はじめに(その1)
ChatGPT Deep Researchが無制限に使える契約をしました。様々な資料作成やスクリプト生成の検証をしていますが、勉強をさせればかなり具体的な情報の生成をしてくれます。
今回は以下のプロンプトで記事作成をさせてみました。
ご注意事項
私の手元でのスクリプトの検証はしていませんのであくまでもDeep Researchがこのようなことまで生成できるという検証として捉えてください。項目「はじめに(2)」以降はChatGPT Deep Researchが生成した文章です。
生成されたN/llmのスクリプトの検証は今後の別記事になります。
#経理部門でN/llmを活用したい
#自動化できそうな業務を20個くらいリストして欲しい
#出力形式(リスト、活用事例、ステップバイステップのガイド)
はじめに(その2)
NetSuite SuiteScript N/llmモジュールで実現する経理業務効率化アイデア20選
NetSuite 2025リリースでは、SuiteScript 2.xにN/llmモジュールが導入されました。このモジュールにより、NetSuite内から直接大規模言語モデル(LLM)へのリクエスト送信と応答取得が可能となり、経理業務にもAIの力を活用できます。N/llmモジュールは生成AI APIとも呼ばれ、各種テキスト生成や分析をスクリプトで自動化できます。ただし現在、この機能は日本を含む一部地域のアカウントでのみ利用可能です。
本記事では、経理部門の業務にフォーカスし、LLMを活用して自動化・効率化が期待できる20のアイデアを紹介します。各セクションでは具体的なアイデアと、N/llmモジュールでの実装例(プロンプト設計やコード断片、処理フロー)を解説します。経理の日常業務にAIを組み込むヒントとしてご活用ください。
1. 月次財務報告の要約自動生成
業務内容: 月次で作成される損益計算書や貸借対照表などの財務レポートを経理担当者が読み解き、経営陣向けにポイントをまとめる業務。手作業で要約を書くのは時間がかかります。
自動化アイデア: LLMに財務指標やレポート内容を渡し、要約文章を生成させます。例えば、「売上高は先月比10%増加」「経費は予算内に収まり…」等の箇条書きを自動生成します。N/llmのgenerateText
メソッドでプロンプトに数字や指標を含めて要約を依頼できます。
活用例:
- プロンプト設計: 「あなたは経理アシスタントです。以下は当月の主要財務指標です: 売上高=〇〇円 (前月比+X%), 経常利益=〇〇円 (前月比-Y%) ...。この内容から経営陣向けに3点の要約を箇条書きで作成してください。」といった指示文を作成します。
-
LLM API呼び出し: SuiteScript上で
llm.generateText
を使用し、上記プロンプトをLLMに送信します。例えば以下のようなコードになります。
// @NApiVersion 2.1
define(['N/llm'], function(llm) {
function summarizeFinancials(reportSummary) {
const prompt =
"あなたは経理アシスタントです。以下は当月の主要財務指標です:\n" +
reportSummary + "\nこれを基に経営陣向けに3つのポイントで要約してください。";
const response = llm.generateText({
prompt: prompt,
modelFamily: llm.ModelFamily.COHERE_COMMAND_R, // デフォルトモデルを使用
modelParameters: { maxTokens: 500, temperature: 0.3 }
});
return response.text; // 生成された要約文
}
// 例: reportSummaryには事前に集計した指標テキストを渡す
let summary = summarizeFinancials("売上高=1億円 (前月比+10%), 経費=8000万円 (前月比-5%)...");
log.debug("財務要約", summary);
});
処理フロー: まず月次決算の数値をSaved Searchなどで取得し、reportSummary
文字列を組み立てます。次に上記のようにプロンプトを作成してLLMに送信します。LLMから返された要約結果(response.text
)を確認し、必要なら編集して経営陣へ報告します。これにより、財務報告の要点抽出作業を大幅に効率化できます。
2. 予算差異分析の自動説明
業務内容: 月次や四半期ごとに、実績値と予算の差異を分析し、その理由を説明するレポート作成があります。差異要因の文章化には専門知識と時間が必要です。
自動化アイデア: LLMに差異データを与え、「なぜこの差異が生じたか」を推測・説明させます。例えば売上が予算を上回った場合は「主要顧客との大型契約締結により...」など、差異の理由を自動生成できます。LLMは与えた数値と簡単なヒントから整合性のある説明文を提案できます。
活用例:
- プロンプト設計: 差異リストを与えて「以下の予算と実績の差異について、それぞれ理由を説明してください」と依頼します。例えば「売上: 予算1000万円 vs 実績1200万円 (+20%) -> 理由: ...」の形式で出力させます。
- LLM API呼び出し: SuiteScriptで差異データ(科目ごとの予算値・実績値・差額)をまとめ、プロンプト文字列を生成します。
const varianceData =
"売上: 予算1000万円 vs 実績1200万円 (+20%)\n" +
"経費: 予算800万円 vs 実績900万円 (+12.5%)\n";
const prompt = varianceData + "各差異について主要な原因を推測し説明してください。";
const response = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 300, temperature: 0.5 } });
const explanations = response.text;
