はじめに
本記事では、GCPのVertex AIについて、AWSのSageMakerと比較しながらその特徴を解説します。
- Vertex AI = GCPの統合型MLサービス(2021年登場)
- SageMaker = AWSの代表的なMLサービス(2017年登場)
いずれも「開発・学習・デプロイ」までのMLワークフローをサポートするプラットフォームです。
1. 全体設計思想の違い
観点 | SageMaker | Vertex AI |
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起点 | Jupyter Studioが中核 | BigQueryやAutoMLが中核 |
製品群構成 | 機能ごとに細かく分かれている(例:Processing / Training / Inference Jobs) | Vertex AIという単一ブランドで統合管理 |
ノートブック | Studio + JupyterLab | Workbench(AI Notebooks) |
バックエンド | EC2(CPU/GPU)、EKSなど柔軟 | GCE + GKEベース |
SageMakerはインフラレイヤーが見えるが、Vertex AIは抽象化が強め。
GCPネイティブな思想に近いです。
2. AutoML・パイプライン機能の比較
観点 | SageMaker | Vertex AI |
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AutoML | Autopilot(構成がやや複雑) | AutoML Tables / Forecast / Visionなどが豊富 |
パイプライン | SageMaker Pipelines(Step Functions相当) | Vertex Pipelines(KFPベース) |
パイプライン記述 | Python SDK中心(細かい設定が必要) | Kubeflow Pipelines + YAML or Python |
Vertex AIの方がAutoMLやPipeline周りは親切設計。
SageMakerは自由度が高い代わりに学習コストも上がります。
3. モデルデプロイの柔軟性
観点 | SageMaker | Vertex AI |
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デプロイ方式 | 推論エンドポイントの作成(リアルタイム / バッチ) | Endpoint or Batch Prediction |
Dockerカスタム | ECRに登録したコンテナを使える | Docker使用可(Cloud Buildなどでのビルドも容易) |
スケーリング | 手動設定 or オートスケーリング | Cloud Run / GKEなどとの連携が容易 |
4. 課金体系とコスト感
観点 | SageMaker | Vertex AI |
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ノートブック課金 | インスタンス時間単位(停止でも課金) | Idle時は課金停止可能 |
推論エンドポイント | リアルタイムは継続課金 | Cloud Runを併用すればコスト圧縮可 |
AutoML課金 | 学習時間課金(分単位) | AutoMLも同様だが料金体系が明快 |
5. 組織としての戦略
- SageMaker: AWSの「何でもできるが使いこなせる人が必要」な哲学
- Vertex AI: GCPの「抽象化・再利用性・統合志向」が色濃い