挨拶
今回はふりかえりの新たな手法を考えて、チームでやってみた話の紹介です。
タイトルにもある「PNPT3」 (ぴーえぬぴーてぃーすりー)と言うふりかえりを考えてやってみました。
命名理由は
- Positive
- Negative
- Person
- Team
- Thanks
- Todo
の頭文字を合わせたものです。
Tは3つあるため、T3(ティースリー)としました!
どのようにこのワードの事象がふりかえりに使われるか説明していこうと思います!
この振り返りをやるに至った理由
これまでに進めていたふりかえり手法
チームではスクラムイベントのレトロスペクティブ(ふりかえり)を行っていました。
世の中ではKPTが非常にメジャーであり、自分も好きでした。
そのため、KPTをカスタマイズされたKPT2を使っていました (Keep,Problem,Try,Todo)
それにプラスしてTodoを加えることで「やってみたいこと」と「やるべきこと」を分けて、やってみたいことを出しやすくするということとやるべきである認識のレベルを合わせることを優先してTodoがあるKPT2(ケプトツー、ケーピーティーツー)と呼ばれる方法をメインに使って半年の間チームで使っていました。
課題
プロジェクトの進行については目標は明確で全力で邁進しており、大きな不満はありませんでした。
ただ、プロジェクトにコミットするあまり、チーム視点が強すぎて個人の思いが出てきにくい、称賛が足りない、発見や学習のシェアが足りないと感じていました。
プロジェクトを推進するだけであればKPTは十分でしたが、チームビルディングやプロセスの改善などを同時に行うためには新しい観点で意見が取り出せる手法を探していました。
同じ手法をばかりを使っていると自ら新たな観点を見つけ出さない限りは、見えない穴に情報が落ち続けてしまいます。
何より半年同じ手法をやっていて飽きました笑
KPTでの振り返りにもチームは慣れたため、様々な手法を試して、新たな経験を得てKPTに戻ってくるとまた新しい観点からふりかえりが出来るかも知れないと考え、色々試してみようと思いました。
課題をまとめると
- 新しい観点の発掘
- メンバーへの称賛
- 個人の思いのシェア
- 発見・学習のシェア
を促進したいということです。
違うふりかえり手法を試してみた
まずは既存のふりかえりの中で良いものがないか検討し、やってみました。
YWT
スプリントの振り返りでもう一つのメジャーな手法です。
チームで試してみました。
結果は不評でした。
やってみて良かったこともありましたが、現状のチームにはフィットしていませんでした。
- Yやってみた、Wわかった、Tつぎやること の関連順があるため出しやすい
- 関連があるため、やったことに引っ張られて広い観点が出にくい
- やったことが個人ベースになりがちなので、チームとしての改善の観点が出しにくい
- もっと称賛を伝えられる時間が欲しい
チームの慣れや状況にはよると思いますが、個人としてのやったことよりチームとしての観点の出しやすさがもっと必要でした。
それ以外に検討した振り返り手法
新たな観点を得たいとはいいつつも、プロジェクトの推進はチームメンバーの一番の関心事のため、他の部分にフォーカスしたふりかえりの手法ではマッチしませんでした。
-
Fan/Done/Learn
- 課題が見つけにくい
- プロジェクトを推進する気持ちが強い中ではフィットしないと考えた
-
セレブレーショングリッド
- 学びにフォーカスしていて、現在の課題解決にはフィットしないと考えた
- 基本はYWTに近くなってしまいそうに思えた
-
ORIMD
- 事実、感情、決定などをベースにしていて良さそうに思えた
- プロジェクトとしてやるべきことは明確なため、ここまで深堀りをする状況ではなかった
スプリントのふりかえりという短い期間でのふりかえり、かつ、普段の視点を離れて俯瞰したり思考する発見を得られるふりかえりとして考えられる手法は思った以上に少ないと感じました。
PNPT3をやるまで
必要な観点の整理
観点のサイズ感
観点には大きさのレベルがあると思います。
- 個人
- チーム
- 会社
下に行くほど俯瞰した視点が必要ですが、個別の課題は見えづらくなります。
KPTやYWTでは全てが混ざっているため、出す側も上手く観点を切り替えながら出すことが求められていました。
人によっては「自分だけの話だから出さなくていいかも・・・。」と考えてしまったり、「チームの課題を出さないといけない」と考えてしまって、出せない(出さなくていいかも)と思ってしまうのではと感じています。
ポジティブとネガティブ
ポジティブなこととネガティブなことが観点としてあります。
ポジティブなことは言うまでもなく必要です。課題ばかりを上げているとつらい気持ちになってきます。毎回のスプリントで良いことをシェアしていく必要があります。
ネガティブなことも重要です。全員で多くの課題を上げることで、対策を全員で考えることが出来ます。
ポジティブなことは基本的には良かったことです。続けたいこと、楽しかったこと、学び。
Fun/Done/Learn、KPTのKeep、YWTではY(やったこと)とW(わかったこと)です。
ネガティブなことは課題として、チームとして対処すべきことです。
KPTのProblemとTry、YWTのT(つぎやること)などです。
チームの課題を明らかにして、全員で問題に向かいます。
称賛
Fan/Done/Learnでは称賛の思いが強いと思います。
これを更に明確にして、誰かへのお礼という形にしました。
Management3.0ではKudoカードとして定義されていますが、これをふりかえりの中でやると良いと思いました。
