はじめに
SENSYN ROBOTICS(センシンロボティクス) Advent Calendar 2019 の 10日目 担当の @nishimoto_ です。
XYZprinting社のda vinci 1.0 proという3Dプリンタを使用して部品を制作しています。3Dプリンタで出力すれば、ボタンひとつ押せば完璧に美しい造形ができる、楽勝楽勝、とたかをくくってたら、大変痛い目に会いました。そこで得られた経験をTipsとして公開したいと思います。
このda vinci 1.0 proは10万円程度で買えます。「十分な性能をもった3Dプリンタがこの価格で買える」というコスパの良さから購入された方は多いと思います。しかし、いざ知りたい情報を検索しても、ほとんど出てこない。「まいった、自分で試行錯誤するしかないか・・・」と苦労の日々でした。そういう点からも、本機種に関する情報共有は役に立つんじゃないかと思った次第です。
いまはこんな風に、作りたいものを造形できるようになりました。
本記事では失敗例と対策を紹介します。私はABSのフィラメントを使っているのでPLAだとまた勝手が異なっているかもしれません。
失敗例 1 フィラメントが古い
フィラメントの劣化
前提として私が3Dプリンタの常識を知らなかったことが根本原因なのですが、フィラメントが劣化しないように管理が必要です。空気中の水分を吸って、どんどん劣化していきます。最後には、茹でる前のパスタのようにポキっと折れるまでもろくなってしまいました。これでは美しい造形は出来ません。
さらに面倒なことが起こる
また、この折れやすいもろい状態になっていると、アンロードする際に引っ張るとチューブの中で折れてしまいました・・・。チューブを外せると知らなかったので軽くパニックになりましたが、チューブを外して無事に解決。でも面倒なので起こっては欲しくありません。
常識:湿度の管理
フィラメントを保管するときには湿度管理が必要です。ざっくり除湿剤と一緒に密封された容器に入れておく、これだけです。なお、純正のフィラメントはプラスティックケースに入っており、このなかに除湿剤が入っていますので安心です。ジェネリックなものを使うときは自己対策しましょう。
失敗例 2 汚れが付着している
適切にクリーニングしていないと、上手く出力されません。この写真は極端な例ですが、こうなった場合は特に念入りに掃除しましょう。
手順
だいたい以下の繰り返しで何とかなります。
- 出力が終わったら次の出力までの間に、かならず金属ブラシでノズルを外から掃除する。ゴミが付いていないことの確認の意味でもやりましょう。
- 久々に出力するときは、ロードフィラメントを実行する。既にフィラメントがロードされている状態でも、ノズルを加熱してノズル内の溜まった素材を押し出してくれます。つーっと糸状に縦に伸びてたらOK。大物を造形するときなど失敗したくないときは、事前に一度これをやっておけば安心です。実行しても少ししか出ない、全く出ない場合は、次のステップへ。
- アンロードフィラメントして、ノズルのクリーニングを実施する。細いワイヤーと太いワイヤーが同梱されていますので、細い方を下から、太い方を上から挿してゴシゴシします。太い方をノズルに挿すにはチューブを抜く必要があるので注意です。
失敗例 3 調整できてない
設定の調整が正しくできていないと、フィラメントが定着しない、スカスカな造形ができる、という現象が発生します。
向こうが透けて見えるぐらいスカスカですね。触れるだけで壊れるぐらい密度が低い状態です。
調整の種類
大きく、
- 3Dプリンタの設定の調整
- ソフトのパラメータの調整
と分かれます。後者は純正フィラメントを使用しているなら、プリセットの中から選んでおけばOKです。前者のプリンタでの調整は、 - キャリブレーション
- Zオフセット
があります。
キャリブレーション
ベッド(プラットフォーム)の水平を調整します。ベッドの左右と前に3つ付いているツマミを指示通りに回せば完了です。一度実行すれば調整が完璧かというと、そうではありません。何度か実行してじょじょに完全な水平に近づいていきます。なので、調整するときはだいたい3回ほど実行しています。必ずやりましょう。
Zオフセット
ベッドとノズルの間隔を調整します。マニュアルには「コピー用紙2枚がすっと入る程度」とありますが、経験上もう少し広くした方が美しく出来上がります。逆に狭すぎるとベッドにフィラメントが何も定着せず大惨事になります。必ずやりましょう。
狭すぎて、ベッドに定着しない例:
適切な広さで、ベッドに定着する例:
失敗例 4 ソフトのバグ
MacでXYZprint (V1.4.0、現在最新)を使用しています。スライスすると、このように上部に黄色く表示されることがあります。
原因: ソフトのバグ
このアプリではオブジェクトを自動で出力に適した向きに回転させてくれますが、微妙に89°のような変な値で回転されることがあります。ジャスト90°じゃなく1°傾いたせいで、まっ平らな面を出力したときに水平になりません。結果、面の真ん中で1レイヤー分段差が出来ます。
対策: 角度を確認&訂正する
XYZprint社に確認したところ、ソフトウェアのバグだと教えてくれました。クリティカルではありませんが、気になる方は0, 90, 180, 270の倍数になっているか、確認してから出力しましょう。
さいごに
3Dプリンタを使いこなせば、頭に思い描いたものが現実のものになります。こんごもどんどん使っていきたいですね。
最後にこれまで作った部品を掲載して終わりにします。