1.はじめに
海岸工学分野で使われる風波の周波数スペクトルとして、ブレットシュナイダー光易型と修正ブレットシュナイダー光易型がよく使われますが、修正ブレットシュナイダー光易型から計算した有義波高が、スペクトル計算に使用した有義波高より大きいようなので、どれくらい大きいのか確認してみました。
2.風波の周波数スペクトル
2.1.ブレットシュナイダー光易型
今回気になっているのは修正ブレットシュナイダー光易型ですが、元になったブレットシュナイダー光易型のスペクトルについても調べてみます
S(f) = 0.257 H_{1/3}^2 T_{1/3}^{-4} f^{-5} exp[-1.03(T_{1/3}f) ^{-4}]
2.2.修正ブレットシュナイダー光易型
光易のブレットシュナイダー光易型に、合田が修正を加えたものが修正ブレットシュナイダー光易型です
S(f) = 0.205 H_{1/3}^2 T_{1/3}^{-4} f^{-5} exp[-0.75(T_{1/3}f) ^{-4}]
3.スペクトルから計算した有義波高
周波数スペクトルと有義波高H1/3'の関係は
H_{1/3}^{'} = 4.004\sqrt{\int_0^\infty{S(f)df}}
となります。上述の周波数スペクトルは
S(f) = A f^{-5} exp[-B f ^{-4}]
と書けます。ここで、AとBは
<ブレットシュナイダー光易型>
\begin{align}
A &= 0.257 H_{1/3}^2 T_{1/3}^{-4} \\
B &= 1.03T_{1/3} ^{-4} \\
\end{align}
<修正ブレットシュナイダー光易型>
\begin{align}
A &= 0.205 H_{1/3}^2 T_{1/3}^{-4} \\
B &= 0.75T_{1/3} ^{-4} \\
\end{align}
これの不定積分ですが、自分で間違えずに式変形出来る気がしないのでWolframAlphaに相談します。まずWolframAlphaに理解してもらえるように
\int{S(x)dx} = \int{A x^{-5} exp[-B x ^{-4}]dx}
として、これを表すテキスト
integral(A x^(-5) exp(-B x^(-4))dx)
をWolframAlphaに入力してリターンすると
\int{S(x)}dx = \frac{A}{4B} exp[-B x ^{-4}] + 定数
となります
limit(exp(-Bx^(-4)))
を同じくWolframAlphaに入力してリターンすると、Bはプラスなので
\displaylines{
\lim{x \to 0}\big(exp[-B x^{-4}]\big) = 0 \\
\lim{x \to \infty}\big(exp[-B x^{-4}]\big) = 1 \\
}
となることから
<ブレットシュナイダー光易型>
\begin{align}
\int_0^{\infty}{S(x)dx} &= \frac{A}{4B} \\
&= \frac{0.257 H_{1/3}^2 T_{1/3}^{-4}}{4 \times 1.03T_{1/3} ^{-4}} \\
&= \frac{0.257 H_{1/3}^2}{4 \times 1.03} \\
\end{align}
<修正ブレットシュナイダー光易型>
\begin{align}
\int_0^{\infty}{S(x)dx} &= \frac{A}{4B} \\
&= \frac{0.205 H_{1/3}^2 T_{1/3}^{-4}}{4 \times 0.75T_{1/3} ^{-4}} \\
&= \frac{0.205 H_{1/3}^2}{4 \times 0.75} \\
\end{align}
スペクトルから計算される有義波高は
H_{1/3}^{'} = 4.004\sqrt{\int_0^\infty{S(f)df}}
<ブレットシュナイダー光易型>
\begin{align}
H_{1/3}^{'} &= 4.004\sqrt{\frac{0.257 H_{1/3}^2}{4 \times 1.03}} \\
&= 2.002\sqrt{\frac{0.257}{1.03}} H_{1/3} \\
\end{align}
<修正ブレットシュナイダー光易型>
\begin{align}
H_{1/3}^{'} &= 4.004\sqrt{\frac{0.205 H_{1/3}^2}{4 \times 0.75}} \\
&= 2.002\sqrt{\frac{0.205}{0.75}} H_{1/3} \\
\end{align}
4.スペクトルから計算した有義波高がスペクトル計算に使用した有義波高の何倍になっているか
<ブレットシュナイダー光易型>
\frac{H_{1/3}^{'}}{H_{1/3}} = 2.002\sqrt{\frac{0.257}{1.03}} = 1.0000
<修正ブレットシュナイダー光易型>
\frac{H_{1/3}^{'}}{H_{1/3}} = 2.002\sqrt{\frac{0.205}{0.75}} = 1.0467
5.終わりに
ブレットシュナイダー光易型では、スペクトルから計算した有義波高がスペクトル計算に使用した有義波高と同じ値になりますが、修正ブレットシュナイダー光易型ではスペクトルから計算した有義波高の方が4.7%大きくなります。修正ブレットシュナイダー光易型が発表された1987年頃は、有効数字2桁あれば十分な時代だったのかもしれません。出来れば有効数字3桁で再調整して頂けると幸いです。