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MicrosoftによるGitHub買収について次期社長に訊く(翻訳)

Last updated at Posted at 2018-06-08

GitHubの次期CEOのNat Friedmanだけど質問ある?

RedditにGitHubの次期CEOであるナット・フリードマン氏が現れて、MicrosoftによるGitHub買収による影響についていろいろな質問に答えてくれています。興味深い内容が多く、(彼の発言を額面通り受け取るなら)一部で出ている不安を緩和できるようなものでもあると思ったので、翻訳して紹介します。内容的に重要と思われる質問について、本人の発言のみをかいつまんでおり、ジョーク系のやりとりなどについては省いています。また、読みやすさのため、同じ話題についての複数の回答を適宜統合したりもしています。ご了承ください。

ソース: I'm Nat Friedman, future CEO of GitHub. AMA.

この買収による近い将来の変化は?

回答:我々がGitHubを買収するのは我々がGitHubが好きだからです。現在のGitHubのロードマップへの投資を継続し、GitHubがGitHubとして良くなっていくようにするのが我々の現在のプランです。また買収は今年の後の方になるまで完了しません。それまでは2社は別会社であり、私もGitHubがやることについて影響力を持ちません。

GitHubアカウントの代わりにMSアカウントでログインするの?

回答:我々はGitHubアカウントでのログインが大好きです。GitHubアカウントはみなさんの開発者としてのアイデンティティであり、(TravisやCircleなど)多くの開発者ツールやサービスにログインするときにGitHubアカウントを使うことに、多くのユーザは慣れ親しんでいます。もし何かあるとすれば、MicrosoftへのログインのオプションとしてGitHubアカウントが追加される、という決定ならあるかもしれません。

AtomとVisual Studio Codeはどうなるの?

回答:開発者は自分の開発環境にこだわりがあり、エディタ選びはそれぞれの開発者が行う最も個人的な意思決定です。開発言語が変わり、仕事が変わり、新しいマシンを手に入れてOSをアップグレードしたとしても、一度エディタを選んだら通常は何年もそれを使い続けて慣れていくものです。Atomのユーザからその選択権を奪うことは決してしたくありません。

Atomは魅力的なエディタであり、健全なコミュニティと熱心なファン、素晴らしいデザインを有し、リアルタイムコラボレーションの分野にも有望な進出を果たそうとしています。Microsoft内でもAtom、VS Code、SublimeからVimに至るまであらゆるエディタが使用されています。開発者には自分の好きなエディタでGitHubを利用して欲しいと思っています。

従って、これからもAtomとVS Codeの開発とサポートは続けていきます。

VS CodeとAtomは既に大量の履歴とコードを共有しており、MicrosoftとGitHubは過去何年にもわたり基礎的な技術の部分でコラボレーションを行ってきました。

  • 一番わかりやすいところでは、我々は両エディタの共通の基盤であるElectronを共に開発してきました。Electronが発表された2015年(当時はAtomShellと呼ばれていました)から既に、MicrosoftはElectronの開発に関してGitHubと協力してきました。VS Codeが発表される以前の話です。それ以降もずっと、Microsoftは彼らのSlackチャンネルに入り、ハッカソンに参加し、Electronの主要な貢献者でありつづけています。Microsoftの他の多くの製品でもElectronを使っています。
  • 我々がVS Codeの一環として作成したLanguage Server Protocolを、Atom-ideも採用しています。これにより高度な言語機能をVS CodeとAtomとの間で共有できます。Atom-ideがサポートしている言語パックはすべてVS Codeと言語サーバを共有しています。
  • Atom-ideコミュニティはDebug Adapter protocolの採用についても検討しており、そうなればAtomとVS Codeの間で共通のデバッガサポートが実現します。
  • 最近ではリアルタイムコラボレーション機能の開発も楽しみにしており、Atom TeletypeとVS Code Live Share
    がプロトコルを合わせることで、いつかは両方のエディタを利用する開発者がリアルタイムに同じファイルを編集できるようになればと期待しています。

これまでのMicrosoftとGitHubとの数年間のコラボレーションによりこれら2つの愛されるエディタが誕生したことは素晴らしく、今後もこの実りある関係が続いていくことを期待しています。

(期間について) 両方のエディタについて健全なコミュニティが存在している限りはこの状態を続けるつもりですし、それはつまり、とても長い期間になるということでしょう。

GitHubに広告が出始めるの?

回答:ノー。(ちょっと歴史の話:GitHubが始まったころ、Sourceforgeがインターネット上では支配的なコードホスティングサイトでした。その後Sourceforgeはメディア複合企業に買収され、広告を通じたマネタイズが強力に進められました。サイトはバナー広告とポップアップだらけになり、より多くの広告を見せるべくダウンロード速度が低下していきました。GitHubのクリーンなインターフェースと開発者中心のアプローチは部分的にはSourceforgeへの反発と見ることもできるでしょう。明らかにその反発の方が正しかったのです。)

GitLabやBitbucketのような無料プライベートリポジトリ提供の予定は?

回答:現時点ではまだ分かりません。

GitHubの内部スタックがRails以外に変わることは?

