はじめに
NetSuiteに蓄積された業績データを活用し、専門知識のない業務ユーザーでもデータ分析ができる方法としてChatGPTのDeep Research機能を試してみました。
今回は、NetSuiteからエクスポートした売上関連のCSVデータをChatGPT(Deep Research)に読み込ませ、日本語の自然言語プロンプトで売上分析を行った事例を紹介します。
本記事では、データの準備から分析までの流れを解説し、実際にChatGPTへ投げかけた質問(プロンプト)と得られた回答結果(グラフや集計表)を掲載します。データ民主化によって、非エンジニアの方でも自社データから容易に洞察を得られる可能性をぜひ感じてください。
データ分析について
TableauがセルフサービスBI製品として認知される数年前から同様な製品は市場にありましたが、価格や操作性などの理由から認知度合いは低かったといえます。また「エクセル使いにお願いして、グラフを作ってもらう」というデータ分析が横行している日本の組織では仮に製品が簡単だとしてもお気持ちの面で自分でデータ分析をするという人が少なかったと言えます。この自分で分析する行為を推し進めたのがTableauだと筆者は考えています。
ちなみに、筆者は2014年にはセルフサービスBIのSpotfireの販売と導入を手掛けていたので、Tableauだけしかなかったとは考えておらずQlik、DOMO、Spotfireが市場に存在しそれぞれが適用度合いの高い領域で売れていたことを理解しております。
また組織内における計数管理はWebのダッシュボードで見ることも一般的になり、セルフサービスBIでのデータ分析と誰かに作られれたダッシュボードを見る計数管理は日本の組織においても利用する場面が違う、適する業務が違う、という理解が2019年にくらいには更に進んできた状況です。
その一方で、ダッシュボードで見たデータを分析したい、しかし「分析するための製品の操作方法がわからない」「口では説明できるが統計的観点ではどうしたらよいかわからない」という社内のデータ利用者が存在しています。
自然言語でのデータ分析について
このようなことを生成AIですることを想定しています。
「2025年の売上トップ10顧客は?」「その10顧客のうち昨年から順位を上げた顧客と順位を下げた顧客を教えて欲しい」「順位を上げた顧客を担当している営業部は?」「その顧客の今年度担当者と前年度担当者は誰?」「前年と今年の担当者ではどちらがこの顧客の今年の販売に影響を与えているか?」というような深堀りを自分の言葉でできるようにするのが自然言語でのデータ分析であり、最後の質問は回答が自然言語でのコメントとなります。
今回はデモデータを使ったためこのような深堀ができるデータ構成になっていませんが、NetSuite内にある生きたデータを使うことで様々な分析が可能になると考えます。
データ構成
分析に用いたのはNetSuiteからCSV形式でエクスポートした売上トランザクションデータです。このデータには以下の情報が含まれていました:
- 取引日(Date): 売上計上日
- 顧客(Customer): 売上先顧客の名称
- 商品(Item): 売上商品の名称
- カテゴリ(Category): 商品に紐づくカテゴリ(商品分類)
- 売上高(Amount): 取引金額(円)
数年分のデータが含まれていたため、本記事では2024年と2025年の2年に着目して分析しています(2025年は当年のデータ)。
なお、ChatGPTへのデータ読み込みはとても簡単で、ChatGPTのUI上でCSVファイルをアップロードするだけです。アップロードすると、データフレームの基本情報(カラム名やレコード数)が自動表示され、すぐに中身を確認できました。Deep Researchではファイル解析機能が強化されており、日本語のカラム名や値も問題なく認識されました。
手順
実際の分析手順は以下のようになります:
- データのアップロード: ChatGPT(Deep Researchモード)にCSVファイルをドラッグ&ドロップして読み込ませます。
- データの確認: ChatGPTがファイル内容を解析し、データのプレビュー(例えば最初の数行や統計要約)を表示します。それでデータが正しく読み込まれたことを確認。
- 日本語で質問(プロンプト): 分析したい内容を自然な日本語でChatGPTに尋ねます。例:「2025年の売上トップ10顧客は?」「商品カテゴリ別の売上高を比較して」など。
- ChatGPTが分析&回答: ChatGPTは質問の意図を理解し、内部でPythonを用いたデータ集計や可視化を行った上で、日本語で回答を返してくれます。コードを書く必要はなく、ChatGPTが自動生成・実行します。
