Retty岩永様より
経営システムNo.2 2019年1月
発行元:日本経営工学会
をご好意で頂きました。
その中で下記記事について感想を述べさせていただきます。
P127「ビジネスでインパクトが出せるデータサイエンティストになるには」
はじめに
私はSierに所属するDWH/BI/ETLを専門とした中堅SEです。
流行に乗っかる形で統計検定2級を取った程度で、データサイエンティストというよりは、データ分析者に近いのですが、業務上関連する点もあり、感じた点を書かせていただきます。
2.データサイエンティストが力を発揮する場
事業ドメイン・サービス規模が大きければインパクトが大きいという点は同意します。
ビッグデータが社内に蓄積されていて手掛けやすい、成果が目に見えやすいという点が浮かびましたが元をたどれば事業ドメイン・サービス規模に起因すると考えられます。
事業ドメイン・サービス規模という観点ではIoTと関連が高い製造メーカーが浮かびましたが、PoCはおろか、データ入手にも数か月以上の労力を強いられることが多いのでいちがいに発揮できるとは言い難いでしょうか。
これまで製造メーカーの情報システム部門の方とお話ししてきましたが、やはり製造現場の理解・協力を得るのが大変という声が多かったです。
業種であげるとすれば、IT企業、特にEC・サービス系で歴史深めのベンチャー企業でしょうか。他にはITリテラシーの比較的高い外資系企業もそれなりに活躍する場はありそうです。
3.課題設定
課題設定が肝という点は同意します。
経験上、ゴールを設定し、そこから逆算するかたちでプロセスを計画していくほうが、認識のずれも起きにくく、成功する確率は高いと考えていることが理由です。何かで読んだ知識ですが、データサイエンティストが1つの分析案件に所要する期間は2~3か月くらいが多いらしいので、1人で年間4~6つの課題にしか取り組めず、それだけ優先度・取捨選択の精度が問われると考えます。
4.解決方法の設計
Sier的にはアーキテクチャ設計・実現方式検討(言語、フレームワーク)に該当し、使い慣れたものを使うか、新しいことにチャレンジするか、技術者としてやりがいが出てくるところで、共感できました。
Sierの視点からみると、精度=品質、運用コスト=工程+原価と置き換えるとイメージしやすかったです。
「ビジネスの上で仕組み自体を変えて問題を簡単にしてしまおうという発想を
実践するのはちょっとした訓練と経験が必要である。」
SierとしてPL/PMを担当している立場からも、この考え方は大事だと思います。プロジェクトでコスト・工程上実装が難しい要求が発生したとき、代替策を客先に提示し調整を行う場合があり、それと似ていると感じました。
人間どうしても思い込みがあったり、熱中するあまり視野が狭くなってしまったりすることが多々あるので、そうした局面で全体を客観的に俯瞰できる能力がデータサイエンティストでも必要なのかなと思いました。
5.検証
施策の検証ですが、これは必ずやっておくべきと思います。
検討の結果、提案した施策が実施されないという場合もあると思いますし、一通りの形でアウトプットを残すことに意義があると考えました。
6.育成
これは難しい問題である点は同意します。データサイエンティストという専門職がバズワード化しており、定義が広範囲なことも要因ですが、日本企業の情報系システムは欧米よりもワンテンポ以上遅れていることが大きいです。
定型レポート、非定型レポート、ダッシュボードくらいで良い、機械学習など高度な計算処理までは求めていないという企業が非常に多く、そうしたITリテラシーの低さが、実務経験の場を奪ってしまっており、結果、データサイエンティストが育ちにくい現状につながっていると考えます。
今の子供は幼少時からPC/タブレット/スマホに触れる機会が多くITリテラシーも自然と高くなるので、経営者層・管理職の世代交代が進むにつれて解決されるだろうなとは思っています。もちろん企業内での地道な啓蒙活動は必要です。
一方で巷ではDataRobotというデータサイエンティストの存在が危うくなるような機会学習の自動化ツールが出回り始めており、今後どうなっていくのかSierとして注視していこうと思っています。
7.まとめ
データサイエンティストのブームは間違いなく収束すると思います。そうなっても、他のバズワードに目移りすることなく、自身を見失うことなく地道な努力・研鑽を積み重ねていくことが大事であり、データサイエンティストとしてインパクトを残していけるのかなと思いました。
最後に
こうした論文誌は初めて目を通したのですが、ベイジアンネットワーク、アクティブラーニング等ぜひ購読したいと思わせるような興味深い内容が満載です。
情報収集はネットや書籍で行うことが多いのですが、論文でも、専門的かつ先進的な知識・手法を調査できると知りえただけでも大きな発見でした。
最後になりましたが、本書を提供いただき、自分なりに考えを整理する機会をくださった岩永様にお礼を申し上げます。