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UX手法のフライオンザウォールをやってみた

Last updated at Posted at 2019-12-13

はじめに

こんにちは。UX記事担当です。
ナビタイムジャパンでは、社内サービスのUX向上のためにワークショップの実施など色々な活動をしています。

この記事では、ユーザリサーチ手法の1つである「フライ・オン・ザ・ウォール」についてご紹介いたします。
実際に、手法を実践した結果を元にメリット・デメリットや使いどころをまとめてみました。

フライ・オン・ザ・ウォールとは

エスノグラフィー調査の1つです。1

直接的な関わりや介入をせずに人々の意識や行動を観察することで、ユーザー行動を知る、非影響型の調査法になります。

ようするに、名前の通りひっそりと「まるで壁に止まっているハエのようにユーザーの行動を見る」ということになります。

実際にやってみた①

まず実施するにあたり、観察対象や方法などを決めました。

すでにサービスインしているものでしたが、サイネージという使用者を観察しやすいものを対象としました。
また、会社から近い駅にあったため手法を試しやすいこと、サービスインしているもののため非影響型なこともありました。

どのような使われ方を想定しているか考え、観察の目的も整理しました。

①何を観察するか

👉東京メトロ様向け経路検索サイネージの利用者

(@明治神宮前)

②目的

・訪日外国人向けのサイネージのため、実際に外国人の方に使われているかどうか

・設置されている場所が本当に最適なのかどうか

(外国人の目にふれているのかどうか)

③記録方法

・AIUEOにのっとって記録する

 →AIUEOとは? デザイン手法-AIUEO

観察した結果①

近場の駅だったため、お昼の時間を使って現地に向かいました。実際の観察時間は15分程度でした。

その結果、サイネージを触ってくれていた方は1組のみでした…😭😭😭😭😭

実際に使っている様子はあまり見ることができなかったのですが、それでもこの短時間でいろいろと分かったことがありました。

外国人の方はたくさんいる

👉ターゲットが多いので設置駅は問題なさそう!

改札出たすぐの柱にサイネージがあり、人の動きが激しい場所に設置してあった

👉立ち止まってゆっくり操作できるような環境ではない

出口を探すのにさまよっている人が多くいた

👉サイネージは経路検索を案内するものだが、そもそも目的地が決まっている人が多そう

外国人の方は基本的にスマホを片手に確認をしていた

👉スマホである程度の情報は得られていそう

などなど…色々な発見がありました。

実際にやってみた②

①では、短時間の実施にも関わらず多くの発見がありました。

フライ・オン・ザ・ウォールって結構使えるかも!という感触を得られたので、さらにテーマを変えて試してみることにしました。

前回は既存サービス(駅サイネージ)の利用状況を観察したので、今回は新サービスや新機能のためのリサーチをイメージして、課題がありそうな状況だけを設定して観察することにしました。

観察すること
「電車から降りた後、左右のどちらに行くかをどうやって決めているか」

ある程度限られたシチュエーションであり、NAVITIMEのサービスとも親和性が高そう、ということでこのテーマに決まりました。

事前準備

実際に行く前に、おそらくこんな行動をとるだろうという仮説を立てておきました。

対象駅をよく利用する人(通勤/通学)
1. 降りて周りを見渡す
2. 周りをざっくり見て、手掛かりを探す(無意識)
3. 見えた情報から向かうべき方向を判断する
4. 歩き出す or 降りた瞬間に目的の方向へ歩いていく

対象駅が初めて or 詳しくない人
* 前提:目的地は決まっている
1. 目的地に近い出口を探す
2. 情報を得たら、出口・改札の方向を探す
3. 確認出来た情報から、向かう方向を決定
4. 歩き出す

観察した結果②

今回もお昼の時間に最寄りの駅へ。観察時間は20分程度でした。

対象駅をよく利用する人(通勤/通学)
* 階段を探している人が多い
* 降りてすぐに階段があれば真っ直ぐ向かう。なければ見渡して一番近い階段に向かう
* とりあえず下に降りれば改札がある、とわかっている様子

対象駅が初めて or 詳しくない人
* 周りをきょろきょろ見回して立ち止まる。
* 柱の黄色い看板(ホーム上にはあまりない)を見る人も
* 結局ある程度の情報しか得られず、とりあえず階段に向かう or 人の流れについていく

気づき
* 降りた後に探す情報は、駅の複雑度に依存しそう
* JR新宿駅のように階段が上方向にも下方向にもある場合は、階段だけを目印にはできないはず
* 左右の情報があるとむしろ混乱しそう

と、気づきはあったものの正直なところは、

結論:人が多すぎて見れたものではない... でした。

フライ・オン・ザ・ウォールの使い所

2回試してみた結果、使いどころやポイントが見えてきたので下記にまとめます。

実施する際の参考になれば幸いです。

どのようなときに使うと良い?

  • サービスや機能を作る前!
    • 現状理解や仮説の検証ができる
    • 現場を見るのは大事!
    • 使われないものを作るリスクが減る!
  • 人員や時間が限られているとき
    • 少しの準備で気軽にできる!
    • 短時間で結果が出る!
    • インタビューのように第三者を用意する必要がない

どんな観察対象に向いている?

  • 「モノ対ヒト」の観察に向いてる
    • 「看板を見ている人」や「改札を使っている時の人の行動」など
  • 逆に「ヒトの流れ」に注目すると難しい
    • じっと見ているだけなので、ヒトの流れにはついていけない

ポイント

①近場x短時間でとりあえず1回やってみる!
* どんな条件があるか見えてくる

②条件を変えて何回か実施する!比較が大切!
* 同じ対象を条件(場所、時間など)を変えて観察すると知見がどんどん広がる。1箇所だけで判断するのは危うい。
* 例えば今回のテーマなら、複雑度の高い新宿駅も見たほうが良い

③仮説を立ててから行く!
* 少なくとも、仮説が正しかったか、違ったか、という結果は必ず得ることができる
* なんとなく見て終わるだけでは時間がもったいないので。

さいごに

今回2パターン実施してみて、観察対象によって向き不向きがあることが分かりました。

向いている 向いていない
「モノ対ヒト」のサービス 観察対象が多いとき
リソースが限られているとき ユーザーの声を知りたいとき
環境や利用用途の把握 1回の調査ではっきりした結果を得たいとき

ただ、本当に短時間で簡単にできるリサーチ手法なので、「ユーザーリサーチ」って大変そう。

リサーチする時間なんてとれないよ!と思っている人にはぜひ試してみてほしい手法です。


  1. エスノグラフィーとは、文化人類学などで集団や社会の行動様式をフィールドワークによって調査・記録する手法およびその記録文書のこと。近年では、マーケティングなどの調査手法としても注目されている。 

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