「CSSなんて大嫌いだぁ〜!」「スタイリングこそプロダクトに命を吹き込む行為だよ」
この記事を今読んでいるあなたはどちらのタイプでしょうか?
フロントエンド開発において、CSSは常に議論の的となってきました。「素のCSSで書くのが楽しい」という意見から「できればCSSは書きたくない」まで、様々な声を聞きます。この10年で、そうした多様なニーズに応えるように、数多くのCSSツールやフレームワークが登場してきました。
本記事では、2024年に発表された「State of CSS 2024」の調査結果を参考に、主要なCSSツールとフレームワークを解説します。各ツールの特徴、使用シーン、そして最新のトレンドを、主観と客観を交えながらお伝えしていきます。
CSSに悩んでいるそこのあなた!
本記事はそんな「あなた」に、送る記事です。
ぜひご一読いただけると嬉しいです
目次
長い記事なので、必要な部分だけ閲覧していただいても構いません
- CSSツールの分類と選び方
- CSSフレームワーク
- TailwindCSS
- Bootstrap
- Bulma
- UnoCSS
- UIコンポーネントライブラリ
- Ant Design
- MUI(旧Material-UI)
- shadcn/ui
- Headless UI
- Radix UI
- Chakra UI
- CSS-in-JSソリューション
- CSS Modules
- Emotion
- Styled Components
- CSSプリプロセッサー
- Sass/SCSS
- まとめと今後の展望
1. CSSツールの分類と選び方
現代のWeb開発では、以下の方法でUIスタイリングを実装できます
あくまで一例として参考にしていただけると幸いです。
各々例外やデメリット解決方法などもすでに存在すると思います。
実装方法 | メリット | デメリット | 推奨される使用シーン |
---|---|---|---|
Vanilla CSS | ・追加の学習コストなし ・最高のパフォーマンス ・完全なカスタマイズ性 |
・大規模開発での管理が困難 ・命名規則の統一が必要 ・再利用性が低い |
・小規模プロジェクト ・プロトタイプ開発 ・学習用途 |
コンポーネントライブラリ | ・開発速度が速い ・一貫したUI ・アクセシビリティ対応 |
・カスタマイズの制限 ・バンドルサイズの増加 ・学習コスト |
・企業の業務システム ・統一UIが必要なプロジェクト ・プロトタイプの迅速な作成 |
CSSフレームワーク | ・柔軟なカスタマイズ ・高い生産性 ・充実したエコシステム |
・クラス名の増加 ・独自の記法の学習 ・HTMLの可読性低下 |
・中〜大規模プロジェクト ・チーム開発 ・長期保守が必要なサービス |
CSS-in-JS | ・スコープ管理が容易 ・動的スタイリング ・型安全性 |
・実行時オーバーヘッド ・セットアップの手間 ・デバッグの難しさ |
・Reactプロジェクト ・動的UIが多いアプリ ・大規模SPAの開発 |
プリプロセッサー | ・CSSの機能拡張 ・保守性の向上 ・変数やミックスイン |
・コンパイル必要 ・セットアップ工数 ・デバッグの複雑さ |
・大規模サイト ・デザインシステム構築 ・保守重視のプロジェクト |
今回は以下で定義します。
※VanillaCSS
- 素のCSS
※小規模プロジェクト
- チーム:1-3人
- 期間:3ヶ月以内
- 例:ランディングページ、ブログ、シンプルなコーポレートサイト
- 特徴:単一機能、シンプルなUI、状態管理が最小限
※中規模プロジェクト
- チーム:3-10人
- 期間:3-6ヶ月
- 例:ECサイト、予約システム、管理画面付きWebアプリ
- 特徴:複数機能、状態管理が必要、外部サービス連携あり
※大規模プロジェクト
- チーム:10人以上
- 期間:6ヶ月以上
- 例:SNS、企業の基幹システム、SaaSプロダクト
- 特徴:複雑な機能群、高度な状態管理、多数の外部連携
選択の基準
ツールの選択は以下の要素を考慮して判断します。
- プロジェクトの規模と性質
- チームの技術スタック
- パフォーマンス要件
- 保守性の重要度
- 開発速度の要求
- カスタマイズの必要性
2. CSSフレームワーク
CSSフレームワークとは、事前に定義されたスタイルやコンポーネントを提供し、効率的なUI開発を可能にするツールです。以下では、2024年現在で特に注目されている主要なフレームワークを紹介します。
Tailwind CSS
概要
AtomicCSS(単一の目的を持つ小さなクラスを組み合わせる手法)を採用した、ユーティリティファーストのCSSフレームワークです。
主な特徴
- ユーティリティクラスによる柔軟なカスタマイズ
- JIT(Just-In-Time)コンパイルによる最適化
- 充実した開発者ツールとエコシステム
- VSCode等のエディタ拡張による開発効率の向上
