#はじめに
第3回目です。今回は連続フーリエ変換に足を踏み入れます。
具体的には、近似される関数と近似する関数を一般化していきます。
【第0回】目次と概要
【第1回】単純なモデルを解いてなれる
【第2回】連続フーリエ変換の導入part1
#本記事の対象
高校3年生までの知識がわかっている人
具体的には
- 奇関数と偶関数の性質(原点対称・点対称)
#前回のあらすじ
第1回で出た問題の式の$\sum$の中身を$n\rightarrow\infty$に置き換えました。
このとき、$a_k$をいじれば関数が完全近似されることを確かめました。この式ですね。
\int^{\pi}_{-\pi}(x-\sum^{\infty}_{k=1}a_k\sin kx)^2 dx=\frac{2}{3}\pi^3-\frac{1}{\pi}\sum^{\infty}_{k=1}{b_k}^2+\pi\sum^{\infty}_{k=1}(a_k-\frac{1}{\pi}b_k)^2\\
\left(a_k = -2\frac{(-1)^k}{k} , b_k = \frac{-2\pi(-1)^k}{k}\right)
#結論から書くと
###フーリエ変換で行っている近似
フーリエ変換では、$f(x)$を、このような式の$A_0$, $A_k$, $B_k$をいじって、近似しています。
f(x) \rightarrow \frac{A_0}{2}+\sum^{\infty}_{k=1}A_k\sin kx+\sum^{\infty}_{k=1}B_k\cos kx
第1回で周期関数に近似することがフーリエ変換のようなものと書いた理由はこれです。__これ自体はフーリエ変換ではない__ことに注意してください。
#モデルの近似式とフーリエ変換の近似式の関係
モデルの式とフーリエ変換の関係性についてみていきます。
突然ですが、$x$は__原点に対して点対称__な関数のため、奇関数です。
さて、$\sin x$も__原点に対して点対称__な関数のため、奇関数です。
原点対称の関数はいくら足しても原点対称のままです。
つまりこの式は__奇関数__です。
\sum^{\infty}_{k=1}A_k\sin kx
少し脱線します。
偶関数は__$y$軸に対して線対称__な関数です。
偶関数どうし、奇関数どうしなら性質が同じなので近似できます。
さて、ここで問題ですが、偶関数を奇関数、または奇関数を偶関数では近似できるでしょうか。
答えは__NO__です。原点対称と$y$軸対称では性質が異なります。(関数$y=0$に限り両性質を持っていますが......)
さて、話を戻しましょう。周期関数で近似するときに、偶関数である$\sin x$は偶関数部の近似の役割、奇関数部である$\cos x$は奇関数部の近似の役割を担っています。モデルの式は$x$が奇関数の成分しかもっていないため$\sin x$のみで近似することができました。
しかし、このような式はどうでしょうか。
f(x) = x^4 + x^3 + x^2 + x + 1
この式は、偶関数と奇関数と定数が合わさった式になっています。
偶関数部分は偶関数である$\sin$で近似することができます。
x^4 + x^2 \rightarrow \sum^{\infty}_{k=1}A_k\sin kx
奇関数の部分は奇関数である$\cos$で近似することができます。
x^3 + x^1 \rightarrow \sum^{\infty}_{k=1}B_k\cos kx
定数は偶関数に分類することができますが、あえて分けます。
1 \rightarrow \frac{A_0}{2}
つまり、感覚的にはフーリエ変換では偶関数部分と奇関数部分と定数部分で近似する式を分担しているということになります。
#第1回の問題を置き換える
さて、フーリエ変換ではこのような近似をすると書きました。
f(x) \rightarrow \frac{A_0}{2}+\sum^{\infty}_{k=1}A_k\sin kx+\sum^{\infty}_{k=1}B_k\cos kx
この式が最小になる「$A_0$, $A_k$, $B_k$の値」を見つければ近似終了です。
近似をするには、近似したい式と近似する式の差の2乗(これを最小二乗誤差という)を0に近づければよかったです。
よってこのような問題に置き換えられます。
【問題】次の式の値を最小にするための$A_0$, $A_k$, $B_k$を解きなさい。
\int^{\pi}_{-\pi}\left[f(x)-\left(\frac{A_0}{2} + \sum^{\infty}_{k=1}A_k\sin kx+\sum^{\infty}_{k=1}B_k\cos kx\right)\right]^2 dx
#問題を解く
記事が長くなるので解き方は載せませんが、第1回の解法を応用すると解くことができます。
なぜ長くなるかをいくつか挙げると
- 括弧を展開すると16項の多項式になる(まとめると10項)
- 第1回では$\sin\times\sin$の積和を考えたが4パターンすべての組み合わせを考えなければならない
#答え
近似をするための$A_0$, $A_k$, $B_k$の値はこのようになります。
\begin{align}
\begin{array}{rcl}
A_0 &=& \displaystyle \frac{1}{\pi}\int^{\pi}_{-\pi}f(x)dx \\
A_k &=& \displaystyle \frac{1}{\pi}\int^{\pi}_{-\pi}f(x)\sin kxdx \\
B_k &=& \displaystyle \frac{1}{\pi}\int^{\pi}_{-\pi}f(x)\cos kxdx \\
\end{array}
\end{align}
#最後に
今回はフーリエ変換に少しふれましたが、どうだったでしょうか。希望があれば解法は載せるかもしれませんが、記事5枚分にはなると思います()。
次回は複素数の視点から近似式を見ていきます。オイラーの公式を使うので、この式を覚えておいてください。
【オイラーの公式】
e^{i\theta} = \cos\theta+i\sin\theta \theta:極座標形式(r,\theta)の\theta (伝われ)
__極形式__といいます。こういう書き方ができるよーという感じです。