TWELITE を使ったガジェットを PCBA で作ろうと、外国にチップを EMS で送ったら通関で止められました。
今までは素通りだったのですが、今回ちょっと多めに送ったため 20万円を超してしまったので通関が必要らしいです。
https://www.post.japanpost.jp/int/information/important/tukan.pdf
そして、TWELITE は戦略物資となるということらしいです。
今回は、これらをクリアして海外に送る Hack です。
環境
- 2020年12月11日現在
- 令和2年6月5日施行「輸出貿易管理令の運用について」(昭和62年11月6日付け輸出注意事項62第11号・62貿局第322号)対応
- 貨物マトリクス表 kamotsu_matrix201012.xlsx 使用
- 外国ユーザーリスト 令和2年5月14日版使用
貿易については対応法令などがどんどん変わっていくので、以下の記述は本日のスナップショット的にお考え下さい。
パラメータシートとメーカによる情報
TWELITE のメーカである MONO-WIRESS
「海外輸出についての考慮事項 -- MONO-WIRELESS.COM」
https://mono-wireless.com/jp/tech/Hardware_guide/export.html
によると、
弊社無線モジュールを海外に輸出する際には、該非判定パラメータシートの添付が求められます。弊社製品には半導体上に AES128bit 暗号回路が含まれているため該当判定となります。
とあります。該非判定パラメータシートって何?
とは、メーカーが作成するCISTECが発行している質疑応答式のチェックシートだそうです。
記入例として以下のようなものがありました。
中を見ると、それっぽいのがありますね・・・
さて、先の MONO-WIRELESS.COM のサイトには、TWELITEについて
詳細・パラメータシートは弊社「お問い合わせ」より請求ください。
というので請求してみて、MONO-WIRESS から TWELITE のパラメータシートをいただきました。これにはやっぱり該当品という記載がされていて、このような場合、経済産業省の輸出承認が無ければ原則輸出許可は下りないそうです。
そして、なぜ該当品かというと、以下の項目に該当するらしいです。
「情報セキュリティ(暗号装置)」「情報セキュリティ・貨物 様式9-07」の
対称アルゴリズムの鍵長56bit以下のもの、又は次のイ(一)から(六)の規制される非対称アルゴリズムではないものか?
AES128bit は対称暗号(共通鍵暗号なので、 対称アルゴリズムの鍵長56bit以下ではないということになります。
さて、AES128bit を持つものは全て該当品かというとそうではなくて、いくつか除外規定があります。 TWELITE の場合、特に以下の項目で除外されるかどうかが鍵となります。
第九号イ(十一)~(二十)、へ(一)、ヘ(二)の除外規定が適用できるか? はい(非規制)
イ(十一).スマートカード又はそのリーダライタ
イ(十二).銀行業務又は決済用の装置
イ(十三).携帯用電話機端末
イ(十四).コードレス電話装置
イ(十五).携帯用電話機端末又は同等の無線機端末
イ(十六).無線パーソナルエリアネットワーク用の装置
イ(十七).移動体通信用無線アクセスネットワーク装置
イ(十八).ルーター、スイッチ又はリレー
イ(十九).汎用目的の計算機能を有する装置又はサーバー
イ(二十).ネットワークに接続する民生産業用途端末・装置
へ(一).市販暗号装置(未市販装置に内蔵されているもの)
へ(二).市販暗号装置の部分品(未市販装置に内蔵されているもの)
このうちの、
イ(十六).無線パーソナルエリアネットワーク用の装置
で除外になるのではないかな?
しかしながら、これは条件があり、
- 暗号機能を使用して通信を行うことができる範囲が30m以内
または、
- 8以上のデバイスに相互接続することができないかつ暗号機能を使用して通信を行うことができる範囲が100m以内
である必要があるらしいです。
TWELITEは8以上のデバイスに相互接続でき、更に通信は1km飛ぶと謳っているのでばっちり超えてますね。
なお、この条件は 令和3年1月27日より施行の改正 で削除されるようで、もうちょっとすると無線パーソナルエリアネットワーク用の装置 としてTWELITEも除外適用となるかも知れませんが・・・・そんなのを待っていたら春節を迎えてしまいます。今年中に何とかしたいですね。ではどうすれば?
