はじめに
@nobookと申します。
LITALICOでSaas事業全般のプロダクト責任者をしております。
LITALICOは事業拡大・新規事業・M&A等を駆使し事業を伸長させており、ここ数年でエンジニアのみならずプロダクトマネージャーも多く採用しております。
組織の増員具合では日本屈指の伸びで、ここ数年で大体以下のくらいの規模にまでなりました。
- エンジニア: 約200名
- デザイナー: 約30名
- プロダクトマネージャー: 約20名
2021年4月からはプロダクトマネージャー専門組織ができ、事業部と兼務しながら高度化していくプロダクトマネージャーという職種の人材育成・評価・ナレッジ共有を強化しております。
そんなPDM組織の中で月に1回程度プロダクトマネージャー組織で持ち回りでナレッジ共有や勉強会を行っております。
本記事ではその中で私が行った勉強会の資料の一部を紹介しようと思います。
本記事の内容について
プロダクト戦略の作り方は、事業の大きさやフェーズ等の状況に異なると思います。
戦略の作り方には流派もありますし、これが正解というわけではなく、あくまでひとつの事例です、という形で勉強会をしておりますので、それを念頭に読んでいただければと思います。
今回はM&Aしたばかりのプロダクトを預かり、どうすれば伸ばせるのか、というissueをもらった際の実際の例です。
以下のようなプロセスで組み立てていきましたので、順を追って記事を進めていきます。
1. プロダクトの方向性を決める
2. 市場調査
3. プロダクト戦略策定
4. ロードマップ策定
プロダクトの方向性を決める
まずはミッション・ビジョンの策定から始めました。
個人的にこの作業をかなり大事にしております。
なぜ大事かというとプロダクト開発、ひいては事業には多くの方が関わります。
どこを目指しているのかきちんと言語化することで、目線を合わせるために必要と考えております。
ミッション・ビジョンつまり目的地、これを島と例えるとプロダクトは船だと思います。目的地次第でどういう装備が必要なのか、どんな船があっているのか、それがボートなのかクルーザーなのか、といった具合です。
逆に目的地がないと何がどれくらい必要なのかわかりません。
また日々の業務では以下に売上やシェアを伸ばすかとの戦いです。
「なんでこんな仕事しているんだっけ・・?」と思うこともあり視座が下がる場面もあると思います。
メンバーと意見もぶつかることもあると思います。
そんな時にこういった指針が大きな支えになると思います。
具体的には
「〇〇のような世界をつくれている状態」
という具合で設定しています。
さらにそこに達成するまでのプロセスの認識合わせも行いました。
この策定には自社ビジョンの接続や自社でやる意義などを各ステークホルダーと議論して言語化していきました。
市場調査
目指すべき指針を決めつつ市場調査を同時並行で行います。
いわゆる3Cと呼ばれる、マクロ環境・競合環境・自社環境それぞれ進めていきます。
マクロ環境調査
マーケットが公費・保険事業でので政府が作っているマーケットです。
政府の考え方次第でマーケット構造が多く変わるので、内閣府や各省庁の資料を読み込みます。
↑上記のように各資料ではきれいに現況がまとめられています。
福祉現場の経営状況や、今後目指す方向性、マーケット予測まで書かれていますので、
市場を知るには他業界に比べるとeasyに環境だと思います。
他の業界だと矢野経済レポートやきんざい、他社決算資料等が有効だと思いますし
実際私も矢野経済レポートや他社決算資料を確認しました。
その他にはユーザーインタビューをして現場感を確認したり、展示会に参加し定性情報を集めました。
競合環境調査
競合調査に関しても特別なことはしていないです。
toBプロダクトですので情報が取得が難しく、とにかく足を使っています。
1. 他社のHP
2. 営業やCSからの情報
3. 有料の情報ソース
4. 展示会参加
5. 既存顧客事業所からの情報
これらを駆使して競合と自社の差分をマッピングして確認していきます。
自社プロダクト調査
自社分析では主要KPIはもちろんどういった層が購買しているのか
何がKBFになっていのか仮説を立てる。その上で今後強みになりそうなこと、業界に求められそうなことを考えています。
個人的にtoBはtoCに比べると数値分析がしづらいため(結果が返るのが遅い)
営業やCSの現場感覚は結構大事にしています。結局現場が売れるか売れないかだけなので。
その他調べたこと
1. 顧客単価などの主要KPI
2. セグメント毎の失注受注理由