処理フロー: 予算差異表をあらかじめ用意(ExcelやNetSuiteレポートから抽出)し、スクリプトでテキスト化します。次にLLMに説明文生成を依頼します。返答として得られる理由説明文をレポートに貼り付け、担当者が微調整します。LLMの知識に依存するため、組織の状況に合わせてプロンプトで適切なヒントを与えることがポイントです。
3. 請求書送付メールの自動下書き作成
業務内容: 顧客に請求書を発行する際、メール本文に丁寧な挨拶や支払期日の案内を書き添える作業があります。毎回似た内容を書くのは非効率です。
自動化アイデア: LLMで請求書送付メールの定型文を自動生成します。顧客名や請求金額、支払期日を差し込んだプロンプトを用意し、「丁寧なビジネスメール文」を作らせます。これにより担当者は生成結果を微調整するだけで済みます。
活用例:
- プロンプト設計: 「件名: 請求書送付のご案内\n本文: [顧客名] 御中、\nいつもお世話になっております。以下の通り請求書を発行いたしましたので、ご確認ください。\n- 請求金額: [XXX円]\n- 支払期日: [日付]\n今後ともよろしくお願いいたします。」のようなテンプレートに、動的に値を埋め込みます。
- LLM API呼び出し: SuiteScriptのユーザイベントやSuiteletで、請求書レコード保存時にメール下書きを生成します。
function draftInvoiceEmail(customerName, amount, dueDate) {
const prompt =
customerName + " 御中、\n" +
"いつもお世話になっております。以下の通り請求書を発行いたしましたのでご確認ください。\n" +
"請求金額: " + amount + " 円\n支払期日: " + dueDate + "\n" +
"何卒よろしくお願い申し上げます。";
// 丁寧な敬語の文章になるようtemperatureは低めに
const resp = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { temperature: 0.2, maxTokens: 200 } });
return resp.text;
}
処理フロー: 請求書発行時に、スクリプトで顧客名・金額・期日を取得しプロンプトに埋め込みます。LLMが生成したメール文面をユーザ宛に表示したり、コミュニケーションレコードに下書きとして保存します。担当者は内容を確認し、必要に応じて修正後、実際にメール送信します。これによりメール作成の手間を削減できます。
4. 入金催促レターの自動生成
業務内容: 期限を過ぎても支払いがない顧客に対し、督促状や催促メールを送る必要があります。文面を案件ごとに丁寧かつ厳格に作成するのは骨の折れる作業です。
自動化アイデア: LLMを使って入金催促の文章を自動作成します。顧客名、未払い額、遅延日数などをプロンプトに含め、催促文を生成します。口調はビジネスライクでありつつ圧迫感を与えすぎないよう、トーンを調整できます。
活用例:
- プロンプト設計: 「件名: お支払いのお願い\n[顧客名] 御中、\nご注文いただいた商品の代金[金額]円のお支払い期日が[〇日]過ぎております。早急なお支払いをお願い申し上げます。」といった雛形を用意し、不足情報(遅延理由など)があればLLMに補わせます。
-
LLM API呼び出し: 手動またはスケジュール実行のスクリプトからLLMにプロンプトを送り、返信文面を得ます。モデルの
temperature
を低めに設定し、安定した口調の出力を狙います。
const prompt =
"件名: お支払いのお願い\n" +
"ABC商事 御中、\n" +
"ご購入代金100万円の支払期日が過ぎております。" +
"誠に恐れ入りますが、至急のお支払いをお願い申し上げます。";
const response = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { temperature: 0.1, maxTokens: 150 } });
const dunningLetter = response.text;
処理フロー: NetSuiteの未収リストから対象顧客を抽出し、各顧客に対して上記プロンプトを生成します。LLMから返った催促文を担当者が確認し、必要なら追記(例えば入金方法案内)を行って送付します。統一感のある催促文を迅速に作成できるため、回収業務の効率が上がります。
5. 経費メモの自動分類提案
業務内容: 経費精算のメモ欄に記載された用途説明から、適切な勘定科目や費目に分類する作業があります。担当者の判断に委ねられる部分ですが、迷うケースも多々あります。
自動化アイデア: LLMに経費の用途説明を読み取らせ、該当しそうな経費カテゴリや勘定科目を提案させます。例えば「クライアントとの昼食」なら「交際費」を提案するといった具合です。LLMは膨大なテキスト知識からキーワードを理解し、適切なカテゴリを推測できます。
活用例:
- プロンプト設計: 「説明: 〇〇。この経費に適切な費目を1つ挙げてください。」という形式で、説明文を与えて答えさせます。選択肢ではなく自由回答させ、LLMに最も関連性が高い費目名を出力させます。
- LLM API呼び出し: SuiteScriptのClient Scriptで経費明細の説明欄にフォーカスアウトした際などに呼び出し、即座に提案を表示することも可能です。
function suggestAccount(expenseDescription) {
const prompt = "説明: " + expenseDescription + "\nこの経費に該当する勘定科目を1つ提案してください。";
const resp = llm.generateText({
prompt: prompt,
modelParameters: { maxTokens: 50, temperature: 0.0 } // 決まった分類を得たいのでtemperature低め
});
return resp.text.trim();
}
// 例: "社内会議の軽食代" -> "会議費" 等の回答を期待