技術的詳細
- バージョン 4.0(ベータ版)での主な改善点
- CSSファイル内での設定記述が可能に
- Rustベースの新コンパイラによる高速化
- コンテナクエリなどモダンCSS機能のサポート
- タッチデバイスでのホバー制御の改善
使用統計
- GitHub Stars: 83.4k
- npm週間ダウンロード数: 約300万(2024年12月時点)
- 主要企業での採用: Microsoft, Netflix, GitHub など
推奨される使用シーン
- カスタマイズ性の高いUIが必要なプロジェクト
- パフォーマンスを重視するWebアプリケーション
- デザインシステムの実装
- 大規模なチーム開発
長所
- 高いカスタマイズ性
- 優れたパフォーマンス
- 充実したドキュメントとコミュニティ
- モダンフレームワークとの相性の良さ
短所
- 初期学習コストが比較的高い
- HTMLの可読性が低下する可能性
- クラス名が長くなりがち
- デザイナーとの協業に慣れが必要
最新のトレンドと今後の展望
近年TailwindCSSは継続的に成長していて、特にNext.js、Remix、Astroなどのモダンフレームワークとの統合が進んでいます。v4では、CSSの新機能サポートとパフォーマンスの向上に焦点を当てており、今後もWebプラットフォームの進化に合わせた機能拡張が期待されます。
Bootstrap
概要
Twitterで開発された、世界で最も広く使用されているCSSフレームワークの一つです。包括的なコンポーネントセットとレスポンシブデザインシステムを提供します。
主な特徴
- 豊富な事前定義コンポーネント
- 強力なグリッドシステム
- 充実したJavaScriptプラグイン
- アクセシビリティ対応
- 広範なブラウザサポート
技術的詳細
- 現行バージョン(v5)の主要機能
- Sass変数とミックスインの拡充
- RTL(右から左)サポート
- CSS カスタムプロパティの活用
- SVGアイコンシステム
- ユーティリティクラスの強化
使用統計
- GitHub Stars: 171k
- npm週間ダウンロード数: 約200万(2024年12月時点)
- CDN経由での利用も非常に多い
推奨される使用シーン
- 迅速なプロトタイプ開発
- 管理画面やダッシュボード
- エンタープライズアプリケーション
- チーム規模の大きいプロジェクト
長所
- 豊富なドキュメントとリソース
- 大規模なコミュニティサポート
- クロスブラウザ対応の信頼性
- 学習リソースの充実
短所
- デザインの独自性を出しにくい
- ファイルサイズが比較的大きい
- カスタマイズに手間がかかる
- モダンな開発手法との統合が時に煩雑
Bulma
概要
モダンなFlexboxベースのCSSフレームワークで、シンプルで直感的なクラス名体系と軽量な実装が特徴です。
主な特徴
- Flexboxベースのレイアウトシステム
- モジュラー設計による必要な機能のみの利用
- セマンティックなクラス名
- CSSのみのフレームワーク(JavaScriptなし)
技術的詳細
- Sassベースの変数システム
- モバイルファーストのレスポンシブデザイン
- モジュラーなSassファイル構造
- カスタマイズ可能な変数設定
使用統計
- GitHub Stars: 49.4k
- npm週間ダウンロード数: 約15万(2024年12月時点)
推奨される使用シーン
- 中小規模のWebサイト
- シンプルなデザインのプロジェクト
- JavaScriptに依存したくないケース
- 素早いプロトタイプ開発
長所
- 学習曲線が緩やか
- 軽量なファイルサイズ
- 明確なドキュメント
- モダンなデザイン哲学
短所
- コンポーネントの種類が比較的少ない
- カスタマイズの柔軟性がやや限定的
- コミュニティの規模が比較的小さい
- エンタープライズ向け機能の不足
最新のトレンドと今後の展望
Bulmaは安定した機能提供を続けていますが、大規模な更新は減少傾向にあります。しかし、その軽量さとシンプルさから、特定のユースケースでは引き続き支持されています。
UnoCSS
概要
新世代のAtomicCSSエンジンとして注目を集めている、高度にカスタマイズ可能なCSSフレームワークです。
主な特徴
- オンデマンドな原子的CSSの生成
- 高度なカスタマイズ性
- 高速なパフォーマンス
- プリセットシステムによる拡張性
技術的詳細
- パフォーマンス重視の設計
- プラグインベースのアーキテクチャ
- カスタムルールの柔軟な定義
- Viteとの緊密な統合
使用統計
- GitHub Stars: 16.7k
- npm週間ダウンロード数: 約5万(2024年12月時点)
推奨される使用シーン
- パフォーマンス重視のプロジェクト
- カスタムデザインシステムの実装
- Viteベースのプロジェクト
- マイクロフロントエンド
長所
