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AWSによる生成AIの新サービス「Amazon Bedrock」の可能性を考察する

Last updated at Posted at 2023-04-13

はじめに

2023/4/13に、AWSが新しい生成AIプラットフォームである「Amazon Bedrock」を発表しました。
この「Amazon Bedrock」を通じて、ビジネスやアプリケーションに最適な生成AIモデルを見つけるための幅広いFoundation Model (FM)を提供するとの発表がされています。

この記事では、Amazon Bedrockがどのように機能し、どのようにしてビジネスに価値をもたらす可能性を秘めているのかを解説します。

1. Amazon Bedrockの仕組み

簡単にまとめると、次のような機能や特徴を持つようです。

  • AIスタートアップやAmazonが開発した幅広いFMから選択できます。
  • サーバレスでプライベートにカスタマイズでき、独自のデータを使ってFMを調整できます。
  • AWSの既存サービスや機能(Amazon SageMakerおよびSageMaker Pipelinesなど)を使って、簡単にアプリケーションと統合し、デプロイできます。
  • 他のAWSマネージドサービスと同様に、インフラストラクチャの管理は不要です。

2. Amazon Bedrockを通じて提供されるFoundation Model

GPT-4のような様々なモデルを使えることが「Amazon Bedrock」の特徴とされます。
以下に「Amazon Bedrock」での提供が発表されているモデルについてまとめてみました。

Titan FMs

Titan FMsは、AWSが独自に新しく提供するモデルで、テキスト生成 (ブログ投稿の作成など)や要約などのタスクのための大規模言語モデル (LLM) であるTitan Textと、テキスト入力をテキストの意味を含む数値表現に変換するLLMであるTitan Embeddingsから成るようです。

また、Titan FMは、データ内の有害なコンテンツを検出して削除し、不適切なコンテンツ (ヘイトスピーチ、冒涜、暴力など) を含むモデル出力をフィルター処理するように構築されているようです。

Jurassic-2

AI21 Labsが最近発表したJurassic-2ファミリーは、優れた品質、柔軟性、高いパフォーマンスを誇るとされる大規模言語モデル(LLM)です。
Jurassic-2モデルは、Amazon Bedrockを通じて提供され、開発者はAWS環境上で、生成テキスト機能を利活用できます。
Jurassic-2のゼロショットプロンプティングを活用することで、言語タスクのパフォーマンスを最大化し、コストを最適化できるとされます。
事前にトレーニングされたデータや例を使用せずに、新しいタスクや問題を解決することができ、既存の知識を応用して、未知の状況に対処する方法を評価できると言えそうです。
ChatGPTで味わっているように、AIモデルが特定のタスクのためにファインチューニングされていなくても、自然言語で与えられた指示に従って適切な回答や解決策を生成できるでしょう。
これにより、開発者がAIモデルを独自のアプリケーションやシステムに容易に統合でき、さまざまな言語タスクに対応できるようになると考えられます。

AI21 Labsは、イスラエルを拠点とするAIスタートアップで、自然言語処理(NLP)技術に特化しているようです。
同社は、企業や開発者がNLPの専門知識がなくても最先端の言語モデルを活用できるように支援しており、その目標は、生成AIを用いて、人間の読み書きの体験を革新的に変えることとされています。
同社は、NLP技術のアクセシビリティを高め、幅広い分野でAIを活用できるようにすることを目指しているようです。

Claude

AnthropicのClaudeは、高度な指示に従う能力やテキスト処理スキルとコンテンツフィルタリング機能を備えており、開発者は実世界の困難なビジネス課題に対処するための強力なAIモデルを利用して、AIベースのアシスタントを構築することができるとされます。

Anthropicは、安全性に優れたカスタマイズ可能な大規模言語モデルを提供するAI企業で、AI技術を用いてビジネスに革新的な解決策を提供することを目指しているとされます。
Anthropicの共同創設者でありCEOのDario Amodei氏は、以前OpenAIで働いていたことがあります。

