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線形代数の基礎 第8回 - 行列式(3)

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 本稿は、線形代数を独学でやり直し勉強した時のメモです。せっかくなのでアウトプットしようと思って書き始めました。詳しくは第1回の説明をご参照ください。今回は、行列式の説明の3回目です。前回からとても(3年くらい)間が空いてしまい、以前この投稿を読まれていた方はすでに線形代数はマスターしてしまっているかも知れませんが、まだたまにLGTMや続きのご要望をいただくこともあるので、続きを書いてみることにしました。

 今回ですが、前回の内容を使って、行列式を求める例題を解いてみることにします。また、例題を解くにあたり、前回ご説明しそびれていた行列式の性質をご紹介します。

1. 行列式の性質(前回の続き)

1.1. 【性質6】転置行列の行列式

転置行列の行列式は、元の行列の行列式と等しくなります。つまり、

$$
|A^t| = |A|
$$

となります。証明は省略しますが、前回までにご説明しました通り、行列による符号付きの拡大率を表したものが行列式なので、なんとなくイメージつくと思います(よね?)。

1.2. 【性質7〜9】行の操作に関する行列式の性質

性質6はとても便利で、この性質により、前回列に対してご説明した性質は、すべて行についても成り立つということになります。つまり、

  • 【性質7】ある行と別の行を入れ替えた行列式は元の行列式に-1をかけたものになる。(前回の性質1に相当)
  • 【性質8】ある行に、他の行の定数倍を書けたものの行列式は、元の行列式と等しい。(前回の性質2に相当)
  • 【性質9】前回の性質5は、行に対しても成り立つ。 ということになります。

性質6を用いて元の行列を転置した後に、前回ご紹介した性質を使うことにより、これらの性質が成り立つことは確認することができます。

2. 具体的に、行列式を解いてみる

 次に、具体的な例題として、行列式をこれまでご説明した性質を使って、次の行列式$|A|$を解いてみようと思います。

$$
|A|=
\left|
\begin{matrix}
2 & -4 & 1 & -2 \\
0 & 2 & 0 & 1 \\
1 & 3 & -1 & 0 \\
-1 & 1 & 2 & 2
\end{matrix}
\right|
$$

まず、2列目から4列目x2を引きます。このとき、性質1より、求めたい行列式と新しい行列式の値は等しくなります。

$$
|A|=
\left|
\begin{matrix}
2 & -4-(-2) \times 2 & 1 & -2 \\
0 & 2-1 \times 2 & 0 & 1 \\
1 & 3 & -1 & 0 \\
-1 & 1-2 \times 2 & 2 & 2
\end{matrix}
\right| =
\left|
\begin{matrix}
2 & 0 & 1 & -2 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
1 & 3 & -1 & 0 \\
-1 & -3 & 2 & 2
\end{matrix}
\right|
$$

次に、1行目と2行目を入れ替えます。この時、性質7より、行列式は負号が反対になります。
$$
|A|= -
\left|
\begin{matrix}
0 & 0 & 0 & 1 \\
2 & 0 & 1 & -2 \\
1 & 3 & -1 & 0 \\
-1 & -3 & 2 & 2
\end{matrix}
\right|
$$

さらに、1列目と4列目を入れ替えます。また負号が反転します。
$$
|A|= -
\left|
\begin{matrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
-2 & 0 & 1 & 2 \\
0 & 3 & -1 & 1 \\
0 & -3 & 2 & -1
\end{matrix}
\right|
$$

1行目の2〜4列目の値が0なので、性質9が使えて、
$$
|A|= 1 \times
\left|
\begin{matrix}
0 & 1 & 2 \\
3 & -1 & 1 \\
-3 & 2 & -1
\end{matrix}
\right|
$$

さらに、3列目から2列目x2を引いても行列式の値は変わらないので、
$$
|A|= 1 \times
\left|
\begin{matrix}
0 & 1 & 2 - 1 \times 2 \\
3 & -1 & 1 - (-1) \times 2\\
-3 & 2 & -1 - 2 \times 2
\end{matrix}
\right| = 1 \times
\left|
\begin{matrix}
0 & 1 & 0 \\
3 & -1 & 3\\
-3 & 2 & -5
\end{matrix}
\right|
$$

次に1列目と2列目を入れ替えると、負号が反転し、
$$
|A| = -1 \times
\left|
\begin{matrix}
1 & 0 & 0 \\
-1 & 3 & 3\\
2 & -3 & -5
\end{matrix}
\right|
$$

さらに、また性質9を使うと、
$$
|A| = -1 \times 1 \times
\left|
\begin{matrix}
3 & 3\\
-3 & -5
\end{matrix}
\right|
$$

残った行列式は、$2 \times 2$行列の行列式なので、高校で習う行列式の公式$ad-bc$を使って計算すると、めでたく行列式を求めることができます。
$$
|A| = -1 \times 1 \times (3 \times (-5) - (-3) \times 3) = 6
$$

3. まとめ

 今回は具体的に行列式の例題を解いてみました。実際の業務では、自分で行列式を解くことが必要な場面はほとんどないと思いますが、前回と今回でご紹介した行列式の性質、さらには、その背景にある、「行列式は負号付きの拡大率」ということの理解はとても重要だと思います。

 次回は逆行列の説明を考えています。(あまり間が空かないで投稿するようにできればと。。)

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