- 優れたビルドパフォーマンス
- 高度なカスタマイズ性
- 最小限のバンドルサイズ
- モダンな開発体験
短所
- 比較的新しいツールであり実績が少ない
- 学習リソースが限定的
- エコシステムがまだ発展途上
- 大規模プロジェクトでの採用事例が少ない
最新のトレンドと今後の展望
UnoCSSは急速に注目を集めており、特にViteユーザーの間で人気が高まっています。パフォーマンスとカスタマイズ性の高さから、今後の成長が期待されています。
3. UIコンポーネントライブラリ
UIコンポーネントライブラリは、再利用可能なUIコンポーネントを提供し、効率的なアプリケーション開発を可能にします。各ライブラリは独自のデザインシステムと開発哲学を持っています。
Ant Design
概要
Alibaba社が開発した、エンタープライズ向けのUIコンポーネントライブラリです。包括的なデザインシステムと豊富なコンポーネントを提供します。
主な特徴
- エンタープライズ向けの豊富なコンポーネント
- 統一されたデザイン言語
- TypeScriptのネイティブサポート
- 国際化対応
- テーマカスタマイズ機能
使用統計
- GitHub Stars: 92.6k
- npm週間ダウンロード数: 約100万(2024年12月時点)
推奨される使用シーン
- 大規模なエンタープライズアプリケーション
- データ可視化が必要なプロジェクト
- 複雑なフォーム処理
- 国際化が必要なアプリケーション
MUI(旧Material-UI)
概要
Googleのマテリアルデザインを基にした、React向けの包括的なUIコンポーネントライブラリです。
主な特徴
- マテリアルデザインの完全実装
- 高度なカスタマイズシステム
- アクセシビリティ対応
- 豊富なコンポーネント群
- 充実したドキュメントとサンプル
使用統計
- GitHub Stars: 94.1k
- npm週間ダウンロード数: 約150万(2024年12月時点)
推奨される使用シーン
- マテリアルデザインを採用するプロジェクト
- 大規模なReactアプリケーション
- 高度なUIカスタマイズが必要なケース
- エンタープライズアプリケーション
shadcn/ui
概要
再利用可能なコンポーネントの集合体で、コピー&ペーストで利用できる設計が特徴です。
主な特徴
- コピー可能なコンポーネント
- Radix UIとTailwind CSSの組み合わせ
- 高いカスタマイズ性
- モダンなデザイン
使用統計
- GitHub Stars: 75.4k
- 急速に成長中のコミュニティ
推奨される使用シーン
- 高度なカスタマイズが必要なプロジェクト
- モダンなデザインシステムの構築
- Reactベースのアプリケーション
- アクセシビリティを重視するプロジェクト
Headless UI
概要
スタイルを持たない機能的なUIコンポーネントを提供するライブラリです。
主な特徴
- 完全にスタイルレスなコンポーネント
- アクセシビリティファースト
- Tailwind CSSとの完璧な統合
- 軽量な実装
使用統計
- GitHub Stars: 26.3k
- 特にTailwind CSSユーザー間で人気
推奨される使用シーン
- カスタムデザインシステムの構築
- アクセシビリティ重視のプロジェクト
- Tailwind CSSを使用するプロジェクト
Radix UI
概要
アクセシブルなプリミティブコンポーネントを提供する、低レベルのUIライブラリです。
主な特徴
- 優れたアクセシビリティ
- 徹底的なテスト
- コンポーザブルAPI
- スタイルに依存しない設計
使用統計
- GitHub Stars: 16k
- デザインシステム構築で人気
推奨される使用シーン
- カスタムデザインシステムの開発
- アクセシビリティ要件の厳しいプロジェクト
- 柔軟なスタイリングが必要なケース
Chakra UI
概要
アクセシブルで柔軟なReactコンポーネントライブラリです。
主な特徴
- 優れた開発者体験
- モダンなデザインシステム
- Theme UIベースのスタイリング
- 包括的なコンポーネント群
使用統計
- GitHub Stars: 38.1k
- 安定した成長を続けるコミュニティ
推奨される使用シーン
- 迅速な開発が必要なプロジェクト
- モダンなデザインを求めるケース
- アクセシビリティ重視の開発
4. CSS-in-JSソリューション
CSS Modules
個人的にこのCSS Modulesは、VanillaCSS推しの私からするとかなり好感度が高い技術だろうなと思っています。VanillaCSSと同じ感覚で書けますし、VanillaCSSからModulesへの移行も楽です。それでいてクラス名被りを防止でき、コンポーネント指向にも対応しやすいと思います。
ただ公式サポートが終了している・使用が非推奨になっていることが悔やまれます...