Anthropicは、Amazon Bedrockを通じて、自社のAIアシスタント(対話型AI)「Claude」を開発者に提供します。
Amazon Bedrockの安全で高性能なインフラストラクチャを活用して、開発者は独自の生成AIモデルを容易に構築することができ、効率的に、リアルタイムでの問題解決や、新たなビジネス機会の創出をサポートするAIアプリケーションを開発することができます。

Stable Diffusion

Stable Diffusionは、AIモデルによって画像を生成するための技術で、2022年に世界中を席巻しました。
高品質でリアリスティックな画像を生成することが可能で、様々な用途に応用されています。

Stability AIは、世界中を席巻したStable Diffusionの画像生成モデルを開発したオープンソースの生成AI企業です。

Stability AIは、Amazon Bedrockを通じて、AWSを利用する開発者にStable Diffusionモデルを提供します。
開発者はAWS環境内でStable Diffusionモデルに簡単にアクセスし、画像生成やビジュアルデータの処理に関連するタスクを効率的に実行することができ、適切な情報やデータに基づく意思決定を行いつつ画像を生成することが出来るようになるでしょう。

Stability AIのCEOであるEmad Mostaque氏は、AWSとの連携を通じて、Stable Diffusionモデルを広く提供することに期待を寄せており、開発者や企業が強力な画像生成能力を活用してさらなる価値を創出することができるとしています。

3. ChatGPTとの違い

「Amazon Bedrock」がリリースされることにより、AWS上で生成AIのアウトプットを活用したアプリケーションを開発しようと考える場合に、ChatGPT (OpenAI) とどちらを選ぶべきか迷うことになるかと思います。
以下に、本日の発表から考えられる、Amazon BedrockとChatGPTの違いと、今後の可能性について考察します。

Amazon Bedrockの方が幅広いモデルを使える

Amazon Bedrockは、複数のAIスタートアップやAmazonが開発したFMを提供するとされ、開発者は自分のニーズに最適なFMを選択できます。
一方、記事執筆時点のChatGPTはOpenAIが開発した特定のモデル(GPT-4)などに基づいており、利用可能なモデルの選択肢は限定されていると言えます。

Amazon Bedrockの方がカスタマイズ性が高く、組み合わせの幅が広い

発表によれば、Amazon Bedrockでは選択したFMを独自のデータでカスタマイズできるとあります。
これにより、開発者はAIモデルを特定の業界やドメインに特化させて、アプリケーション開発に活用することができるでしょう。
ChatGPTもカスタマイズが可能ですが、Amazon Bedrockの方が幅広いFMの選択肢を提供することから、同じサービスの中でより柔軟にカスタマイズかつ組み合わせが可能となりそうです。

Amazon Bedrockの方がAWSサービスとの親和性が高い

何と言ってもAmazon BedrockはAWSの一部であり、AWS上での開発やデプロイは容易になるでしょう。
既存のAWSサービスとの統合がスムーズになるだけでなく、Amazon SageMakerのような機械学習サービスとも連携できるのは強みとなります。
一方、ChatGPTはOpenAIが提供するサービスであり、AWSと統合するには、API GatewayやLambdaを通じてAPIを実行するなど、追加の設定が必要です。

4. まとめ

「Amazon Bedrock」で、ChatGPTのように機械学習のモデルを簡単に利用することができるようになり、AI21 Labs、Anthropic、Stability AIなどのAIスタートアップが提供するモデルや、Titan FMsと呼ばれるAmazonが提供するモデルを組み合わせて、様々な用途でAIを活用できるようになるでしょう。
Amazon Bedrockは、他のAWSマネージドサービスと同様にサーバレスであり、他のAWSサービスと簡単に統合して利用できそうです。

AWSの発表内容から推測すると、AWS上でアプリケーションを開発して生成AIのアウトプットを活用したい場合、これまでOpenAIのAPIやAzure OpenAI Serviceと接続することをまず考えましたが、今後は「Amazon Bedrock」が第一選択肢となる可能性が高そうです。

ただ、この生成AIと言われる分野については、各クラウドベンダーが開発を競っていたり、ChatGPTがプラグインを軸に統合プラットフォームと言えるような発展を遂げそうな動きもあり、今後とも目が離せないと言えそうです。

参考文献

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