処理フロー: 経費申請の画面上で、ユーザーが説明を入力した後にLLM呼び出しを行います(Client Scriptまたはユーザイベントを活用)。LLMの提案結果をポップアップ表示したり、自動で科目フィールドに入力します。最終的な選択はユーザーに委ねますが、AIの候補があることで科目選択の時間短縮とミス低減が期待できます。
6. ベンダー支払状況問い合わせの自動応答
業務内容: 取引先(ベンダー)から「支払い状況を教えてほしい」という問い合わせメールが来ることがあります。その都度、請求書の支払ステータスを確認し返信文を書くのは手間です。
自動化アイデア: LLMを使って支払状況回答メールの下書きを自動生成します。NetSuiteから該当ベンダーの請求書情報(支払済みか未払いか、支払予定日など)を取得し、それをプロンプトに含めて状況説明文を書かせます。丁寧な感謝と事務的な情報提供を組み合わせた応答を生成できます。
活用例:
- プロンプト設計: 「[ベンダー名] 御中、\nお問い合わせいただいた件につき、[請求書番号]は[支払日]に[支払済み/支払予定]です…」のように事実ベースの文を用意し、LLMに丁寧な文章に整えてもらいます。
- LLM API呼び出し: スクリプトでベンダーからの問い合わせレコードをトリガーに動作し、関連する支払データを検索。情報を埋め込んだプロンプトをLLMに投げます。モデル温度は低めに設定し失礼のない定型表現を引き出します。
const vendorName = "XYZ株式会社";
const invoiceNo = "INV-1001";
const paymentStatus = "未払い (支払期限: 2025/05/30)";
const prompt = vendorName + " 御中、\n" +
"お問い合わせいただきありがとうございます。" +
invoiceNo + " の支払状況は現在 " + paymentStatus + " です。\n" +
"ご確認のほどよろしくお願いいたします。";
const replyDraft = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { temperature: 0.2, maxTokens: 100 } }).text;
処理フロー: まずNetSuite上で、問い合わせメールやフォーム送信を受け付けたらスクリプトを起動します。該当ベンダーの請求書ステータスを検索してプロンプト文面を構築し、LLMに回答草案を生成させます。その草案を担当者が確認してベンダーに返信します。これにより問い合わせ対応のリードタイムを短縮し、迅速なコミュニケーションが図れます。
7. 社内経理FAQチャットボット
業務内容: 経理部門には他部署からの質問(例:「〇〇の手続きはどうすれば?」など)が日々寄せられます。これに個別対応するのは担当者の負担となります。
自動化アイデア: NetSuite上に経理FAQチャットボットを実装し、社内からの定型的な質問にはAIが即座に回答するようにします。N/llmモジュールとRetrieval Augmented Generation(RAG)を活用し、社内ポリシー文書や経理マニュアルをLLMに参照させながら回答させます。例えば旅費精算のルールや月次締め切り日など、過去の資料に基づいた回答が期待できます。
活用例:
- プロンプト設計: ユーザーからの質問を受け取り、その内容と関連する社内文書をコンテキストとしてLLMに渡します。「質問: [ユーザー質問]\n以下は社内ポリシー文書です:\n---\n[ポリシー抜粋]\n---\nこの質問に回答してください」という形式です。
-
LLM API呼び出し: SuiteletなどでチャットUIを提供し、質問を入力するとスクリプトで対応する文書を検索(例えばキーワードでマニュアルPDFから抜粋)し、
llm.createDocument
でドキュメントオブジェクトを作成してLLMに渡します。
// 質問に関連するドキュメントを準備
const doc = llm.createDocument({ id: "policy", data: "経費精算のポリシー: ... (抜粋テキスト)" });
const userQuestion = "出張時のタクシー代はどの費目になりますか?";
const prompt = "質問: " + userQuestion + "\n社内ポリシー:\n" + doc.data + "\n回答:";
const response = llm.generateText({
prompt: prompt,
documents: [doc],
modelParameters: { maxTokens: 200, temperature: 0.3 }
});
const answer = response.text; // 回答文
処理フロー: ユーザーの質問を受け取ったら、まず関連しそうな社内ナレッジを検索します(ポリシーデータベースや過去QA集)。該当内容をllm.createDocument
でLLMに提供しつつプロンプトを構成します。LLMの回答テキスト(response.text
)をユーザーにチャットボットの返信として表示します。回答には参考にした文書の出典(Citation)が含まれることもあり、根拠を示す形で安心感のある回答が可能です。これにより経理部門の問い合わせ対応を自動化し、担当者の負担軽減につながります。
8. 商品・取引説明文の自動修正 (テキストクリーンアップ)
業務内容: 商品マスタや取引の備考欄に入力されたテキストが、表記ゆれや誤字、過度にカジュアルな文体などで統一感に欠けることがあります。経理ではこれら説明文を整えるケースもあります。
自動化アイデア: LLMの文章校正能力を利用し、説明文を保存時に自動で清書します。NetSuiteのUser Event Script(afterSubmit)でLLMを呼び出し、対象フィールドのテキストを「丁寧な敬体かつ簡潔な表現」に変換します。Oracleのデモでも「テキストをプロフェッショナルな口調に書き直す」といった例が紹介されています。
活用例:
- プロンプト設計: 「次の説明文を丁寧な日本語に修正してください:\n[元の説明文]」とプロンプトを作ります。余計な変更を避けるため、出力は原文と同じ情報量にするよう温度を低めに設定します。
