はじめに
本記事は、「3GPP TS23.501(V17.6.0)を読んでいくアドベントカレンダー 2022 」の24日目の記事として執筆したものです。
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今回は、3GPP TS23.501(V17.6.0)の5.18 Network Sharingの章をみていきます。
訳文中心とした記事です、分かりづらいところも多々あるかと思いますがご容赦ください。
ざっと読んで記載をしたので、変なこと記載していたらコメントくださいませ。
5.18.1 概要・コンセプト
Network sharingアーキテクチャは様々ありますが、このリリースの仕様では、5G Multi-Operator Core Network (5G MOCN) network sharing architectureのみサポートされています。概念図は下記となります。
MOCNをざっくり説明すると、下記2つがポイントです。
- コア装置については、オペレータ間で独立に配備
- 共有された無線アクセスネットワークが複数のオペレータのコアに接続
共用ネットワークオペレータは、各オペレータの要求に基づき、リソース割り当てを実施します。本モデルでは、周波数も複数のオペレータ共用することになります。
各オペレータで周波数を変える共用モデルとして、MORAN(Multi-Operator RAN Network)があり、日本のMORAN展開の事例としては、例えば下記事例があります。
エリクソン、KDDIとソフトバンクと共同で、日本初のマルチオペレーター無線アクセスネットワークを構築 (ericsson.com)
その他のシェアリングモデルや実例について、下記記事がまとまっています。
将来の5G基地局の在り方に向けた意見交換会 公開用最終取り纏め資料
MOCNは、公衆網(PN(Public Network))だけでなく、非公衆網(NPN(Non Public Network))についてもサポートします。
NPNは、非公衆網ネットワークへ5Gを展開する上で、リリース16より3GPPにて定めている標準仕様で、特定の利用者に限定して、周波数等の無線リソースや、ネットワークリソースへアクセス可能とする制御技術です。
NPNには大きく下記2パターンがあります。
- SNPN(Standalone NPN):
- 公衆網から独立したネットワークを構築するアーキテクチャ
- 端末のアクセス制御には、PLMNとNID(Network ID)を利用
- 公衆網から独立したネットワークを構築するアーキテクチャ
- PNI-NPN(Public Network Integrated NPN):
- 公衆網のコアネットワークに非公衆RANを収容するアーキテクチャ
- 端末のアクセス制御には、CAG (Closed Access Group)を利用
- 公衆網のコアネットワークに非公衆RANを収容するアーキテクチャ
NPNについては下記解説記事が参考になります。
産業創出・ソリューション協創に向けた5G高度化技術
5.18.2 Broadcast system information for network sharing
この節では、ネットワークシェアリングにおける報知情報の概要がまとまっています。
- 報知される情報として、PLMN IDのセット、PLMN ID・NID、PLMNごとにセルID、トラッキングエリア、CAG識別子等の追加のパラメータセット等がある
- NG-RANに接続する5G対応UEは、複数のPLMN IDおよびPLMN固有のパラメータの受信をサポート
- すべてのSNPN対応UEは、PLMN IDとNIDおよび、SNPN固有のパラメータ(組み合わせ含)の受信をサポート
- 共有 NG-RAN ネットワーク内のトラッキングエリアのすべてのセルで、利用可能なコア ネットワーク オペレータ (PLMN および/または SNPN) は同一である
- SNPN アクセス モードで動作するように設定されていない UE は、報知情報をデコードし、PLMN およびセル選択手順において、利用可能な PLMN ID に関する情報を考慮
- SNPN アクセス モードで動作するように設定された UE は、報知情報をデコードし、ネットワークおよびセル選択手順において、利用可能なPLMN IDおよびNIDに関する情報を考慮
- 参考となる仕様書としては、TS 38.331やTS 38.304等
5.18.2a PLMN list handling for network sharing