既存のふりかえりでは取りこぼしがちですが、改めてとても重要な観点だと感じます。
次のアクションの合意
Todoはチームとして何を行動するべきかを合意できます。
「やりたいこと」と「やるべきこと」は切り分ける必要があります。
課題を上げて「共有するだけで十分な事柄」と「次のアクションが必要なもの」はレベルが違いますが、認識齟齬が起きてしまうと大変な事態になるまで未着手になってしまうということもあります。
具体的にやろうとすると、リソースを使用するべきかどうか、どのくらい時間が掛かるのか、マインドシェアを取っても推進するべきかなど、時間を注ぐべきかどうかという現実的な問題として降りかかるため、切り分けを明確にしていくのは難しいです。
ここで行動に対する認識が揃えることが出来ていないと、毎回同じ課題がふりかえりで上がってきてしまったり、重要な課題に対していつまでもアクションされないといったことが起きます。
そのためTodoはやるべきレベルとチームが合意したものがカードとして置かれます。
PNPT3のフォーマット
上記の観点を整理した結果のフォーマットを作ります。
基本のベースとして[ポジティブとネガティブ] x [個人とチーム]にです。
会社に関してはスプリントのふりかえりの範囲で拾うには大きいため、個人の気になることなどで表明してもらえばよいでしょう。
シンプルにやるにはPNPTでやるのも良いかも知れません。
個人 | チーム | |
---|---|---|
ポジティブ | ドヤ、シェア、やったこと | 良かったこと、続けたいこと |
ネガティブ | もやもやすること、気になっていること | 課題、リスク、変えていきたいこと |
このベースにプラスして、称賛とNextAction(Todo)を明確にするために、
ThanksとTodoを加えました。
KPTだと左右の関係性などがあるので四角でも良かったのですが、全部を並列にしたいのと、話す順番的に回すように話したかったため、星型に線を区切り、おしゃれにしてみました。
進め方
[個人-ポジティブ] 、[個人-ネガティブ]、[チーム-ネガティブ]、[チーム-ポジティブ]、[お礼]
について5-10分程度で全員が書き出します。
次に1人ずつ以下の順番で話します。
- 茶色 : [個人-ポジティブ] - やったこと (共有、やったこと、ドヤ)
- 赤左 : [個人-ネガティブ] - 気になる (気になっていること、もやもやしてること)
- 赤上 : [チーム-ネガティブ] - 変えていきたいこと (課題、リスク)
- 緑上 : [チーム-ポジティブ] - 良かったこと (続けたいこと、楽しかったこと)
- 緑下 : [お礼] - お礼 (誰かへの感謝、チームへの称賛)
上記のカードを話す中で行動すべきアクションが決まったときにはTodoにカードを追加します。
- ポジティブなことで更に良くするために何かのアイデアが出てきた時
- 気になっていることに関してより詳しい情報を集めるためのアクション
- 課題として上げられたことに対する実行アクション
Todoは今すぐ実行するべきこと、ディスカッションの中で上がった実行方法です。
必ず推進するオーナーを決めて、次回のスプリントプランニングではカードを作成してトラッキングします。
この順番で話すのは、ポジティブな話でネガティブな話をサンドイッチすることで楽しくふりかえりが出来ることを期待しています。
やってみた
デザインツールのfigmaが、figjamというホワイトボートをβ版で公開していたため、こちらも試してみました。
https://www.figma.com/figjam/
やってみた感想
チームメンバーの感想
- KPTとYWTのいいとこ取り感があって、良さそうに感じた
- 前よりも色々な観点の話題がでてよかった
- 賞賛がたくさん出てて良いと思った
- 設問がチームに向けて発信するような聞き方になってるので、会話が生まれやすそう、聞いてる方もコメントしやすい
チームからも非常に好評でした!
観点が多いために時間がかかってしまう課題もあり、まだまだ改善の余地はありそうですが、この手法を引き続きブラッシュアップしていけば、定常的に使えるふりかえり手法になりそうです!
試しに使ってみたfigjamもなかなか良いです!
使い勝手としてはmiroとそこまで変わらないですが、機能が絞られているためカンバン向きだと感じました。
更に[+1]、[★]、[♡]などのリアクションアイコンがかなり良いです!
意見がないと特に反応しないというのがオンラインだと更に顕著になってしまうと思うのですが、figjamを使うと良かったと感じたカードに対して気軽にリアクションが出来ます。そして、画面的にも非常に賑やかになって楽しいです!
ネガティブなこととして上がったことも、課題を発見できて良かったという意味で👍 もつけたりしています!
フィードバックの募集
以上が新しいふりかえり手法についてでした。
「PNPT3」 (ぴーえぬぴーてぃーすりー)と言うふりかえりに興味を持っていただけたなら嬉しいです。
命名理由を改めて書くと、
- Positive
- Negative
- Person
- Team
- Thanks
- Todo
命名はしましたが若干呼び名が長い気もしているので、もっと良さそうな名前も付けたい気もしますw
良い名前の案があればコメントください!
このふりかえりに関して、面白そうと感じたり、チームで試したりした方は、ぜひLGTM、リツイート、コメント募集しております!
まだまだ始めたばかりの方法になるので、さらなる改善方法もたくさん出てくると思うので、色々なご意見募集しております〜