大学生、モルモットです。
本記事は、次の記事の内容を私なりにまとめて紹介するものになります。
#0. 対象読者
** ・ゲームのUXデザインに興味がある方**
** ・ゲームや、ゲーム関連の雑学が好きな方**
** ・アーケードゲームの話題を聞いてノスタルジーに浸りたい方**
** ・ガチャが爆死して正気を失いつつある方**
#1. 記事の概要
長年、ゲーム業界で活躍されてきた著者曰く。
** 「アーケードゲームと基本プレイ無料ゲーって、意外と似てない?」**
アーケードゲーム
アーケードゲームは、ゲームセンターなどで見かける、四角い筐体に100円やらを入れてプレイするゲーム。パッと思い浮かぶ筐体で世代がばれるという誘導尋問装置としての役割も兼ね備えています。1
Free-To-Playゲーム(ソシャゲ)
一方のFree-To-Playは、おそらく現代社会において最も多くの人にプレイされているゲームの形式。『Apex Legends』に代表されるシューター系のゲームや、一世をうまぴょいしているソシャゲなどがこれに該当します。クオリティの高い無料ゲームが次々と登場しており、最近では「ゲームは無料じゃなきゃ高い」という風潮があるほど。2
記事の目標
元記事の目標:一見するとあまり似ていない両者の類似点を紹介する。
本記事の目標:元記事の内容を、現状と照らし合わせてみる。
初投稿ということで申し訳程度に流行りに乗っかったタイトルを付けた結果、ほぼタイトル詐欺になってしまいましたが、お楽しみいただけたら幸いです。
#2. 元記事の内容:アーケードゲームと無料ゲームはここが似ている
2-1. 似てるポイント①:お金を回収するプロセス
はじめに、比較対象としてコンシューマーゲームの場合を考えます。
上の図のように、コンシューマーゲームは、プレイするためにまとまった額を支払ってゲームを購入する必要があります。つまり、収益をあげることが目的の企業からしてみれば、**ゲームがプレイされた時点で「勝ち」**なわけで、プレイヤーが実際のプレイでどんな感情を抱こうが関係ないわけです。(かといってプレイヤーを釣るのが目当ての酷いゲームばかり作っていたら、企業として問題ですが...)
一方のアーケードゲームと基本プレイ無料ゲームはどうでしょうか。
アーケードゲームの場合
まず、アーケードゲームでは、1回のプレイで支払われる高々数百円で制作費その他を回収することは不可能です。利益をあげるためには、その筐体が人気になって、多くのプレイヤーから多くの100円玉をもらう必要があります。つまり、アーケードゲームにとって真の勝負は、プレイヤーに気に入ってもらえるか否かであるといえます。
Free-To-Playゲーム(ソシャゲなど)の場合
次に、Free-To-Playゲームです。こちらはもはや、プレイされただけでは1円たりとも回収できず、いかにプレイヤーに課金してもらえるかが正念場です。長時間プレイされればその分、課金してもらえる可能性も上がるので、つまるところこちらもプレイヤーに気に入ってもらえるか否かが勝負といえます。
上の図からもわかるように、アーケードゲームとFree-To-Playゲームにとって、プレイヤーが最初にプレイした時に抱く第一印象が、命運を大きく分ける重大な要素です。
2-2. 似てるポイント②:中毒性・周回性
コンシューマーゲームにおいては、中毒性というのは、それほど重視しなくてもいい要素といわれています。RTAや周回プレイなど、あえて味がしなくなるまで噛みしめる楽しみ方もありますが、それを前提としたゲームを作る必要性は比較的低いでしょう。
これは私なりの解釈ですが、コンシューマーゲームは階段に例えられるのではないかと思います。
プレイヤーは階段をのぼり切ること(=ゲームのクリア)が目的ですので、制作者も、そのニーズに向けて階段を作ります。つまり、1回だけでもめちゃくちゃのぼり甲斐のある階段ができれば、双方にとって無問題といえるのです。
アーケードゲームの場合
対するアーケードゲームでは、反対に中毒性は非常に重視すべき要素とされています。それは、究極、アーケードゲームが同じことの繰り返しだからだと考えられます。
やや強引な例えですが、アーケードゲームを、壊れるたびに修理される壁を壊す競技みたいなものとしてみます。
プレイヤーの目的は、ゲームのクリアというより、その競技をいかに極められるか・いかにハマれるかです。そして、古参新参プロアマ関係なく、プレイする度に一枚目の壁は毎回壊さないといけません。そのため、一枚目の壁が堅すぎたり(=難易度が高すぎたり)、壁を壊すのに邪魔が入ったりする(=操作性が悪かったり、バグが起こったりする)と、何回も同じことを繰り返すうちにプレイヤーはイライラし、ゲームから離れてしまいます。そのため、制作者は、ちょうどプレイヤーが気持ちよくなれる壁の堅さを血眼で追究する必要がありました。
