はじめに
6月16日に実施された開発者会議「Consensus Layer Meeting 111」で、Ethereumの次期大型アップグレードデンクン(Dencun)のうち、コンセンサス層アップグレードとなるデネブ(Deneb)の内容が決定したのでまとめます。
この記事でカバーする内容
・今回決定したアップグレードの内容
この記事でカバーしない内容
・Ethereumの基本知識
デンクン(Dencun)? デネブ(Deneb)?
前提知識として、イーサリアムは、実行層(EL:Execution Layer)とコンセンサス層(CL:Consensus Layer)の2つのクライアントを搭載したノードで運用されています。
今回決定したのはコンセンサス層のアップグレードの内容です。
・「デネブ(Deneb)」→コンセンサス層のアップグレード
・「カンクン(Cancun)」→実行層のアップグレード
※「デンクン(Dencun)」は、2つのアップグレードを合わせた名称です。
「デネブ(Deneb)」の内容が決定したことにより「デンクン(Dencun)」としての全体のアップグレード内容が決定したことになります。
アップデート内容
デネブ(Deneb)のアップグレード
・EIP-4788
・EIP-4844
・EIP-6988
・EIP-7044
・EIP-7045
カンクン(Cancun)のアップグレード
・EIP-1153
・EIP-4788
・EIP-4844
・EIP-6780
・EIP-5656
※EIP(Ethereum Improvement Proposals)は、イーサリアムをより良いものにするために議論される改善提案のことです。
ここでは主にデネブ(Deneb)のアップグレード内容をそれぞれ解説していきます。
なお、重要な改善案には⭐️をつけています。
⭐️EIP-4788
EIP-4788は、チェーンの状態に関する情報を含むビーコンチェーン(Beacon Chain)ブロックのルートをイーサリアム仮想マシン(EVM)内に公開するもので、ステーキングのユーザー体験を向上させる提案となる。
⭐️EIP-4844
EIP-4844は、レイヤー2ブロックチェーン(L2)がL1であるイーサリアムに書き込むのに使える専用のトランザクション(blob transactions)を導入し、それによりL2のトランザクション手数料を削減するための提案です。
「プロトダンクシャーディング(Protodank Sharding)」と呼ばれている。
EIP-6988
EIP-6988は、ネットワークから排除されているバリデーターがプロトコルによってブロック提案者として選択されるのを防ぐ提案です。
このEIPの導入は複雑なコードの変更を含むため、これに関する議論は今回保留された。
EIP-7044
EIP-7044は、署名されたバリデーターの自主終了を永続的に有効であることを保証するためのもので、すでに「デネブ」アップデートに統合されている。
EIP-7045
EIP-7045は、認証スロットを拡張する提案で、チェーンのセキュリティを強化することを目標としている。
重要な要素についてさらに詳しく説明します。
EIP-4788
EIP-4788は、「ビーコンチェーンブロックルート」という新しいデータタイプをイーサリアムの実行レイヤーに導入します。これにより、ビーコンチェーンブロックの状態(例えば、ステーキング残高)に関する値を証明することが可能になります。
ここで、「ビーコンチェーン」は「Proof of Stake(PoS)」というアルゴリズムを指します。
2022年9月に「マージ(The Merge)」というアップグレードが行われ、イーサリアムは「Proof of Work(PoW)」から「Proof of Stake(PoS)」へと移行しました。
この変更により、報酬を受け取るメカニズムが大きく変わりました。PoWでは、多くのマイニング用PCを持つ者が有利でしたが、PoSでは多くのステーキング用通貨(この場合、ETH)を持つ者が有利となります。
つまり、報酬の受け取り方がステーキングを通じて行われるように変わったのです。
EIP-4788は、このようなPoSへの移行がなされたことにより、その必要性が生じた技術と言えます。
EIP-4844
EIP-4844は、レイヤー2のトランザクション手数料を大幅に削減するためのアップグレード「プロトダンクシャーディング(Protodank Sharding)」です。このアップグレードにより、ガス料金が100分の1まで削減される可能性があります。
基本的に、レイヤー2はレイヤー1のガス代を減らすための拡張ツールで、レイヤー2のデータはレイヤー1に転送されます。
EIP-4844は、「レイヤー2からレイヤー1のブロックへ、低コストでデータを追加する方法」を導入する技術です。
これにより、レイヤー2からレイヤー1への「専用のトランザクション(blob transactions)」が導入される予定です。
このトランザクションには、大量のオフチェーンデータが含まれており、取引の高速化とコスト削減を実現するための重要なアップグレードとなります。
参考記事