EC-CUBE2.17 は、 EC-CUBE2.13.5 を PHP7 に対応したバージョンです。
MySQL で約200%の高速化等、性能面でも大幅な改善 をされており、大量のトラフィックを支える大規模サイトや、共有レンタルサーバーなどで運用したい方におすすめです。
また、フレームワークによるサポート期限の縛りがありませんので、 EC-CUBEでは一番長くサポートされるバージョン となっています。3年以上保守したいサイトにも適しています。
(RHEL8 と組み合わせれば、 PHP7.4 は2029年5月までのサポート。 RHEL8 の PHP は AppStreamのサポートサイクルに組み込まれています。EC-CUBE2.17.2は、PHP8にも対応)
2.4系から移行する場合は、データ移行プラグインをお使いください。
- 必ずローカル環境またはテスト環境で実施してください
- 2.13.5 からデータベースの変更はありません。
- Git を使用してバージョン管理していないサイト向けの方法です。
- 既に Git を導入されている方は 著作権表示等を置換 から進めると良いでしょう。
- 2.13.5 と 2.17 の差分はこちら
著作権表記変更 の影響もあり、2.13.5 から 2.17 の差分はほぼ全ファイルに及びます。
また、 Composer でパッケージ管理をするようになったため、単純に差分ファイルを上書きしただけでは動作しませんのでご注意ください。
導入バージョンの EC-CUBE をクローン
# EC-CUBE 2.13.2 の例です
git clone https://github.com/EC-CUBE/ec-cube2.git
git fetch origin --tags
git checkout -b 2.13.2 refs/tags/eccube-2.13.2
EC-CUBE はリリースごとにタグがついています。
refs/tags/<導入バージョン>
で checkout するのがポイント
カスタマイズ済みの EC-CUBE を上書き
サーバー上のものを FTP や SCP などでダウンロードするなりして上書きしてください。
html の中に data を入れているサイトもあるかと思いますが、 先に clone した EC-CUBE と data ディレクトリの階層が一致していれば大丈夫です。
ssh が利用可能な場合は、以下のようにして上書きコピーできます。
cd ec-cube2
scp -rp user@hostname:/path/to/ec-cube/* .
著作権表示等を置換
LOCKON CO.,LTD. が EC-CUBE CO.,LTD. になっていたり、バージョン番号がついていたりしますので、コンフリクトしないように置換しておきます。
普段お使いのエディタを使用しても大丈夫です。
export LANG=C # Mac の BSD sed を使う場合のおまじない
# 著作権表示を置換
find . -name '*.php' -print0 -or -name '*.tpl' -print0 -or -name '*.css' -print0 -or -name '*.js' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's/Copyright(c) .* LOCKON CO.,LTD. All Rights Reserved./Copyright(c) EC-CUBE CO.,LTD. All Rights Reserved./'
find . -name '*.php' -print0 -or -name '*.tpl' -print0 -or -name '*.css' -print0 -or -name '*.js' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's|http://www.lockon.co.jp/|http://www.ec-cube.co.jp/|'
find . -name '*.php' -print0 -or -name '*.tpl' -print0 -or -name '*.css' -print0 -or -name '*.js' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's|LOCKON CO.,LTD.|EC-CUBE CO.,LTD.|'
# @version タグを置換
find . -name '*.php' -print0 -or -name '*.tpl' -print0 -or -name '*.css' -print0 -or -name '*.js' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's|@version \$Id:.*\$|@version $Id:$|'
find . -name '*.php' -print0 -or -name '*.tpl' -print0 -or -name '*.css' -print0 -or -name '*.js' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's|@version \$Id:\$|@version $Id$|'
# 参照代入の修正を置換
find . -name '*.php' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's|$objQuery =& SC_Query_Ex::getSingletonInstance();|$objQuery = SC_Query_Ex::getSingletonInstance();|'
## tpl の置換
find . -name '*.tpl' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's|\(.*\)=`\(.*\)`|\1="`\2`"|g'
find . -name '*.tpl' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's/if $\(.*\)|@count > 0/if !empty($\1)/g'
## 改行コードを置換(管理画面から編集すると CRLF になってしまうため)
find . -name '*.php' -print0 -or -name '*.tpl' -print0 | xargs -0 sed -i.bak 's/'$'\r//'
## 最後にバックアップファイルを削除
find . -name '*.bak' -delete
php-cs-fixer の適用
最新の weekly build では php-cs-fixer で PHPコードを整形しています。
旧バージョンの EC-CUBE に対しても適用できますので、これを利用することでコンフリクトを最小限にできます。
# https://github.com/PHP-CS-Fixer/PHP-CS-Fixer/releases から最新の php-cs-fixer.phar をダウンロード
curl -O -L https://github.com/PHP-CS-Fixer/PHP-CS-Fixer/releases/download/v3.64.0/php-cs-fixer.phar
# 2.17 の設定ファイルをダウンロード
curl -O -L https://raw.githubusercontent.com/EC-CUBE/ec-cube2/refs/heads/master/.php-cs-fixer.dist.php
# php-cs-fixer を適用(PHP8.3など、できるだけ新しいPHPで実行すると良いです)
PHP_CS_FIXER_IGNORE_ENV=1 php-cs-fixer.phar fix --allow-risky=yes
カスタマイズ内容をコミット
ここまでの内容をコミットしておきます。
コミットしておけば、いつでも戻すことができます。
git add .
