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ユーザビリティ評価手法のまとめ

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はじめに

ここではシステムのユーザビリティ評価手法をまとめます。

ユーザビリティ評価手法を知ることで、使いやすいユーザインタフェース(UI)の評価ポイントを理解し、基本的なユーザビリティを備えたシステムを開発できるようになると考えます。

定義

ユーザビリティ

ユーザビリティにはいくつか考え方がありますが、ISO9241-11:1998(Ergonomic requirements for office work with visual display terminals (VDTs) - Part 11: Guidance on usability)の定義が一般的です。

「ある製品が、指定されたユーザによって、指定された利用状況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ、効率およびユーザの満足度」

  • 有効さ(effectiveness):ユーザが指定された目標をを達成する上での正確さと完全さ
  • 効率(efficiency):ユーザが目標を達成する際に正確さと完全さに費やした資源
  • 満足度(satisfaction):不快さのないこと、および製品使用に対しての肯定的な態度
  • 利用状況(context of use):ユーザ、仕事、装置(ハードウェア、ソフトウェアおよび資材)、並びに製品が使用される物理的及び社会的環境

システムのユーザビリティは、ユーザ、利用状況、目的に依存し、有効さ(ユーザが目標を達成できるか)、効率(ユーザが最小の時間や負荷で目標を達成できるか)、満足度(ユーザが不快感なく目標を達成できるか)の3つの指標で評価できる、という考え方です。

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(人間中心設計の基礎 (HCDライブラリー 第1巻)より抜粋)

ユーザエクスペリエンス(UX)

ユーザビリティに近い概念にUXがあります。UXにもいくつか考え方がありますが、その一つにISO9241-210:2010(Ergonomics of human–system interaction — Part 210: Human-centred design for interactive systems)の定義があります。

「製品やシステムやサービスを利用した時、および/またはその利用を予測した時に生じる人々の知覚や反応のこと」

  • 補足1:UXとは、利用の前、最中、その後に生じるユーザの感情、信念、嗜好、知覚、生理学的・心理学的な反応、行動や達成などすべてを含む。
  • 補足2:UXは、ブランドイメージ、知覚、機能、システム性能,対話行動や対話システムの補助機能、以前の経験から生じるユーザの内的・身体的状態、態度、技能や性格、および利用状況の結果である。
  • 補足3:ユーザの個人的目標という観点から考えた時には、ユーザビリティは典型的にUXに結びついた知覚や感情的側面を含む。ユーザビリティの評価基準はUXの諸側面を評価するのに用いることができる。

UXにはユーザビリティほどの市民権を得た定義はありませんが、(1)主観性、(2)消費者とユーザを対象とする(製品ライフサイクルのすべてを包含する長期的レンジのものである)、(3)品質特性と感性特性の関与、といった点がポイントのようです。

ユーザビリティ評価の実施タイミング

ISO9241-210:2010には人間中心設計(HCD)の方法論がまとめられています。その中にあるHCDプロセス上で、ユーザビリティ評価を実施するタイミングは3点あります。

02.png
(人間中心設計の基礎 (HCDライブラリー 第1巻)より抜粋)

ユーザビリティ評価手法

分類

目的による分類

  • 形成的評価:開発中のシステムのユーザビリティの問題点を把握する。
  • 総括的評価:開発が完了したシステムのユーザビリティの度合いを確認する。

ユーザビリティ評価では、形成的評価が重要とされています。

手法による分類

  • 分析的手法:ユーザビリティの専門家が自らの知識や経験に基づいて評価する。
    • 主観的、時間やコストが小さい、評価範囲が広い、開発の初期でも評価できる、という特徴がある。
  • 実験的手法:実際のユーザのデータに基づいて評価する。
    • 客観的、時間やコストが大きい、評価範囲が狭い、評価にはプロトタイプが必要、という特徴がある。

ユーザビリティ評価では、分析的手法と実験的手法は補完関係にあるとされています。

評価手法

分析的手法

ヒューリスティック評価

基本的なUI設計原則(ヒューリスティック)に基づいて評価する手法です。ヒューリスティックはいくつか提案されていますが、ヤコブ・ニールセンによるものが有名です。

認知的ウォークスルー

タスクを設定し、ユーザの認知モデルに基づいて評価する手法です。「ユーザの技能や経験」、「タスク」、タスクを実行するための「操作手順と画面」を定義し、ユーザがタスクを実行する時の認知モデル:「目標設定」,「目標実現手段の探索」,「目標実現手段の選択」,「目標実現状態の評価」に照らして評価します。

実験的手法

思考発話法

タスクを設定し、ユーザに考えていることを話してもらいながらタスクを実行してもらうことで、ユーザビリティ上の問題点を抽出します。

回顧法

タスクを設定し、ユーザにタスクを実行してもらった後でインタビューすることで、ユーザビリティ上の問題点を抽出します。

パフォーマンス測定

タスクを設定し、ユーザにタスクを実行してもらった後で、タスク達成率やタスク達成時間、アンケートに基づく主観的満足度を評価します。


参考文献

  1. 人間中心設計の基礎 (HCDライブラリー 第1巻)
  2. ユーザビリティエンジニアリング ― ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法
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