初めまして!
**「使ってもらえるプロダクトを作る」をモットーに諸々しているなすです。
今回は「使ってもらえるプロダクト作り」においてとても大切であると感じる「価値マップの作り方」**について紹介したいと思います。
現実に即してプロダクトを考えよう
使ってもらえるプロダクトを作るのにおいて**「妄想の中だけでプロダクトを考えること」**だけは絶対にやってはいけません。
実際に、僕が本を使った学習をサポートする「BooQ」をリリースした時はこのことに気がついておらず、まだ妄想のなかで物事を考えてたため悲惨な結末に終わってしまいました。
頑張って作ってリリースしてみたはいいものの、インストールした人のほとんどがアプリを使わないというとても愚かなアプリを開発してしまったのです。
そこで僕は**「もっと現実に即してプロダクトを考えなくては」と感じ、そんな時にたまたま出会ったのが価値マップでした。
価値マップの素晴らしいところは「現実に即してプロダクトを考えられる」というところです。
これにより「妄想の中だけでプロダクトを考えること」とおさらばできます。**
実際に、価値マップを取り入れて作った「大学生の講義カメラ」は、 インストールした人の30%近い人が使い続けてくれています。
30%という数値はUtility系のアプリをインストールして7日後に使っている人の平均割合が14%なことを見ると実は高めの数字なのです。
(cf. アプリユーザーの80〜90%はダウンロード1週間後には死んでしまう。)
使ってもらえるプロダクト作りにおいては、価値マップを作り 「現実に即してプロダクトを考えること」こそがとても大切なのです。
価値マップとは?
価値マップとは 「現実に存在する価値を整理して図示したもの」 です。
これだと少しわかりにくいですよね。
実物をみてみましょう。
これは実際に僕が講義カメラを作った時の価値マップです。
これを作ることでアイデアの段階では出てこなかった機能を思いついたり、どの価値に重きをおくかを考え、「なんのためにプロダクトを作るか?」という軸がブレずに作れました。
このように現実の出来事に沿って価値をまとめ、「現実に即してプロダクトを考える基盤」になるものを価値マップと言います。
価値マップ作成の流れ
価値マップを作るときの全体の流れとしては次のような形です。
- 価値カードを作る (上の画像中の四角いカードのこと)
- 価値カードをグループに分ける
- グループを時系列に並べる
この先で一つずつ詳しく説明していきます。
1. 価値カードをKA法で作ろう
価値カードは価値マップの核部分である
価値カードとは**「現実の出来事」から「価値」を分析, 抽出したカード**です。
イメージがしにくいと思うので先ほどの講義カメラの価値マップから3枚ほど価値カードをみてみましょう。
一番左のカードについて深く見ていくと
「カメラロールに色々な教科のスライドの写真があってなかなかお目当ての写真にたどり着けない!」 といった出来事から、この人が求めているのは「欲しいスライドに簡単にたどり着ける価値」だな!と分析して価値を抽出しています。
他のカードも同じように実際の出来事から価値を抽出しているので見てみてください。
このように実際に人が経験した「出来事」からその裏の「価値」を抽出して一枚にしてあるカードが価値カードです。
**価値マップの目的は「現実に即してプロダクトを考える」ところにあるので、現実と価値マップを繋げるパーツである価値カードは、「価値マップを作る上では非常に大切な核である」**といえるでしょう。
KA法を用いた価値カード作成の流れ
KA法とは実際の「出来事」から、その時の「感情」、そしてその時の「価値」を推察する手法です。
流れは次の通り
- 「出来事」を探して集める
- 「心の声」をそのときのその人を想像して口語で書く
- 「価値」を出来事と心の声から書く
このとき非常に大事なことが2点あります。
-
価値は必ず「OOする価値」「OOできる価値」「OOせずに済む価値」という形式で書き込む
必ず動詞で終わらせて最後に価値をつけましょう。
「写真をとったら自動でフォルダ分けをしてくれるカメラの価値」などはダメ です。
**「写真をとるだけでフォルダ整理をせずに済む価値」**などの形で必ず動詞形で終わらせて書きましょう。 -
プロダクト作りとは分けて考える
価値マップ作成に通して言えることなのですが特に価値カードを作るときは気をつけておくべきです。
自分のプロダクトのアイデアに都合がいいように価値カードを作っていってしまっては最大のタブーである「妄想の中だけでプロダクトを考えること」から抜け出せていません。
価値カードを作るときは**「ひとまず現実世界を把握する」という意識**でやっていきましょう。
流れがわかった上でもう一度価値カードを見てみましょう。
「出来事に対して、心の声を書いて、価値を動詞形で終わらせて書く」
価値カードの作り方がなんとなくわかったでしょうか?