流れを確認する
まず、パラメータシートを含んだ輸出処置について調べてみました。
輸出を管理するのは経済産業省になります。
経済産業省の安全保障貿易管理のページを見て確認してみました。
以下のような流れになります。
この図は、
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply01.html
を元に作成しました。
これらに書いている、リスト規制やキャッチオール規制、例外規定とは何でしょうか?
リスト規制の該非判定
まず、リスト規制があります。
リスト規制は輸出しようとするものの機能やスペックを対象とした規制で、
輸出貿易管理令別表第一(外為令別表)の1~15の項に該当する貨物(技術)をリスト規制貨物(技術)とみなします。
- 1.武器
- 2.原子力
- 3.化学兵器
- 3の2.生物兵器
- 4.ミサイル
- 5.先端材料
- 6.材料加工
- 7.エレクトロニクス
- 8.電子計算機
- 9.通信
- 10.センサー等
- 11.航法装置
- 12.海洋関連
- 13.推進装置
- 14.その他
- 15.機微品目
これが該当するかどうかは、Excelマトリクス表をつかうことになります。
まず、「リスト規制の該非判定」を行いますが、貨物か技術かで法令が異なります。この場合貨物です。技術とは何か? ソフトウェアとかが技術になるらしいです。該非判定は貨物・技術それぞれにExcel形式のマトリクス表があり、それと照らし合わせます。
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html
どうやら、先のパラメータシートはこのマトリクス表と同じ内容を製品別にわかりやすくフロー形式にしたものみたいです。
キャッチオール規制
キャッチオール規制は需要者や用途を対象とした規制で、現在以下の2つが実施されています。
(1)大量破壊兵器キャッチオール規制
(2)通常兵器キャッチオール規制
具体的には需要者、用途、規制対象地域による規制です。まず、肉や野菜など、明らかに兵器に使われないものを除いたうえで
- 需要者として外国ユーザーリスト
- 用途として大量破壊兵器の開発や、それにつながる行為、
- 規制対象地域として指定した国における通常兵器の開発、製造、使用
に該当するかどうかで判断します。
例外規定(特例)
以下の7項目の例外規定があります。
- 一定の船舶又は航空機において使用する燃料、綱等の貨物
- 航空機の発着等を安全にする機上装備貨物等であって、修理又は取替えを要するもの
- 国際機関が送付する貨物であって、条約等により規制を免除されているもの
- 日本国大使館等に送付する公用の貨物
- 無償特例
- 少額特例
- 部分品特例
TWELITE に適用してみる
この流れに沿ってどのように適用するか考えてみます。
リスト規制の該非を判定してみる
まず、
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html
先の対称アルゴリズムの鍵長56bit以下のもの、又無線パーソナルエリアネットワーク用の装置 の記述はExcelファイルの9.通信シート、 259行、396行になります。
そして、先のパラメータシートの通り該当判定になります。
ということで、例外規定の判定に進みます。
例外規定(特例)を判定してみる
先に挙げた例外規定
- 一定の船舶又は航空機において使用する燃料、綱等の貨物
- 航空機の発着等を安全にする機上装備貨物等であって、修理又は取替えを要するもの
- 国際機関が送付する貨物であって、条約等により規制を免除されているもの
- 日本国大使館等に送付する公用の貨物
- 無償特例
- 少額特例
- 部分品特例
のうち、無償特例または少額特例が使えるのではないかな?