回答:言うまでもなくGitHubはRailsのアーリーアダプターであり、自らのスタックを世界有数のウェブサイトにスケールさせるために素晴らしい仕事をしてきました。プラットフォームを変更する予定はありません。

GitHubがMS化(Bing/Skype/Office統合など)しない?

回答:我々がGitHubを買収したのはGitHubがどれほど特別なのかを正しく評価しているからです。だからこそこの買収を進めるにあたり、以下の2つの原則を立てました。

  1. 開発者ファースト。すべての意思決定は、何が開発者にとってベストなのかというレンズを通じて評価します。それは、「誰もが機能を拡張できるオープンなAPIを備えた、開発者のためのオープンなプラットフォーム」というGitHubの状態を保つということです。GitHubにおいて、あらゆる言語、あらゆるライセンス、あらゆるOS、あらゆるデバイス、あらゆるクラウドを使っている開発者をサポートすることを我々が約束する、ということです。
  2. 独立性。我々はGitHubをMicrosoft化するために買収しているのではありません。我々は開発者の重要性を信じ、開発者コミュニティにおけるGitHubの唯一無二の役割を信じているから買収するのです。我々のゴールはGitHubがGitHubのままでより良くなること(そしてひょっとしたら、Microsoftがもう少しGitHubのようになる手伝いをすること)です。

GitLab等に移行している人達に言うことは?

回答:開発者はそれぞれ独立した考えの持ち主ですし、健全な範囲で猜疑心を抱きもします。しかしながら一部の開発者がコードを移行することを強いられているように感じていることについて、悲しく思っています。彼らの信頼を勝ち取ることが私の重大な責任です。

一方で、このようにリポジトリをすぐ移転できる柔軟性をgitが持っていることは素晴らしいことだと思っています。我々がオープンソースへコミットしていることを示し、GitHubをよりよい場所にすることができたあかつきには、この数日で他のホスティングサービスを試した人々が再び開かれた心で我々のサービスに戻ってきてくれることを望んでいます。戻ってこなかったとしてもそれは彼らの権利ですし、我々を選ばなくとも開発者の選択を尊重します。

とはいえ、GitHubチームの報告によれば、移転したりアカウントを閉じたりした人の数は非常に少ないです。今週のGitHubへの新規登録ラッシュや引き起こされたGitHubへの興味の度合いは、それを補って余りあるものです。

買収してMSにとって何が得なの? どこに75億ドルの価値が?

まず、世界における開発者の数も、重要な意思決定における開発者の影響力も急成長していますので、GitHubは非常に価値のあるマーケットであると考えています。開発者へサービスを提供するというGitHubのコア事業そのものが(すでに好調ですが)これからも成長を続けていき、Microsoftのような規模の企業にとってすらとても意味のあるものになると信じています。

そこに留まらないMicrosoftにとっての最大の利益とは、Microsoftの技術をほぼ使わずに成長してきた新たな世代の開発者の信頼を勝ち取れるということです。数年後に「GitHubが買収前よりも良い場所になった」とGitHubユーザが思ってくれ、それによって我々がやっている他のあらゆる事業でMicrosoftを検討してもらえるようになることを目指しています。

Microsoftと競合する会社のコードもGitHubにはあるはずだけど?

回答:Microsoftは10億人以上のカスタマーの秘密情報をホストしており、この責任を非常に重大なものとして捉えています。従業員によるプライベートリポジトリへのアクセス制限について、GitHubは既にポリシーを有して管理しており、Microsoftの元でもこれまで同様に厳格に管理されます。

GVFSのクロスプラットフォーム化に関する予定は?

我々はWindowsチームがGitにスイッチできるようにするためにGVFSを構築し、それは上手くいきました(そうです、今ではWindowsはリーナス・トーバルズが作成したバージョン管理システムで構築されているのです!)。Windowsのコードベースは巨大(約300GB, 400万ファイル)であり、かつ活発に開発されています。Gitの多くの操作はこのレベルのコードベースでもリニアにスケールしますので、この極端なシナリオでより良くGitが動作するためにGVFSを開発しました。MicrosoftのOfficeチームの協力を得てGVFSのmacOS版の開発を既に始めています: https://blogs.msdn.microsoft.com/devops/2018/03/15/gvfs-for-mac/ . また実はLinux版のGVFSについてもGitHub社と協力して開発をしています(FUSEが使えればもっと楽なのですが残念ながらパフォーマンスが十分ではありません)。GitHubはこれについて人材募集をしていますので、興味があれば https://boards.greenhouse.io/github/jobs/1121642 をご覧ください。

以前のMSがオープンソースソフトウェアを拒絶していたのは何故だと思いますか?

回答:恐怖心 (Fear)。

MSは過去にも買収した製品の評判を落として来たよね?

回答:この種の買収に関してMicrosoftはいくつか手痛い(高く付く)教訓を得てきました。現在のMicrosoftの体制における買収はよい実績をあげています。MinecraftやLinkedInがよい例であり、成功したプラットフォームを手に入れ、これらの会社のビジネスを加速するために必要なリソースを供給し、独立して運営させています。それは上手くいっています。

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