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Solana DeFiプラットフォーム「KAMINO」

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はじめに

本記事は、ソラナトークンの販売を勧誘するものではなく、技術的な興味を紹介しています。
今回は、ソラナ上のDeFiプロトコルの1つである「KAMINO」>「Multiply」の仕組みが技術的に面白いと感じたので纏めました。

KAMINO:
https://app.kamino.finance/

最初に「KAMINO」の概要を述べ、その中でも異色な「Multiply」を紹介し、そこに存在するリスクについて公式ドキュメントの内容を添えます。

他にもDeFi特有のリスクが存在しますので、その辺りは各自調べて(DYOR)ください。

KAMINO概要と特徴

KAMINO(カミノ)はSolanaチェーン上に構築された革新的なDeFiプロトコルであり、レンディング(資産の貸借)流動性提供レバレッジ運用という3つの機能を統合したオールインワンのプラットフォームです。
もともとはユーザがワンクリックで集中型流動性を提供し、自動で利回りを複利運用できるサービスとしてスタートし、Solana上で最も人気のLPプロダクトに成長しました。その基盤の上に現在のKAMINOは拡張されており、単一のUXで高度な分析データや詳細なポジション情報を提供する業界トップクラスのユーザー体験を実現しています。

KAMINO上でユーザーは様々なDeFiアクションが可能です。例えば 資産の借入・貸出(レンディング) を行い利息収入を得たり、 集中型DEX(分散型取引所)に自動最適化された流動性を提供 してマーケットメイキング手数料収入を得ることができます。さらに、 SOLステーキング利回りのレバレッジ運用 (後述のMultiply戦略)や、 レバレッジ付き流動性提供 による収益拡大もワンクリックで実行できます。加えて、自分自身でカスタムな自動流動性戦略を構築することも可能であり、提供した 集中流動性ポジションを担保として利用 して追加の資金を借り入れるといった高度な運用もサポートされています。

KAMINOはプロトコル全体として非常に高い成長を遂げており、Solana上で最大規模の貸借プロトコルとして位置付けられています。また、KAMINOが提供する自動運用プロダクトには「Multiply」(後述)「Long/Short」といった高度な戦略も含まれており、これらはKAMINOのレンディング機能(KAMINO Lend)によって支えられています。最近は「Swap」機能も追加されました。

次節では、KAMINOで特に高利回りとなっている「Multiply」についての詳説します。

レバレッジ戦略「Multiply」

Multiply(マルチプライ)はKAMINOが提供する自動レバレッジ戦略の名称であり、特にSOLなどのステーキング利回りをレバレッジで増幅させたい場合に適したプロダクトです。

Multiplyを利用すると、ユーザはSOLもしくはステーキングされたSOL(LST)を預け入れ、ステーキング報酬を最大5倍程度までブーストした運用を行うことができます。
具体的には、預け入れられたSOLを即座にステーキングデリバティブ(LST)にスワップし、それを担保にSolana上の貸借市場から追加のSOLを借り入れ、再びそれをステーキング…というループを自動実行します。例えばユーザが100 SOLを元本としてMultiplyを開始すると、KAMINOはその100 SOLをJitoSOL等に交換し、それを担保に約80 SOLを借り入れます。借りたSOLを再度JitoSOLに交換して担保に追加し、さらに借入を行う…という操作を繰り返し、結果として最終的に約180 SOL相当のステーキングポジションを保持することになります(レバレッジ約1.8倍の場合)。この状態でユーザは元の100 SOLに対して年率8~12%程度だったステーキング利回りを、約15~30%程度まで向上させることができます。

Multiply 戦略の固有リスク

高利回りのプロトコルは裏を返せば、それ相応のリスクが存在します。本稿ではMultiplyのリスクについて解説します。
(公式ドキュメントの内容そのままですが参考になります。)

出典

https://docs.kamino.finance/products/multiply/risks

1. 清算リスク (Liquidation Risk)

Multiply ボールトは 負債ポジション を開くため、ローン‐トゥ‐バリュー(LTV)比率が清算閾値を超えるとポジションが清算されるおそれがあります。

  • SOL Multiply の場合:借入金利が LST の利回りを長期間上回ると、清算が発生する可能性があります。
  • JLP Multiply の場合:JLP の価値が USD に対して下落し、清算閾値に達すると清算されることがあります。

※KAMINOによると、清算は過去に発生したことがないそうです。ただ何があるか分からないのがクリプトの世界なので、常日頃からLTVは気にするべきだと考えます

2. デペグ・リスク (Depeg Risk)

Multiply にはデペグリスクはありません

これは Kamino の LST オラクル によるものです。
LSTオラクルについては後述します。

3. 自動デレバレッジ (Deleveraging)

Kamino には 自動デレバレッジ機構 があり、プロトコル内で負債と担保を体系的にアンワインドして、バランスシート上の各資産量が安全域に収まるよう調整します。

  • デレバレッジは自動で行われ、一般にポジションの LTV が安全な範囲へ戻ります。
  • ただし、デレバレッジ開始前には マージンコール期間 が設けられ、Kamino の公式 SNS で通知されるので定期的な確認が推奨されます。
  • さらなる情報は「Auto‑Deleverage」のドキュメントを参照してください。