Free-To-Playゲームの場合
Free-To-Playゲーム、特にシューター系でも、このあたりの事情はかなり似ています。いかにハマれるゲームかというプレイヤーの期待に応えるためには、ある程度の中毒性、つまりプレイヤーが気持ちよくなれる要素を仕込む必要があります。
例えば、ランクマッチで初心者から中級者へと1段階レベルアップするための条件は「10000回勝利しないといけない」といった理不尽なものより「1試合で1ポイント稼げればOK」という簡単なもののほうが、プレイヤーは「もう初心者から脱却してやったぜ!」と気持ちよくなってくれるはずです。また、操作性やバグフィックスを突き詰め、繰り返しの作業をなるべく快適にすれば、よりプレイヤーはゲームを気に入ってくれるでしょう。
ちなみに、アーケードゲーム開発では、気持ちよくなれるゲームをつくるための工夫として**「先にゲーム全体をだいたい完成させてから1ステージ目をつくる」**ということを行っていたようです。ゲームの操作や機能が決定・洗練されたあとで最初の部分を作ることにより、バランスのとれたデザインが可能になるのだとか。
2-3. 似てるポイント③:難易度調整
アーケードゲームの場合
さて、みなさんは、一部のアーケードゲームには難易度の自動調節機能が搭載されていたということをご存知でしょうか?例えば、シューティングゲームだと、開始直後にプレイヤーがやられると、ゲームがプレイヤーを初心者と判断し、敵がわざと弾を外すようにしてくれる、といった感じです。
このように、アーケードゲームでは、プレイヤーのデータを計測し、他のプレイヤーデータと比較したりすることによって、そのプレイヤーがちょうど気持ちよくなれるレベルに難易度を調節する工夫がなされていました。
Free-To-Playゲームの場合
Free-To-Playゲームでも、同じような工夫としてスキルベースマッチメイキングと呼ばれる仕組みがあります。こちらは、ゲーム開始直後の初心者がe-Sport大会に出場するような猛者とばかり勝負することになって萎えたり、逆に上級者が初心者とばかり当たって飽きることがないように、同程度の実力をもつ相手と勝負できるようにする仕組みです。プレイヤーをランクや段位で分けるシステムが主流ですね。
2-4. 似てるポイント④:お金を払うプレイヤーの心理
これは①と似ておりややこしいですが、①が「企業視点でのお金の話」だったのに対して、こちらは「プレイヤー視点でのお金の話」であるという違いがあります。つまり「お金を払うときにプレイヤーはどんなことを感じているか」という話です。
アーケードゲーム/Free-To-PLayゲームのプレイヤーがコインを入れる/課金するとき、次のような心理が働いているそうです。
まず1. についてです。1回プレイにかかる金額はたかだか数百円、1回課金するごとにかかる金額はせいぜい1万円です。3そのため、お金を払うことに対する抵抗をそれほど感じることなく、プレイヤーはお金を払います。
次に2. について。アーケードゲームでゲームオーバーとなったとき、カウントダウンとともに「Continue?」的な表示がされているのを見たことがあるでしょうか。どうやらあれは、プレイヤーを焦らせてお金を払わせるために、ゲーム制作者側がわざと仕組んでいるものらしいのです。Free-To-Playゲームの場合は、お金を払わないと強い武器やレアなキャラクターが手に入らないシステムが、これに該当します。
このように、平常心を揺さぶる仕掛けによって、プレイヤーはお金を払います。
最後に3. について。これは2. の延長的な内容です。お金を払ったことで、前回クリアできなかったステージをクリアしたり、重課金プレイヤーにリベンジを成し遂げたり、ゲートが虹色に光ったりしたとき、プレイヤーは最高にハイになります。そういった満足感を得るために、プレイヤーはお金を払います。
2-5. 似てるポイント⑤:ベータテストの仕組み
ベータテストとは、ざっくり言うと試運転のことです。十人十色のプレイヤーたちの要求をすべて満たすゲームを最初からデザインするのはほぼ不可能です。そのため、ほとんどのゲームは、ある程度完成形に近付いた段階で、実際にゲームを動かしてみたり、プレイヤーの反応を参考にして修正を重ねたりすることによって、より完璧なゲームへと近づけていく、という制作方針をとっています。