3. 利用されている機能分析
4. ユーザーインタビュー
以上の情報を集めつつ競合と照らし合わせてプロダクトマッピング表を作成します。
ここまではきれいにまとめることはせず、雑めにあつめて事業側の部長とお互い持ち寄って仮説を週次くらいでぶつけあっては持ち帰る、みたいなことをしておりました。
プロダクト戦略策定
ここからは集めた材料の調理です。
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを決める作業です。
個人的にはセグメントをどう切るかがtoBのPDMとしてのセンスが問われるところかな、と思います。
ですのでセグメントはとにかく色々な角度で何度も切りました。
社内の資料なので一部欠けた状態でしかお見せできませんが、
各列をセグメントできって、KBFは何か、どれくらいの市場があるのか想定競合はどこか思考しております。
上記は一例でこういった図や資料がたくさん作り、プロダクトのイメージやターゲットとするところを決めました。
ポジショニングは図におこして各企業どういったところに注力しているか可視化。
最終的にはセグメント・ポジショニング・ターゲティングを明確にし
開発すべき機能と価格のバランスを決めて戦略の最終像をステークホルダーと合意します。
(本記事では公開できませんが、ここまで色々資料を作っており、社内の勉強会では体験談を交えながらすべて公開しております。)
プロダクト戦略を決めると同時にコンセプトワークを行いプロダクトコンセプトも策定しました。
コンセプト策定の詳細はどこかまた別の機会で。
ロードマップの策定
開発からざっくり見積りをもらう
戦略が決まったら開発リーダーに作りたい機能を伝えます。
ここでは一枚絵に近い資料を作成し、達成したい要求を伝えます。
実際利用した資料と少し異なりますが、最近リリースされた通所介護向けのタブレットアプリは上記のような感じでイメージを伝えております。
開発課題のヒアリング
プロダクトは長期的な戦いです。
戦略を実行していくためには安定した稼働が必要で、
開発側で認識している技術的負債やその他課題など解決しなければならないことをヒアリングします。
ここで大事なのはそれが今すべきなのか、後でもよいのかとことん議論し計画に盛り込んでいきます。
仮ロードマップ策定
細かい開発は除いて大きいテーマだけピックして、ロードマップを引いてみる。事業側の部長とここでいつ出すべきか、いつ出したいか、議論をする。
同時に開発とも会話、この開発規模とペース・組織ケイパだと3チームくらいは必要だね、みたいな感じで現実可能なラインを引いてみます。
体制の検討
どういう人がほしいか、現状体制からどうやって増やしてアサインどうするかエンジニアリーダーと議論。
何度も議論をし、スキルがどれくらいの人かも含めてより精緻にすり合わせをし、新規採用なのか異動なのか業務委託なのかを決めていきます。
どのタイミングで何をしているかを表に埋めます。
現実的なロードマップなのか、事業部の求めるペースなのか調整を行います。
ロードマップ策定
開発費を計算し、ざっくりReturnも計算し、ROIが合うのかを確認します。
このときに事業側の部長とどれくらいプロダクト改善効果を見込むのかもすり合わせを行います。
PLの作成
開発と相談しつつ必要なコストを試算しプロダクト・開発PLを策定していきます。
強気に増員した場合や、成り行きの場合のロードマップ・PLを何パターンか策定します。
事業側のPLと合体させいくつかのプランを経営陣に提出しておしまいです。
最後に
長くなりましたが最後までお目通し頂きありがとうございました。
会社と組織の話になりますが、LITALICOでは新規開発のみならずM&Aなども多く、結果プロダクトが多いためイチプロダクトマネージャーが戦略を描く場面は多々あり、プロダクトマネージャーとしては裁量権が大きい会社だなと思います。
今回のような事例も多くあり、冒頭お伝えした通り、LITALICOのプロダクトマネジメント組織では事例紹介や勉強会等をプロダクトマネージャー同士で盛んに行っており、スキルを高めております。
(今回の記事もぼかしなどが入っておりますが、勉強会ではより詳細に公開しております。)
↑いつでも各プロダクトマネージャーの勉強会や起案資料が見れるPDMwikiもあります。
最後になりますがLITALICOに興味がわいた、プロダクトマネージャーとして活躍してみたい、という方がいらっしゃったら是非ご連絡ください!
LITALICO社のHPはこちら
来年もどうぞLITALICOをよろしくお願いします!