概要
CSSのスコープをコンポーネントレベルに限定する手法です。
主な特徴
- ローカルスコープのCSS
- 既存のCSSの知識が活用可能
- ビルド時の最適化
- 高いパフォーマンス
使用統計
- GitHub Stars: 17.7k
- 多くのフレームワークでサポート
推奨される使用シーン
- コンポーネントベースの開発
- 既存のCSSスキルを活用したい場合
- パフォーマンスを重視するプロジェクト
Emotion
概要
強力で柔軟なCSS-in-JSライブラリです。
主な特徴
- 高いパフォーマンス
- 動的スタイリング
- サーバーサイドレンダリング対応
- 優れた開発者体験
使用統計
- GitHub Stars: 17.5k
- React開発で広く採用
推奨される使用シーン
- Reactベースのプロジェクト
- 動的なスタイリングが必要なケース
- パフォーマンス重視の開発
Styled Components
概要
ReactのコンポーネントとCSSを統合するライブラリです。
主な特徴
- コンポーネントベースのスタイリング
- テーマサポート
- 自動ベンダープレフィックス
- 動的スタイリング
使用統計
- GitHub Stars: 40.6k
- React開発での高い採用率
推奨される使用シーン
- Reactプロジェクト
- コンポーネントライブラリの開発
- ブランディングが重要なプロジェクト
5. CSSプリプロセッサー
Sass/SCSS
概要
最も成熟したCSSプリプロセッサーで、豊富な機能と安定性が特徴です。
主な特徴
- 変数とミックスイン
- ネスト構文
- 関数とモジュール
- 豊富なエコシステム
使用統計
- GitHub Stars: 15.1k
- 圧倒的な市場シェア
推奨される使用シーン
- 大規模プロジェクト
- レガシーシステムの保守
- デザインシステムの構築
6. まとめと今後の展望
今回はCSSツールとフレームワークについて取り上げてみました。
2024年のCSS開発ツールは、以下のトレンドが顕著だと思います。
-
AtomicCSSの台頭
- TailwindCSSやUnoCSSの人気上昇
- ユーティリティファーストアプローチの普及
-
コンポーネント指向の強化
- HeadlessUIコンポーネントの注目度上昇
- カスタマイズ可能なコンポーネントライブラリの需要増加
-
パフォーマンス重視
- ビルド時最適化の重要性
- バンドルサイズへの注目
-
開発者体験の向上
- ツールチェーンの統合
- エディタサポートの充実
今回取り上げたツールは、それぞれに特徴があり、プロジェクトの要件に応じて適切に選択することが重要だと思います。今後も新しいツールや手法の登場が予想されますが、そのとき自分が何を実現したいのかを考え、選択していきたいと思います!
また、今回各ツールの詳細までは踏み込めなかった為、それらについては別途記事にできればと思っています。
本記事をご一読いただき、ありがとうございました!
技術用語の解説
用語 | 意味 |
---|---|
ユーティリティ | 単一の目的を持つ便利な機能。CSSの場合、text-center (中央寄せ)やmt-4 (上部の余白)のような、1つの役割に特化したクラスのこと |
セマンティック | 意味を持つ、分かりやすい命名。例えばred-button ではなくsubmit-button のように、見た目ではなく目的で名付けること |
モジュラー | 機能を小さな部品(モジュール)に分けて、必要な部品だけを組み合わせて使えるような設計方式 |
アクセシビリティ | 障がいのある人を含むすべてのユーザーが使いやすいように配慮された設計。スクリーンリーダー対応など |
オンデマンドな原子的CSS | 必要な時に必要な分だけ生成される、最小単位のCSS。使用されているスタイルだけが出力される仕組み |
プリセットシステム | あらかじめ用意された設定のセット。初期設定として使えるテンプレートのような仕組み |
マイクロフロントエンド | 大きなWebアプリを小さな独立した部分に分割する開発手法。それぞれを別チームで開発可能 |
コンポーザブル | 再利用可能な小さな部品を組み合わせて、より大きな機能を作れる設計手法 |