- 結果の確認: テキストによる説明や棒グラフ・表形式での結果が提示されます。不明点があれば追加で質問したり、別の視点での分析を依頼することで、対話的に深掘りできます。
分析事例
それでは具体的なQ&Aの例を見てみましょう。以下では、実際に投げかけたプロンプトと、その結果得られた洞察について解説します。
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プロンプト例1: 「2025年の売上トップ10顧客は?」
2025年に売上金額が多かった上位10社の顧客を尋ねる質問です。ChatGPTはデータから2025年の売上を顧客別に集計し、多い順にトップ10をリストアップ。
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プロンプト例2: 「商品カテゴリ別の売上高を比較して」
次に、扱っている商品をカテゴリ単位でまとめ、どのカテゴリの売上が大きいかを比較してみます。
おっと、金額に「,」が入っていないので指示にそのことを追加してデータを表示させます
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プロンプト例3: 「前年比でどの顧客が最も成長したか?」
前年(2024年)と比べて売上が最も増加した顧客を調べる質問です。ChatGPTは2024年と2025年の各顧客売上を比較し、増加額や成長率を計算して上位の顧客を特定できます。
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プロンプト例4: いじわるな実験「A社の成長に最も貢献した営業担当者と商品は何か?」
ChatGPTからの返答は以下です。賢いですね。。。。。
結果の可視化の有用性
プロンプト次第でChatGPT(Deep Research)は自動でグラフや表を生成してくれます。これにより、数値を文章で説明されるだけでなく視覚的な形で結果を把握できるため、業務ユーザーにとって直感的な理解が得られます。特に棒グラフはランキングや構成の比較に有効であり、今回の例でもトップ顧客や主要カテゴリの把握に役立ちました。表形式の出力も、正確な数値や前年比の変化幅を伝えるのに適しています。
また、日本語で「◯◯をグラフで見せて」といった指示をするだけで、ChatGPTが適切な可視化を選択してくれる点も便利です。たとえばカテゴリ別比較では棒グラフが選ばれ、時系列の傾向を見る場合は折れ線グラフが選択されるでしょう。ユーザーはグラフの種類や描き方を意識する必要がなく、知りたい内容をそのまま尋ねるだけで良いのです。これはまさにデータ分析の民主化と言えるでしょう。
まとめ その1
有用性の高い分析を実現するにはやはり詳細な情報が必要です。また、計数表示などについてはKPIを表示するダッシュボード上の数値とAI生成で異なるのは問題があるので、NetSuiteの場合はNetSuiteのテーブルそのままではなく、NetSuite Analytics Warehouseが見ているテーブルやスキーマであるOracle Autonomous Data Warehouse:ADWを利用することが適切と考えます。
実は今回の実験において、NetSuiteのダッシュボード上のデータとAI生成による売上ランキングが異なることが発生し、それへの対応に苦労をしました。企業における計数計算方法は社内KPIのルールと言えるのでサポートによって異なる数値が表示されるのは相当に危険なことです。(でもエクセルでまとめたデータとタブローのデータとSalesforceのデータで違うのよね、、、ということはよくある)
まとめ その2
本記事では、ChatGPTのDeep Research機能を活用し、NetSuiteの売上データを自然言語で分析する手順と事例を紹介しました。プログラミング不要で日本語の質問を入力するだけで、集計からグラフ作成まで一貫してAIが代行してくれる様子をご覧いただけたかと思います。
業務ユーザーにとって、自社データを自由に探索し疑問を即座に解消できることは大きなメリットです。ChatGPTのような生成AIを使えば、これまで分析専門チームに依頼しなければ難しかったレポート作成も、自分自身で対話的に進められるようになります。**「この顧客は昨年よりどれくらい伸びたのか?」「主要商品はどれか?」**といった問いに対し、AIが即座に答えとエビデンスを提示してくれることで、意思決定のスピードも上がるでしょう。
もしかしたら、既に御社のエクセル使いはChatGPT/Deep Reasearchを使っているかもしれません。