-
LLM API呼び出し: User Event Script内で
llm.generateText.promise
(非同期)を使い、レコード保存後に処理させることでユーザー操作をブロックしません。生成結果を再度レコードに書き戻します。
// インベントリアイテムの保存後 (afterSubmit) に説明文フィールドを校正
function afterSubmit(context) {
const newRec = context.newRecord;
let desc = newRec.getValue({ fieldId: "salesdescription" });
if (desc) {
llm.generateText.promise({
prompt: "次の説明文を敬体の丁寧な表現に修正してください:\n" + desc,
modelParameters: { maxTokens: 100, temperature: 0.1 }
}).then(function(response) {
const corrected = response.text;
// レコードを更新して説明文を書き換え
record.submitFields({
type: record.Type.ITEM,
id: newRec.id,
values: { salesdescription: corrected }
});
});
}
}
処理フロー: レコード保存時にスクリプトが走り、対象フィールド(例えば販売説明文や購入説明文)を取得します。LLMにプロンプトを送り、非同期で結果を受け取ったら自動的にフィールドを更新します。ユーザーは常に整ったテキストを扱えるようになり、マスタ情報の品質向上や社内外への説明文の信頼性アップにつながります。
9. 仕訳伝票の説明文自動生成
業務内容: 振替伝票や仕訳入力時に、摘要欄へ取引の概要を記載します。これは将来見返す際の手掛かりになりますが、手入力では漏れや表現ゆれが生じがちです。
自動化アイデア: 仕訳の内容(勘定科目や金額、取引先名など)からLLMに**摘要文(ナレーション)**を生成させます。例えば「○○社への売掛金回収の入金」仕訳なら「○○社からの売掛金回収」と自動記述させるイメージです。LLMにとって定型的な言い回しの生成は得意分野です。
活用例:
- プロンプト設計: 仕訳行の情報をまとめ「貸方[勘定科目]〇〇円、借方[勘定科目]〇〇円の仕訳。これはどのような取引か一文で説明してください。」と尋ねます。
- LLM API呼び出し: ユーザが伝票保存をクリックした際のUser Eventで発火し、伝票オブジェクトから主要情報を抜き出してプロンプト投入、LLM結果を摘要フィールドにセットします。
const accountDr = newRec.getSublistText({ sublistId: "line", fieldId: "account", line: 0 }); // 借方科目名
const amountDr = newRec.getSublistValue({ sublistId: "line", fieldId: "debit", line: 0 });
const accountCr = newRec.getSublistText({ sublistId: "line", fieldId: "account", line: 1 }); // 貸方科目名
const amountCr = newRec.getSublistValue({ sublistId: "line", fieldId: "credit", line: 1 });
const prompt = accountDr + amountDr + "円 と " + accountCr + amountCr + "円 の仕訳。これは何の取引か一文で説明してください。";
const narration = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 50, temperature: 0.3 } }).text.trim();
// narrationを摘要フィールドに設定
newRec.setValue({ fieldId: "memo", value: narration });
処理フロー: 伝票保存時に上記処理を行い、自動で摘要を生成します。LLMは提示された科目名や金額から一般的な取引内容を想起します。必要に応じて取引先(Entity)名や日付もプロンプトに含めると、より具体的な説明になるでしょう。担当者は生成された摘要を確認するだけで済み、毎回手で書く手間を省けます。
10. 取引メモ・コメントの要約
業務内容: 売上注文やプロジェクト、経費精算などに付随する「メモ」欄には、経緯や詳細が長文で残されることがあります。それを後から読む際に長大なテキストを把握するのは大変です。
自動化アイデア: メモフィールドの要約をLLMに作らせ、重要点だけ抜き出します。例えば10行に及ぶコメントを2行程度に短縮できます。保存時に自動生成した要約を別フィールド(例えば「概要」フィールド)に格納しておけば、一覧表示で概要を一目で把握可能です。
活用例:
- プロンプト設計: 「次のコメントの要点を3文以内でまとめてください:\n[元のコメント全文]」と依頼します。マニュアル的な説明や冗長な部分は省かれ、事実関係のみ抽出されることを期待します。
-
LLM API呼び出し: User Event Scriptで記録保存時に要約を生成し、カスタムフィールド
_summary
に保存する実装などが考えられます。あるいは閲覧時(Client Script表示時)にオンデマンドで要約生成し表示することも可能です。
const originalNote = newRec.getValue({ fieldId: "custbody_longmemo" }); // 長文メモ
if (originalNote && originalNote.length > 100) {
const prompt = "次のコメントを要約してください:\n" + originalNote;
const summary = llm.generateText({