2. 似ている価値カードをまとめよう
KA法で出来事から「出来事の裏にある価値」というものをカードにしてまとめてきました。
当然出来事はたくさんあり、たくさんカードを作っていると同じような価値が書かれているカードがたくさん出てきます。
例えば「大学生の講義カメラ」を作った時にはこのようなカードがありました。
1, 2, 5は出来事は違えど、足りていないのは似ている価値だとは思いませんか?
そんな時、1, 2, 5をまとめて**「見たい写真にさっとアクセスできる価値」**として大きなまとまりにします。
また、3, 4も似たような価値であるため**「カメラロールを大学の写真に汚染されない価値」**が足りていないとまとめることができます。
このように異なる出来事から出てきた価値をグループ化することで少し抽象度をあげます。
こうするともう**「こういうものを作ればこの人たちは使ってくれそう!」というアイデアが死ぬほど溢れてきませんか?**
3. まとめたグループを時系列に並び替えよう
グループを時系列に並び替えることでそれぞれの価値グループの相対関係が明確になります。
講義カメラでは次のような時系列でまとめました。
このように時系列にまとめることでどんな機能をどのタイミングで使うのか?などを考えるのに役立ちます
これで価値マップは完成です!
「出来事」はSNSから採取
さて、出来事→価値→価値カード→価値マップ
という流れで価値マップができることはわかりましたね。
しかしでは最初の出来事はどのように集めればいいのでしょうか?
正直最初は僕はこの方法は無理だと思っていました。
ヒアリングして出来事を集めるとすると、相手も時間も技術も必要になってきてしまうので。
しかしそんな時にTwitterやFacebookなどのSNSはとても便利でした。
僕は主に出来事のところにTwitterのツイートを入れ、それを元に価値マップを生成しています。
これのいいところは2点あります。
-
ありのままの現状が手に入る
まさか調査に使われると思っていないので、アンケートなどと違い観測者効果がないです。 -
ヒアリングと比べて圧倒的コスパ
検索技術こそ少し必要になれども、好きな時に好きなワードで検索をかけるとたくさんツイートが出てくるので、ヒアリングと比べ時間的な制約や人間的な制約もないです。
このように僕はTwitterで関連キーワードで検索をかけ、出てきたツイートをもとに価値カード, 価値マップを作成していました。
【追記 2020-03-22】
実際に業務で価値マップを作成したところ、過去のヒアリングをもとに、「こんなことあるよね!」「こんな人いたよね!」をベースに出来事を書き出すことがあり、その際の注意点がわかったのでまとめておきます。
- 出来事は必ず過去形で書く
そうしないと、「ありそう」ということと「あった」ということがごちゃ混ぜになってしまいます。
これをすることで、その区別をつけられます。 - ブレストするときは「お題」と「あったこと」を別々にブレストとする
このやり方をやる際には「思い出しながら出来事を書いていく」ということがあると思います。
その際に、ブレストしたカードが「お題」なのか「出来事」なのかは分けて考えたほうがいいです。
例えば、「講義中に写真を撮る」はある種のお題であり、「講義中に写真を撮るときに、音がなって恥ずかしい思いをした。」は出来事です。
ここをごちゃ混ぜにしてしまうと、あとで価値を抽出する際に混乱が生じます。
最後に
最後まで読んでくださってありがとうございました。
何度か記事中に出てきた[大学生の講義カメラ]
(https://itunes.apple.com/jp/app/%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E7%94%9F%E3%81%AE%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9/id1436386913?l=en)は**撮った写真をその場で講義ごとに整理してくれるアプリ**です。
カメラロールから写真を移すと自動で講義ごとに分けて自動整理してくれる機能もあり、カメラロールから講義の写真を無くしたい人にもオススメなのでよかったらインストールしてみてください。笑
(こちらからインストールできます)
また、Twitterもやっており、日々**「使ってもらえるプロダクト作り」**に関係のある(たまにないけど。笑)ツイートをしているのでよろしければ見てやってください。(Twitter: @nasutaro211)
最後に、AdventCalendarを企画してくださり、このような記事を書く機会を作ってくださったOthloTechの運営のみなさん本当にありがとうございました。
またいつか勉強会に参加させていただきます。
みなさんありがとうございました。