4. 社会化損失 (Socialized Losses)

K‑Lend で 不良債務 が発生すると、その負債はシステム内の全ユーザに 比例配分 されます。絶対に起きて欲しくないイベントですが、クリプト界隈を見ているとこのリスクは一番高い気がします。。

  • これにより、すべてのポジションの LTV が清算閾値に近づき、場合によっては清算を招く恐れがあります。
  • バッファを確保するため、極端な金利上昇でも清算されない水準 でポジションを管理することが推奨されます。

5. スマートコントラクトリスク (Smart Contract Risk)

JitoSOL や mSOL などの LST、および JLP などの LP トークンは、いずれも Kamino 以外のスマートコントラクトによって発行されています。

  • したがって、Kamino 以外のプロダクトの安全性については、各自で十分な調査(DYOR)を行う必要があります。

LSTオラクル (LST Oracles)

Kamino における価格算定手法

Kamino では各 LST(Liquid Staking Token)の stake _rate を用いて、その LST の 理論価格 (theoretical_price) を算出します。
市場価格 (market_price) ではなく理論価格を用いることで、DEX における流動性の多寡に左右されず LST の価値を評価できます。

仕組み (How It Works)

LST の価格は次式で計算されます。

LST ステークプール価格
SOL_staked  /  LST_minted

  • 各エポックでプール内の SOL は

    1. Proof‑of‑Stake による発行

    2. トランザクション手数料

      により増加します。

  • 増加した SOL に対し発行済み LST の枚数 (LST_minted) はほぼ一定のため、エポック毎に LST 価格は SOL に対して上昇します。

なぜこの手法なのか (Why This Approach?)

  • Solana DeFi には 大量の LST 残高 が存在しますが、各 LST の DEX 流動性は相対的に不足しています。

  • そのため、市場で簡単に デペグ(価格乖離) が起こり得て、LST を担保にした借入ポジションが清算リスクにさらされます。

  • ステークプール価格 を用いることで、デペグによる清算リスクを排除できます。

    • 例:Multiply ポジションが LST 価格乖離で強制清算されることはありません。
  • ただし前述したように スマートコントラクトの脆弱性 による LST の損失リスクは依然として残ります。

留意点

  • 市場価格と理論価格の差はアービトラージにより解消される前提です。
  • もしアービトラージが機能せずデペグが長期化した場合、プロトコルに 不良債務 (bad debt) が発生し、その損失はシステム全体の債務ポジションに 比例配分 されます。

リスク評価フレームワーク (Risk Assessment Framework)

K-Lend の包括的リスク管理

Kamino は KRAF (Kamino Risk Assessment Framework) と呼ばれる継続的なリスク管理プロセスを運用し、以下を実施しています。

  • トークンごとのリスク分析(ボラティリティ・流動性・清算リスク など)
  • プロトコル全体のリスク分析(Liquidations‑at‑Risk、シナリオ分析 など)
  • 発見された問題に対し Risk Council が迅速に対応

KRAF ダッシュボード

ダッシュボードで閲覧できる主な情報

区分 内容
Risk Overview - 現在の入出金残高、借入残高、供給/借入金利、利用率、グローバル上限のサマリ
- X% の価格ショック が起きた場合の Liquidations‑at‑Risk を即時確認
- トークン別の総入金・総借入 (棒グラフ)
- 各トークンの金利曲線と現在の利用率・金利
Loans Analysis - 各ローンの詳細をフィルタ可能なテーブル表示(現在 LTV、最大 LTV、清算 LTV、入金・借入・純資産)
- 各ローンごとの棒グラフ:現在 LTV/最大 LTV/清算 LTV/入金/借入/純資産
Detailed Token Decompositions - 各ローンの入金・借入をトークン別に分解した棒グラフ
Volatility Risk Analysis - トークン価格の時系列チャート
- トークンの Parkinson 実現ボラティリティ 時系列
Liquidity Risk Analysis - Jupiter スワップで 指定 USD 規模 を売買した場合の価格インパクト推移
Price Shock Analysis - 全トークン一律ショック時のシナリオ分析
- 個別トークン一律ショック時のシナリオ分析
- 全トークン相関ショック時のシナリオ分析
- 過去の実例に基づくイベント・ショックの適用
Risk Reduction Analysis - 介入後(ポジション調整など)のシナリオ再分析(上記ショックを再適用)

さらに、各ローンの 時系列リスク推移 を詳細に追跡できる専用タブも用意されています。

最後に…

ソラナはボラティリティが高い世界です。(暗号資産そのものに言えますが)
そこに加えてレバレッジをかける資産運用はそれなりの代償が伴いますので、万人にオススメできるものではありません。リスクとリターンを適切に管理し火傷しないように過ごしましょう。

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