無償特例
・無償で輸入し無償で返送する貨物
・後日無償で輸入する予定で無償で輸出する貨物
少額特例
・一定の範囲の貨物の中で、貨物の種類毎に定められた一定の価格以下のもの
だそうです。
まず、以下の内容とすることで無償特例が適用できるかな・・・
- PCBA のために(パーツ代金を)無償で輸出
- PCBA 完了品を(パーツ代金を)無償で輸入
・・・と思いましたが該当にあたる告示にあたってみるとそのようなものは想定する用途の指定は無さそうです。
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/kokuji/20160329_11.pdf
一方、少額特例は 100万円 (一部の項目は5万円)までであればOKだそうで、これを適用してみます。
キャッチオール規制の判定に進みませう。
キャッチオール規制を判定する
まず、肉や野菜などの明らかに関係ないものかどうか? TWELITE は
第16部 機械類及
び電気機器並びに
これらの部分品並び
に録音機、音声再生
機並びにテレビジョ
ンの映像及び音声
の記録用又は再生
用の機器並びにこ
れらの部分品及び
附属品
の
第85類 電気機器及びその部分品並びに録音機、音声再生機並
びにテレビジョンの映像及び音声の記録用又は再生用の機器並び
にこれらの部分品及び附属品
にかかるのでちゃんと判定が必要となり、外国ユーザリストと用途と仕向け地の判断が必要です。
まず外国ユーザリストですが、これの対象ユーザではなかったので、仕向け地を判断します。
仕向け地としては輸出令別表第3の2に掲げる国・地域にかかるかどうかになります。
- アフガニスタン
- 中央アフリカ
- コンゴ民主共和国
- イラク
- レバノン
- リビア
- 北朝鮮
- ソマリア
- 南スーダン
- スーダン
この10か国については通常兵器の開発、製造、使用に関係したものは規制となりますが、今回はこの対象国ではありませんでした。
用途については上記10か国以外であれば大量破壊兵器の開発や、それにつながる行為であるかどうかで判断することになります。
(※3)大量破壊兵器等:
・核兵器
・軍用の化学製剤
・軍用の細菌製剤
・軍用の化学製剤又は細菌製剤の散布のための装置
・300km以上運搬することができるロケット
・300km以上運搬することができる無人航空機
※部分品も含む。
(※4)開発等:
開発、製造、使用又は貯蔵
(※5)おそれ省令 別表に掲げる行為:
・核燃料物質又は核原料物質の開発等
・核融合に関する研究
・原子炉(発電用軽水炉を除く)又はその部分品若しくは附属装置の開発等
・重水の製造
・核燃料物質の加工
・核燃料物質の再処理
・以下の行為であって、軍若しくは国防に関する事務をつかさどる行政機関が行うもの、又はこれらの者から委託を受けて行うことが明らかなもの
a 化学物質の開発又は製造
b 微生物又は毒素の開発等
c ロケット又は無人航空機の開発等
d 宇宙に関する研究
※a及びdについては告示で定めるものを除く。
TWELITEについてはこれらにはかかりそうにありません。
ということで、キャッチオール規制をクリアして申請不要、となりそうです。
自己判定書を作る
さて、これに基づいて書類を作成します。
キャッチオール規制については、以下のような書類を作成するのが良さそうです。
適切な輸出管理を実施するために、判断に至った経緯を社内の規程に従って保存してください。(「客観要件確認シート 」を適宜活用してください)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/anpo03.html
次に、少額特例に必要な書類ですが:
少額特例を適用して輸出する際には、特例を適用して輸出する旨、輸出通関時に税関に申告する必要があります。
また、申告時には輸出貨物が少額特例を適用できる規制対象貨物であること、対象貨物の総価格が少額特例を適用できる価格であることを証する書類等を用意する必要が御座います。詳細については、輸出通関を予定している税関にお問い合わせください。
ということで、東京税関にTELしてみたら・・・「お客様の都合により、電話機を取り外しております」のアナウンスwwwwwwwwww
いろいろあたってみると、某所に電話がつながり、少額特例で申請したいということを申し出たところインボイス、パラメータシート、パンフレットで対応を進めていただけることになりました。(続きます)
これ以外の方法
今回は、メーカーのパラメータシートに追加して特例対応で進めましたが、自分の製品の場合パラメータシートを自分で作ることもできそうです。例えば TWELITE を組み込んだ自分の製品として、暗号機能を使えないようにして休眠暗号とし、それに沿って非該当としたパラメータシートを作成して輸出するなどの方法があります。
今回は、チップにファームを書くのは後工程にしようとしたのでこの方法はやめて、少額特例でやってみました。