prompt: prompt,
modelParameters: { maxTokens: 100, temperature: 0.3 }
}).text.trim();
newRec.setValue({ fieldId: "custbody_summary", value: summary });
}
処理フロー: 長文メモを検知したらLLMに投げ、要約結果を保存します。後で一覧画面やレポートでcustbody_summary
(概要)が表示されるよう設定すれば、担当者は詳細を開かずとも内容を把握できます。長いコメント履歴を読む時間を節約でき、チーム間の情報共有もスムーズになります。
11. 異常取引の検知と説明
業務内容: 不正の兆候や異常な取引(金額が極端に大きい、通常使わない勘定科目の組み合わせ等)を検知し、内部監査用に説明を付記する業務があります。
自動化アイデア: LL Mに取引データを分析させ、異常度合いの判断や簡単な説明を生成させます。例えば「この取引は通常月平均の5倍の金額です」など指摘させることができます。LLM自体は数値判断が専門ではないですが、基準値をプロンプトに含め論述させることは可能です。また、不正検知AIの結果をLLMでわかりやすい文章に言い換える、といった使い方も考えられます。
活用例:
- プロンプト設計: 「取引額: 500万円(平均100万円の5倍)。この取引の異常ポイントを指摘してください。」のように具体値と基準を与えコメントを求めます。
- LLM API呼び出し: バッチ処理(Map/Reduce)で全取引をスキャンし、条件にマッチしたものについてLLMに説明文を生成させます。結果を管理者向けアラートメールに含めることもできます。
if (transaction.amount > transaction.avgAmount * 3) { // 基準の3倍超なら異常
const prompt = "取引額: " + transaction.amount +
"円(平均" + transaction.avgAmount + "円の" +
(transaction.amount/transaction.avgAmount).toFixed(1) + "倍)。" +
"この取引が通常と比べて異常な点を指摘してください。";
const analysis = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 100, temperature: 0.2 } }).text;
// analysis例: "金額が平常時の5倍となっており、異例に高額です。..."
sendAlertEmail(transaction.id, analysis);
}
処理フロー: あらかじめ設定した異常検知ルール(閾値やパターン)に取引が該当したら、LLMに説明文の生成を依頼します。LLMは定性的な表現で状況を説明します。生成結果は監査ログに記録したり、管理者への通知メールに添付します。不正の可能性をいち早く発見し、人間が精査する際の取っ掛かりとなるコメントを自動生成できる点で有用です。
12. 監査対応の質問回答ドラフト
業務内容: 監査人からの質問(「この費用の内訳を教えてください」「在庫評価方法を説明してください」等)に対して、経理部門が回答書を作成します。正式回答前のドラフト作成に時間を要します。
自動化アイデア: 監査人からの質問に対する回答文書をLLMで下書き生成します。質問内容と必要な参考情報(会計方針や数値データ)を入力すれば、フォーマルな回答案が得られます。例えば在庫評価なら「当社は先入先出法を採用しており…」といった説明文を自動生成できます。
活用例:
- プロンプト設計: 「質問: [監査人の質問]\n参考情報: [関連する会計ポリシーやデータ]\nこの質問への回答を敬体で作成してください。」という形で依頼します。LLMには専門用語も含めた正確な表現で説明するよう指示するとよいでしょう。
-
LLM API呼び出し: 監査Q&A管理のカスタムレコードを作り、質問が入力されたらボタン一つでLLM回答案を生成・保存する仕組みを作ります。SuiteScriptから
llm.generateText
で応答を取得し、レコードの回答欄にセットします。
const question = currentRecord.getValue({ fieldId: "custrecord_audit_question" });
const contextInfo = currentRecord.getValue({ fieldId: "custrecord_audit_context" }); // 関連ポリシー等
const prompt = "質問: " + question + "\n" +
(contextInfo ? "参考情報: " + contextInfo + "\n" : "") +
"上記の質問への回答を敬体の文章で述べてください。";
const draftAnswer = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 300, temperature: 0.2 } }).text;
currentRecord.setValue({ fieldId: "custrecord_audit_answer_draft", value: draftAnswer });
処理フロー: 監査質問と関連情報(必要に応じて社内規程や数値データの抜粋)を担当者が入力します。LLMが即座に回答ドラフトを返すので、担当者はそれをベースに事実チェック・修正を行い、正式回答とします。これによりゼロから文章を起こす負担が減り、監査対応のスピードアップが期待できます。
13. 財務文書の多言語翻訳支援
業務内容: グローバル企業では、財務報告や方針資料を英語と日本語で用意する必要があります。専門翻訳者がいない場合、経理担当者が翻訳するのは大変です。
自動化アイデア: LLMを用いて財務文書の翻訳を行います。Oracle OCIのLLMは高性能な翻訳も可能であり、例えば日本語の決算サマリーを英語に翻訳したりその逆を自動化できます。N/llmモジュールで社内向けの機密文書も安全に処理でき、外部サービスに出す必要がありません。
