2024年3月30日実施 石川県輪島市西部の大隆起および過去の隆起活動の痕跡の地形調査
秘密結社オープンフォース 河野悦昌、河野七月、秋山俊也
令和6年能登半島地震による隆起
2024年1月1日に発生した能登半島地震においては震源地に近い珠洲市の隆起がよく知られているが、震源地の反対側の輪島市五十州周辺がより顕著な隆起を示している。
過去にこの地点の観測がなされて公表されているが、地震後の現地の情報がほとんど明るみになっておら
ず間接的な情報しか無いので現地での調査を行った。
衛生観測データによる垂直方向の隆起1
観測地点
石川県輪島市皆月湾、および吉浦地区で行った。
隆起の計測
隆起1 皆月湾の簡易測量
隆起2 石川県輪島市門前町吉浦ぬ の海底隆起の簡易計測
岩の黒と白の境目が、地震前に界面だった場所である。
段丘の確認
今回の地震による隆起以外に、過去数千年間に発生したと考えられる隆起が段丘として残っている。その段丘の調査を行った。
段丘1 海成段丘の確認 石川県輪島市門前町吉浦北側
先行研究2によって数千年前に形成された段丘がL1面〜L3面として報告されている。その地形の確認を行った。
段丘2 段丘の観察 石川県輪島市門前町吉浦ぬ
より南西側の断崖となった海岸において、段丘とみなせる地形が確認できた。
新しい順に今回の地震で生成されたα段、それより上に行くに従いβ段、γ段、δ段と名付けた。
先行研究によるL1面〜L3面と照合を行う。
段丘の簡易計測
石川県輪島市門前町吉浦ぬ において、段丘2および隆起2の簡易計測を行った。
段丘2の計算結果
考察
段丘1は先行研究により観察できる段丘はL1,L2とみなされ、L1は6000年前もしくは3500年前に形成、
L2は4900年前もしくは2800年前、L3は3500年前または2000年前(数字は概数)とされる。
今回簡易測量を行った段丘2は離水生物遺骸は観察できなかったが、段丘1と同様の隆起活動による段丘
とすると今回の震災による隆起と良く対応し、この地が周期的に大隆起を起こしていることを示唆する
ものである。
復興に向けて
今回の皆月湾や吉浦地区にある小漁港は完全に陸地になってしまい、生活の糧としての漁業が失われてしまっている。4mやそれに比類する大隆起が発生した後に、港を浚渫して復旧することが可能かどうかということについて、今回の研究を参考にすることができる。
このような大隆起でダメージを受けた漁港の復旧は、関東大震災時の千葉県南房総での事例がある。そこでは約2年で港の掘り下げなどを行ったのであるが、それと同様のことが行えるかどうか。
今回のレポートでは触れなかったが、隆起2においてはかなり固い泥岩で構成されている。このような岩質を沖合まで浚渫するにはかなり高いコストが必要であると想像する。隆起した一帯すべてが浚渫が困難な地域ということであれば、漁業の復興はある程度港機能を集約した箇所を設定し、そこを復旧、漁業従事者はそこに通勤するというやりかたをせざるを得ないということになる。
cf.,「漁港の復旧の過去事例と能登半島輪島市においての適用可能性」(2024NotoTopographicSurvey)3
しかしながらその後の調査で、場所によっては浚渫のしやすい砂岩質の隆起地帯もありそうということがわかった。そうであるならば少しは復興の道筋を何本か増やすことができるかも知れない。今後も引き続き調査を行う予定である。
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令和6年1月11日 国土地理院発表 国土地理院 地殻変動情報(衛星SAR)「だいち2号」観測データの2.5次元解析による令和6年能登半島地震(2024年1月1日)に伴う地殻変動 https://www.gsi.go.jp/common/000254168.pdf より抜粋 ↩
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「能登半島北部沿岸の低位段丘および離水生物遺 骸群集の高度分布からみた海域活断層の活動性」 宍倉正展,越後智雄 ,行谷佑一 活断層研究 53号 33~49 2020 ↩
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https://github.com/nanbuwks/20240504MinamibosoGeoSurvey/wiki/漁港の復旧の過去事例と能登半島輪島市においての適用可能性 ↩