コンシューマーゲームの場合、ベータテストはふつう発売・リリース前に内輪で行われます。「ゲームの各種機能が実装できているか」とか「プレイヤーがゲームの目的を理解できるか」といったことを確認するのが、ベータテストの主な目的となります。この場合、外部のプレイヤーの反応を受けて微調整するのは、ベータテストの後です。
アーケードゲームの場合
一方のアーケードゲームでは、ベータテストはなんと筐体設置後にリアルタイムで行われたそうです。つまり、まだ不完全かもしれないゲームを衆目に晒すわけです。「不完全なゲームなんて置いても、誰もプレイしなくなるだけでしょ」と誰しも思うでしょう。が、制作者に言わせれば**「不人気な筐体は不完全ってことだから、人気になるよう修正すればいい」**わけです。そのように合理的な逆転の発想で、ある筐体の調整が終わったら、また別の不人気な筐体を調整して...と、ベータテストの実施と調整の作業を連鎖的に行っていたようです。
Free-To-Playゲームの場合
Free-To-Playゲームでも、この**「逆に考えるんだ。「不完全でもいいさ」と考えるんだ」的発想によるリアルタイムなベータテストが行われます。ただ、アーケードゲームとは決定的に異なる部分が1つあります。それは公開される範囲が圧倒的に広い**ことです。1回の調整が終わると、直後に世界中の大勢のプレイヤーがゲームに流れ込んできます。そのため、調整に失敗したときにプレイ人口を失うリスクが、アーケードゲームの場合に比べて大きく、ゆえに調整には細心の注意が必要です。
以上、多少の相違点こそあれ、アーケードゲームとFree-To-Playゲームは、ベータテストが実際のゲームと一体化しており、ゲームが存続する限り、常にベータテストも続けられなくてはならないものである、と言い換えられるのではないでしょうか。
2-6. まとめ
以上のように、アーケードゲームとFree-To-Playゲームとの間には、意外にも多くの共通点があることが分かります。そういった類似点に着目すると、前者のデザインを後者のデザインに参考・応用することもできそうです。
ゲームのデザインに関しては、総じて次のことが言えます。
ゲームの第一印象が、そのゲームの運命を分ける。
そのため、ゲームのデザインに関して、主に次のようなことが重視されるでしょう。
・プレイヤーを混乱させないように、操作や画面を簡潔にする。
・プレイヤーをイライラさせないように、バグをできるだけ排除する。
・プレイヤーを萎えさせないように、レベルデザインは慎重に行う。
#3. 本記事で追加したい内容:記事の内容は現代でどこまで通用するのか?
元記事は非常に面白いのですが、投稿されたのが2011年と、かなり時間が経過しています。そこで、より記事の内容を有意義なものにすべく、元記事の内容と2021年現在の状況を照らし合わせてみます。
3-1. コンシューマーゲームにも中毒性は必要?
元記事では「コンシューマーゲーム開発では、中毒性はそんなに重視されない」といった旨の記述がありましたが、個人的にこれは現代では変わりつつある考えだと思います。
というのも、最近はゲームのアップデートが容易になったことで、ゲームのストーリーに大きく関わる部分をアプデで追加するというタイトルも増えてきています。そのため、アップデート準備中にプレイヤーに飽きられないために、コンシューマーゲームにも、ある程度の中毒性みたいなものは要求されるのかなと思います。
3-2. 課金の沼
言うまでもなく、2011年と比べれば、ゲーム業界やそれを取り巻くテクノロジーはめちゃくちゃ変化しました。ただ、ヒトの本質は当時と今とで、あまり変わらないのではないでしょうか。実際、さんざん取り沙汰されてきた課金のシステムは、10年経った当時と今とであまり変化がないように感じます。
課金したくなる人の心理はしばらく(永遠に?)変化しないと予想されるので、課金を促すためのシステムは、当分今のままの形で重宝されるのではないかと思います。
#4. 参考資料など
・今回の記事を書くきっかけとなった本『ゲームインターフェイスデザイン』
・紹介させていただいた xavi fradera 氏の記事
なお、同氏のWebSiteは、日本のIPアドレスからだとアクセスできないようです...
結び
今回の記事は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今後も、ゲームデザインなど個人的に勉強している内容や、制作中のゲームの開発報告など、Qiitaウケが良さそうな情報は共有していけたらと思います。
今回の記事に関して、質問や修正など何かありましたら、コメントや紙屋のTwitterのDMなどでお知らせいただけると幸いです。
最後に、記事の紹介を快諾していただいた xavi fradera 氏に、この場を借りて感謝申し上げます。