活用例:
- プロンプト設計: 「以下の文章を英訳してください:\n[日本語テキスト]」や「以下の文章を日本語に翻訳してください:\n[英語テキスト]」と指示します。LLMは文脈を考慮した自然な訳文を生成します。
-
LLM API呼び出し: SuiteScriptで長めのテキストを扱う際は
llm.generateTextStreamed
などストリーミングで結果を受け取ることも検討します(長文翻訳でもタイムアウトしにくくするため)。
function translateToEnglish(japaneseText) {
const prompt = "次の財務報告を英語に翻訳してください:\n" + japaneseText;
const resp = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 1000, temperature: 0.0 } });
return resp.text;
}
let japSummary = "当四半期の売上高は前年同期比8%増加しました。...";
let engSummary = translateToEnglish(japSummary);
// engSummaryに英訳結果が格納される
処理フロー: ワークフローアクションScript等でボタン押下時に翻訳を実行する仕組みを作ります。選択したテキストフィールド内容を取得し、LLMに翻訳を要求します。結果を別言語用のフィールドに書き込みユーザーに表示します。これにより二重言語の資料作成が容易になり、グローバル展開企業の経理資料準備を効率化できます。
14. 勘定科目の用途説明生成
業務内容: 新任スタッフや他部署向けに、「勘定科目〇〇にはどんな取引を計上するのか」といった質問に答える機会があります。勘定科目ごとの用途説明資料を作るのは手間です。
自動化アイデア: LLMに勘定科目の説明文を作成させます。科目名から一般的な用途や例を文章化させることで、ひな形を自動生成できます。例えば「旅費交通費」であれば「社員の出張や営業訪問の際の交通費及び宿泊費を計上する科目です…」といった説明が得られます。
活用例:
- プロンプト設計: 「勘定科目: [科目名]\nこの科目の一般的な用途を説明してください。」とシンプルに尋ねます。LLMは会計知識に基づき代表的な用途を回答するでしょう。
- LLM API呼び出し: 科目一覧をバッチ処理し、各科目の説明を生成してカスタムレコードやドキュメントにまとめることができます。また、単一科目を入力すると説明を返す検索ボットのようなUIを作ってもよいでしょう。
const accountName = "旅費交通費";
const prompt = "勘定科目: " + accountName + "。この科目にはどのような取引を計上しますか?";
const explanation = llm.generateText({
prompt: prompt,
modelParameters: { maxTokens: 100, temperature: 0.3 }
}).text;
// 例: "旅費交通費は、従業員が出張や営業活動で発生した交通費・宿泊費などを計上するための科目です。"
処理フロー: マスタの勘定科目表から科目名を取得し順次LLMに問い合わせます。生成された説明文は人間が確認し、必要に応じて社内規程に合わせて手直しします。その後、社内向け資料として配布したり、NetSuite上の科目定義に注釈として記載します。これにより基礎資料作成の時間を削減できます。
15. 会計ポリシー文書の要約とQ&A生成
業務内容: 会計方針や社内経理ルールの文書(例えば経費ガイドライン等)は長文化しがちで、従業員が全部読むのは大変です。ポイントをまとめたりQ&A形式の抜粋を作るニーズがあります。
自動化アイデア: LLMに長文ポリシーの要約やQ&A抽出をさせます。例えば経費規程のPDF全文を入力し、重要事項を箇条書きで出力させたり、「~は可能ですか?」という質問と回答の形式で抜き出させることができます。N/llmのドキュメント機能を使い、長文を複数チャンクに分けて参照させる方法もあります。
活用例:
- プロンプト設計: 「以下は当社の経費精算ポリシーです。主要なポイントを5つ箇条書きで挙げてください:」とし、長文データを続けます。または「上記ポリシーからよくある質問と回答のペアを3組作成してください」といった応用的な依頼も可能です。
-
LLM API呼び出し: 長文処理では
llm.generateTextStreamed
で逐次結果を得たり、llm.createDocument
で参照用ドキュメントを渡すことでLLMの負荷を軽減できます。結果を内部Wikiやドキュメントに反映します。
const policyText = file.load({ id: 'SuiteScripts/expense_policy.txt' }).getContents();
const prompt = "以下は当社経費精算ポリシーです。重要な点を3つ抜き出して箇条書きで要約してください:\n" + policyText;
const summary = llm.generateText({
prompt: prompt,
modelParameters: { maxTokens: 300, temperature: 0.3, topP: 0.8 }
}).text;
処理フロー: ポリシー文書をテキスト抽出しスクリプトに取り込みます。LLMに要約を求め、返答を取得します。場合によっては一度に長すぎるとモデルの入力上限を超えるため、章ごとに分割して要約し、さらにそれらをまとめる二段構成にすることも考えられます。出来上がった要約やQ&A集は社内ポータルやNetSuiteのナレッジベースに掲載し、社員への周知徹底を図ります。
16. 顧客向け連絡文書の下書き自動化
業務内容: 経理部門から顧客へ送る文書には、支払条件変更のお知らせや年次残高確認依頼など、フォーマルな文章作成が必要なケースがあります。一から文章を書くのは負担です。
自動化アイデア: LLMに対顧客文書(通知文や依頼文)のドラフトを作成させます。例えば「御社ご指定の支払条件を来月より30日サイトから45日サイトに変更させていただきたく…」といったお知らせ文章を自動生成し、担当者が確認します。