この節では、ネットワークシェアリングにおけるPLMNリスト処理についてまとめられています。
- AMFは、アイドルモードでのセル選択時や、ハンドオーバ/RRCコネクションリリース時に、使用するターゲットPLMNに適したPLMN IDのリストを作成
- AMFは、UEがServing PLMNと同等とみなすPLMNリストをUEへ提供
- AMFは、NG-RANに対して、優先順位付けされた許可PLMNリストを提供。PLMNに優先順位をつける場合に考慮する観点としては、HPLMN、Serving PLMN、優先ターゲットPLMN、あるいは、オペレータのPolicy等がある
- SNPN に登録された UE に対しては、AMF は同等の PLMN のリストを UE に提供せず、また、NG-RAN に対して許可された PLMNのリストを提供しない
5.18.3 Network selection by the UE
この節は、UE側から行われるNetwork Selectionについてまとめられています。
- この節の対象UEは、SNPN アクセス モードで動作しない UE(SNPN アクセス モードで動作するUE のNetwork Selectionについては、5.30.2.4 節で説明(ここでは省略))
- 共有 NG-RAN 内の各セルでは、共用ネットワークにおいて利用可能なコアネットワークオペレータの PLMN ID が報知情報に含まれる
- UEがネットワークへInitial Registrationする際に、UEがネットワークへアクセスできるようにするために利用可能なPLMNのうち1つが選択される
- UEはTS 23.122 に規定される PLMN選択プロセスにて、受信したすべてのPLMN-IDを使用
- UEはNG-RANが正しくルーティングできるように、選択したPLMNをNG-RANへ通知
- NG-RAN は、選択されたPLMNをコアネットワークへ通知
5.18.4 Network selection by the network
この節では、ネットワーク側から行われるNetwork Selectionについてまとめられています。
- NG-RANは、選択されたPLMN(RRC確立時にUEから提供されるか、N2/Xnハンドオーバ時にAMF/移動元NG-RANから提供)を使用し、ハンドオーバのターゲットセルを選択
Sharing Networkへのハンドオーバの場合
- NG-RANにより選択されたあるセルにおいて、複数のPLMN IDが報知された場合、NG-RANはAMFからMobility Restriction Listを介して提供されたPLMN IDの優先順位を考慮し、ターゲットPLMNを選択
- Xnベースのハンドオーバ手順
- 移動元NG-RANは移動先NG-RANに選択されたPLMN IDを提示(TS 38.300参照)
- N2ベースのハンドオーバ手順
- NG-RANはハンドオーバ要求メッセージで送信されるTAIの一部に、選択したPLMN IDをAMFに提示
- 移動元AMFは移動元NG-RANから提供されたTAI情報を使用して、移動先AMF/MMEを選択
- 移動元AMFは選択されたPLMN IDを移動先AMF/MMEに転送する必要がある。移動先AMF/MMEは、移動先NG-RAN/eNBがターゲットセルを適切に選択できるように、選択されたPLMN IDを移動先NG-RAN/eNBに提示
5.18.5 Network Sharing and Network Slicing
- 5.15.1節で定義されているように、ネットワークスライスは PLMNもしくは、SNPN内で定義される
- Network Sharingは異なるPLMNやSNPN間で実行される
- Network Sharingの場合、NG-RANを共用するPLMN/SNPNは、共通のNG-RANでサポートされるPLMN/SNPNに固有のスライスセットを定義してサポートする
おわりに
本記事では、3GPP TS23.501(V17.6.0)の5.18 Network Sharingの章について、読み進めてみました。
5Gでは、既存の周波数に加えて、高周波数(ミリ波等)も新たに活用されることで、これまで以上に基地局数も増えており、それに伴って、設置コストや維持管理コストも増加、設置場所の意匠への配慮等の課題がでてきています。
そのため、各オペレータがそれぞれ基地局を構築・設置する方針だけでなく、各社で基地局やネットワークをシェアリングすることで、コスト削減を図る動きも徐々に活発化してきています。
引き続き、標準化動向や各オペレータの事業動向についてウォッチしていこうと思います。