このように、DIを使うことで、ConsumerBクラスはServiceAクラスに依存していることが明示され、外部からその依存関係を注入できるようになります。

次のセクションでは、具体的なNestJSのプロジェクトにおけるDIの実践的な使い方について詳しく解説します。これにより、実際にDIを導入して活用するための具体的な手順が理解できるようになります。

NestJSにおけるDIの実践的な使い方

NestJSでは、DIがフレームワークのコア部分として組み込まれており、非常に簡単に利用できます。このセクションでは、NestJSプロジェクトでのDIの基本的な使い方をステップバイステップで説明します。

NestJSプロジェクトのセットアップ

まず、NestJSプロジェクトをセットアップします。以下のコマンドを実行して、新しいNestJSプロジェクトを作成します。

$ npm i -g @nestjs/cli
$ nest new project-name

プロジェクトが作成されたら、ディレクトリに移動します。

$ cd project-name

DIの基本的な設定方法

次に、DIを実際に使用するための基本設定を行います。以下に、サービスを作成してそれをコントローラーに注入する方法を説明します。

1.サービスの作成

まず、サービスを作成します。srcディレクトリに移動し、以下のコマンドを実行してサービスファイルを生成します。

$ nest generate service sample

src/sample/sample.service.tsが生成されます。このファイルを以下のように編集します。

import { Injectable } from '@nestjs/common';

@Injectable()
export class SampleService {
  getHello(): string {
    return 'Hello from SampleService';
  }
}

2.コントローラーの作成

次に、コントローラーを作成します。以下のコマンドを実行してコントローラーファイルを生成します。

$ nest generate controller sample

src/sample/sample.controller.tsが生成されます。このファイルを以下のように編集します。

import { Controller, Get } from '@nestjs/common';
import { SampleService } from './sample.service';

@Controller('sample')
export class SampleController {
  constructor(private readonly sampleService: SampleService) {}

  @Get()
  getHello(): string {
    return this.sampleService.getHello();
  }
}

3.モジュールにプロバイダーとして登録する

最後に、src/sample/sample.module.tsを以下のように編集して、サービスとコントローラーをモジュールに登録します。

import { Module } from '@nestjs/common';
import { SampleService } from './sample.service';
import { SampleController } from './sample.controller';

@Module({
  providers: [SampleService],
  controllers: [SampleController],
})
export class SampleModule {}

これで、SampleServiceはSampleControllerに依存性注入され、コントローラー内で利用可能になります。

サービスの作成と注入

DIを利用することで、サービスを作成し、それを他のクラスに注入するプロセスが非常に簡単になります。上記の例では、SampleServiceを作成し、SampleControllerに注入しました。このようにして、依存性の管理が容易になり、コードのメンテナンス性が向上します。

コントローラーへのDIの適用方法

コントローラーへのDIの適用は、コンストラクターインジェクションを使用して行います。コンストラクターで注入したいサービスを引数として受け取り、private修飾子を付けることで、クラスのプロパティとして利用できます。これにより、必要な依存関係を簡単に注入し、利用することができます。

次のセクションでは、DIのメリットとNestJSの利点について詳しく説明します。DIを導入することで得られる具体的なメリットや、NestJSが提供するDIの利点について理解を深めていきましょう。

DIのメリットとNestJSの利点

依存性注入(DI)を利用することで、コードの管理が容易になるだけでなく、他にも多くのメリットがあります。このセクションでは、DIの利点と、それがどのようにNestJSで活用されるのかを詳しく説明します。

依存性の管理が簡単になる

DIの最も大きな利点の一つは、依存性の管理が容易になることです。DIを使わない場合、クラス内で依存するオブジェクトを直接生成する必要があり、依存関係が増えるとコードが複雑になります。一方、DIを使用することで、依存オブジェクトを外部から注入することができ、クラス間の依存関係を明示的に管理できます。これにより、依存オブジェクトの変更が容易になり、新たな依存関係を追加する際も簡単に対応できます。

テストのしやすさ

DIを利用すると、テストの容易さも大幅に向上します。モック(模擬オブジェクト)を使ったテストが簡単に行えるようになり、ユニットテストが効率的に実施できます。例えば、あるサービスが別のサービスに依存している場合、テストの際に実際のサービスではなくモックを注入することで、テスト対象のクラスのみを独立して検証できます。

import { Test, TestingModule } from '@nestjs/testing';
import { SampleService } from './sample.service';
import { SampleController } from './sample.controller';

describe('SampleController', () => {
  let sampleController: SampleController;
  let sampleService: SampleService;

  beforeEach(async () => {
    const module: TestingModule = await Test.createTestingModule({
      controllers: [SampleController],
      providers: [
        {
          provide: SampleService,
          useValue: { getHello: () => 'Hello from Mock Service' },
        },
      ],
    }).compile();

    sampleController = module.get<SampleController>(SampleController);
    sampleService = module.get<SampleService>(SampleService);
  });

  it('should return "Hello from Mock Service"', () => {
    expect(sampleController.getHello()).toBe('Hello from Mock Service');
  });
});

コードの再利用性の向上

DIを使用することで、共通の依存オブジェクトを複数のクラスで共有できるため、同じコードを何度も書く必要がなくなります。これにより、コードの一貫性が保たれ、メンテナンス性が向上します。例えば、データベース接続や設定情報など、複数のクラスで共通して使用する依存オブジェクトを一度定義して注入することで、コードの重複を避けることができます。

NestJSが提供するDIの利点

NestJSは、DIをフレームワークのコア部分に統合しているため、DIの設定や利用が非常に簡単です。NestJSのDIコンテナは、クラスのデコレーターを利用して依存関係を定義し、注入するための強力な仕組みを提供します。また、モジュール単位で依存関係を管理するため、アプリケーション全体の構造が明確になり、大規模なプロジェクトでも容易に管理できます。

まとめ

DIの基本概念とNestJSにおける実践的な使い方を学びました。依存性の管理が容易になり、テストがしやすく、コードの再利用性が向上することを理解いただけたかと思います。NestJSの強力なDI機能を活用して、効率的な開発を進めてください。

今後の学習には公式ドキュメントやコミュニティのリソースを活用すると良いでしょう。DIの導入を通じて、より良い開発体験を得られることを期待しています。

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