活用例:
- プロンプト設計: 「件名: [件名]\n[顧客名] 御中、\n平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。\nこの度、[伝えたい内容]。何卒ご了承のほどお願い申し上げます。」といった定型表現を含むプロンプトを用意し、変数部分に内容を埋め込みます。
- LLM API呼び出し: 内部で用意したテンプレート文章をベースに、LLMにより文調を整えたり不足部分を補完させます。結果は担当者に表示し、編集の上正式送信します。
const customerName = "ABC株式会社";
const noticeContent = "支払条件を現行の月末締め翌月末払いから翌々月末払いに変更させていただきたく存じます";
const prompt = customerName + " 御中、\n" +
"平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。\n" +
"この度、" + noticeContent + "。\n" +
"誠に勝手ではございますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。";
const draftLetter = llm.generateText({
prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 200, temperature: 0.1 }
}).text;
処理フロー: 担当者はあらかじめ用意されたテンプレートを選び、変更加筆したい箇所(上記例では支払条件変更の内容)を入力します。スクリプトがそれらを組み合わせてプロンプトを構成しLLMに送信、下書きを取得します。最後に担当者がビジネスマナーや事実関係をチェックしてから顧客へ送付します。文章構成の自動化により、対外文書作成の時間と心理的負荷を軽減できます。
17. 銀行明細の自動照合支援
業務内容: 月次の銀行口座明細を会計システムの記録と照合(バンクリコン)する際、明細の記載内容と帳簿の記載が微妙に異なり、突き合わせに時間がかかることがあります。
自動化アイデア: LLMのテキスト類似判断能力を活用し、銀行明細の記述とNetSuite上の取引記録とを突合します。例えば明細に「カ)オラクルシャ」などと略されているのを「オラクル社からの入金」と解釈して該当売掛金消込を探す、といったことを支援します。LLMに「この記述は何の支払いに対応しそうか?」と尋ね、候補となる取引を提案させます。
活用例:
- プロンプト設計: 「銀行明細: 'カ)ABCコウギョウ 100,000'\nこの入金はどのような取引と考えられますか?」と質問します。LLMは文脈から「株式会社ABC工業からの売掛金回収ではないか」等と推測します。
- LLM API呼び出し: バンクリコンの自動化スクリプト内で、未突合明細ごとにLLMに問い合わせを行います。結果を参考情報として表示し、担当者が最終判断するフローとします。
const bankMemo = "カ)ABCコウギョウ 100,000";
const prompt = "銀行明細のメモ欄: '" + bankMemo + "' はどの取引に該当しますか?推測してください。";
const guess = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 50, temperature: 0.5 } }).text;
// guess例: "株式会社ABC工業からの売掛金入金の可能性があります。"
処理フロー: 銀行明細CSVなどをインポート後、スクリプトで各行のメモと金額を取得します。まず金額と一致する売掛金や請求書を検索し、候補が一意に絞れない場合にLLMに文章マッチの助言を求めます。LLMから返る推測をヒントに、担当者は正しい突合を行います。これにより、人名や会社名の略称解読、目的不明な入出金のあたりを付ける作業がスピーディーになります。
18. データ項目の自動チェックと修正提案
業務内容: 経理データには特定のフォーマットやルールが求められる項目があります(例:請求書番号の命名規則、摘要欄に日付含む等)。これを目視でチェックするのは大変です。
自動化アイデア: LLMにビジネスルール違反検知と言い換えの提案をさせます。例えば摘要欄に日付が無ければ「日付を含めるとよい」と提案したり、請求書番号がフォーマットから外れていれば「次はINV-XXXX形式にしてください」と自動コメントします。LLMは柔軟なテキストマッチができるため、人間のような指摘が可能です。
活用例:
- プロンプト設計: 「摘要: '3月度売上 前月繰越分' -> この摘要に改善点があれば指摘してください。(例: 日付形式や情報不足など)」のように入力し、LLMの指摘を得ます。
- LLM API呼び出し: レコード保存前(beforeSubmit)にチェックを行い、問題があればエラーではなく警告メッセージとしてLLMの提案を表示する実装が考えられます(ユーザビリティに配慮)。
const memo = newRec.getValue({ fieldId: "memo" });
const prompt = "摘要: '" + memo + "'\n上記の摘要欄についてフォーマットや内容の改善点があれば1つ指摘してください。";
const suggestion = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 50, temperature: 0.2 } }).text.trim();
if (suggestion && suggestion !== "指摘なし") {
// ユーザーに警告ポップアップを表示(実装例。実際はUIメッセージAPI等を使用)
dialog.alert({ title: "メモ欄チェック", message: suggestion });
}
処理フロー: 保存直前または直後に、各フィールドについてプロンプトを生成しLLMに問い合わせます。LLMから「〇〇を追加すると分かりやすいです」「問題ありません」といった返事が得られます。問題が指摘された場合はユーザーに通知し、修正のきっかけを提供します。これによりデータ入力品質を高め、後工程での手直しや問い合わせを減らす効果が期待できます。
19. 管理会計レポートのコメント自動生成
業務内容: 月次の管理会計レポート(部門別損益やKPIレポート)に、経営層向けの解説コメントを付ける業務があります。数字の裏にあるストーリーを文章化する作業です。
自動化アイデア: LLMに管理レポートの解説を書かせます。例えば「営業部の利益率が下がった理由」や「プロジェクトXが黒字化した要因」といった分析コメントを自動生成します。LLMには報告書のデータと過去傾向を与え、「この変化について説明せよ」と質問します。
活用例:
- プロンプト設計: 「部門A: 売上10%増、利益5%減。部門B: 売上5%減、利益率+2pt。これらの変動要因を分析し、それぞれ1文でコメントしてください。」といった形式で依頼します。
- LLM API呼び出し: レポート作成を支援するスクリプト(例えばスケジュールスクリプト)が、必要な指標をまとめてプロンプトを構築し、LLMからの回答をコメント欄に埋め込みます。モデル温度は分析がブレないよう低めに設定します。
const reportMetrics = "営業部: 売上1,200万円(+10%)、利益100万円(-5%)\n" +
"開発部: 売上800万円(-5%)、利益200万円(+2pt)";
const prompt = reportMetrics + "\n上記の変動について、それぞれ主な要因を推測して1文で説明してください。";
const analysisComments = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 150, temperature: 0.2 } }).text;
処理フロー: 管理会計システムやNetSuiteのレポートから当期・前期指標を取得し、変化率などを計算します。プロンプトに各部門の変化を記載しLLMで分析させます。得られたコメントはレポート文書にそのまま利用したり、経営会議資料の注釈として追加します。これにより分析担当者の負担を軽減し、コメントの抜け漏れ防止にもつながります。
20. 社内通知文の自動作成
業務内容: 経理方針の変更やシステムメンテナンスの連絡など、経理部門から社内全体へ向けたお知らせ文を作成する機会があります。フォーマルかつ分かりやすい文章を書く必要があります。
自動化アイデア: LLMで社内向け通知メール/掲示文の下書きを生成します。例えば「経費申請システムのメンテナンス予定」や「旅費精算ルールの変更」といったテーマを与え、所定の案内フォーマットに沿った文章を出力させます。
活用例:
- プロンプト設計: 「件名: [タイトル]\n本文: [部署名]各位、\n平素よりお世話になっております。\nこの度、[通知内容]。\nご理解とご協力をお願いいたします。」というテンプレに具体的な内容を埋め込んでLLMに完成させます。
- LLM API呼び出し: ボタン操作で通知文を生成するSuiteletを用意し、担当者がタイトルと要点を入力したらLLM結果を表示・編集できるようにします。または定期発信文ならスケジュールで自動生成し、下書きを担当者にメールする方法もあります。
const title = "システムメンテナンスのお知らせ";
const content = "経費精算システムのアップグレード作業に伴い、来週末にシステム停止時間がございます";
const prompt = "件名: " + title + "\n" +
"経理部門 各位、\n平素よりお世話になっております。\n" +
content + "。\nご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。";
const draftNotice = llm.generateText({ prompt: prompt, modelParameters: { maxTokens: 150, temperature: 0.1 } }).text;
処理フロー: 担当者は通知の題材(何について知らせるか)とポイント(いつ何が起こる等)を入力します。スクリプトがテンプレートに流し込みLLMから下書きを取得します。下書きは必要に応じ編集して社内ポータルやメールで告知します。テンプレート作成とLLMの文章力を組み合わせることで、速やかに周知文を用意できます。
おわりに
以上、NetSuiteのSuiteScript 2.x N/llmモジュールを活用した経理業務自動化アイデア20選を紹介しました。N/llmモジュールは、プロンプト(指示文)を通じてLLMの生成AI能力をNetSuite内に取り込む強力なツールです。経理部門の多くの業務は文章の要約・作成やテキストデータの解釈に関わるため、LLMとの親和性が高いことがお分かりいただけたと思います。
実装にあたっては、LLMは自社のデータを自動で知っているわけではない点に留意してください。必要な情報はスクリプトで取得しプロンプトに盛り込む必要があります(LLMは与えられたテキストのみをもとに応答します)。また、生成結果の正確性や表現は必ず人間が確認し、責任を持って修正することが重要です。
Oracle NetSuiteの生成AI機能は今後さらに進化し、Promptテンプレート機能(Prompt Studio対応のevaluatePrompt
メソッドなど)も拡充される予定です。ぜひこの機会にLLM活用の第一歩を踏み出し、経理業務の効率化と付加価値向上に役立ててみてください。
参考文献・情報源:
- NetSuite Help Center: N/llm Module
- Oracle公式ブログ: Now You Can Talk to NetSuite: Unlock Your Data with N/LLM and RAG
- Oracle NetSuite SuiteWorld 2025 デモ (Generative AI紹介)
- ERP Peers: NetSuite SuiteScript Meets Generative AI for Advanced Automation