git commit -m '独自カスタマイズ'
2.17 のブランチをマージ
2.17 の変更をマージします。
独自カスタマイズした箇所以外は、自動的に変更を取り込んでくれるはず。。
git fetch origin
git merge origin/master
コンフリクト解消
コンフリクトした箇所を手作業でマージします。
すべて解消したら、変更をコミットします。
data/config/config.php など、機密情報の含まれたファイルはコミットしないでください。不用意に Github などへ push してしまうと、不正アクセスの原因となります。
コンフリクトの解消方法は、こちらを参考にしてください → Git を使って EC-CUBE を簡単アップデート#番外-競合コンフリクトしてしまった時は
composer install コマンドを実行
EC-CUBE2.17 から、 PEAR や Smarty の外部ライブラリは、 3系、4系と同じく composer で管理するようになりました。
git merge
が上手くいった場合は、 data/module
の下から、これらのソースが削除されていますので、生成する必要があります。
# composer のセットアップ
php -r "copy('https://getcomposer.org/installer', 'composer-setup.php');"
php composer-setup.php
php -r "unlink('composer-setup.php');"
# composer install コマンドの実行
php composer.phar install
デザインテンプレートや個別カスタマイズ箇所の修正
標準以外のデザインテンプレートを使用している場合は、 テンプレート名が default や、 sphone 以外になっていると思います。
これらは自動的にバージョンアップされませんので、 default や sphone との差分を確認しながら取り込む必要があります。
個別にカスタマイズした箇所で、 PHP7 に対応していない箇所がある場合は、個別に修正が必要です。
プラグインの修正
2.13 に対応しているプラグインでしたら、PHP7 で非推奨になった箇所の Warning が発生しつつも、多くはそのまま動作します。
しかし、 PHP7 で廃止された関数や構文を使用している場合は、個別に修正する必要があります。
data/config/config.php の修正
PHP7 になって mysql extension が廃止されたため、MySQL の場合のみ mysqli ドライバを使用する必要があります。
また、 DB_PORT
は空文字を許さなくなったため、明示的に指定する必要があります。
デフォルト値の 3306
の場合は false
でも可
// mysql を mysqli に変更
define('DB_TYPE', 'mysqli');
// DB_PORT を明示的に指定
define('DB_PORT', '3306');
eccube.legacy.js の追加
2.12以前からのデザインテンプレートを使用していたり、2.12系互換のプラグインなどでは、fnModeSubmit()
など古い JavaScript 関数が使われている場合があります。
これらの互換性を向上するには、 eccube.legacy.js
, eccube.admin.legacy.js
といった互換用の JavaScript を追加しましょう
フロント画面用設定例
<script type="text/javascript" src="<!--{$smarty.const.ROOT_URLPATH}-->js/eccube.js"></script>
<!-- ↓後方互換用 JavaScript 関数を追加 -->
<script type="text/javascript" src="<!--{$smarty.const.ROOT_URLPATH}-->js/eccube.legacy.js"></script>
eccube.legacy.js は以下のテンプレートに追加が必要です
- data/Smarty/templates/<テンプレート名>/site_frame.tpl
- data/Smarty/templates/<テンプレート名>/popup_header.tpl
- data/Smarty/templates/sphone/site_frame.tpl
- data/Smarty/templates/sphone/popup_header.tpl
管理画面用設定例
<script type="text/javascript" src="<!--{$smarty.const.ROOT_URLPATH}-->js/eccube.js"></script>
<!-- ↓後方互換用 JavaScript 関数を追加 -->
<script type="text/javascript" src="<!--{$smarty.const.ROOT_URLPATH}-->js/eccube.legacy.js"></script>
<script type="text/javascript" src="<!--{$TPL_URLPATH}-->js/eccube.admin.js"></script>
<!-- ↓後方互換用 JavaScript 関数(管理画面用)を追加 -->
<script type="text/javascript" src="<!--{$TPL_URLPATH}-->js/eccube.admin.legacy.js"></script>
eccube.legacy.js と eccube.admin.legacy.js は以下のテンプレートに追加が必要です
- data/Smarty/templates/admin/main_frame.tpl
- data/Smarty/templates/admin/popup_header.tpl
動作確認
ここまでできれば、 Webサーバー上での動作確認ができると思います。
システムエラーが発生した場合は、 PHP7 に対応していないコードが含まれていると思われます。 data/logs/error.log
をご確認ください
その他注意事項
運用で使用しないファイルの削除
git merge で最新バージョンをマージすると、運用では使用しないファイルも取り込まれます。
セキュリティ向上のため、これらは削除するようにしましょう。
rm -rf .github
rm .php_cs.dist
rm phpunit.xml.dist
rm phpstan.neon.dist
rm app.json
rm Procfile
rm build.xml
rm README.md
rm codeception.yml
rm php.ini
rm phpinicopy.sh
rm phpinidel.sh
rm *.phar
rm setup.sh
rm setup_heroku.php
rm svn_propset.sh
rm -rf ctests
rm -rf tests
rm -rf templates
rm -rf patches
rm -rf docs
rm -rf html/test
rm -rf dockerbuild
rm -rf Dockerfile
rm -rf docker-compose*.yml
rm -rf zap
find . -name "dummy" -print0 | xargs -0 rm -rf
古いバージョンのファイルの残存に注意
data/module 以下に、2.17未満のバージョンのファイルが残存してしまう場合があります。必要なファイルは以下URLを参考にしていただき、古いファイルは削除してください
html フォルダの中に data フォルダを入れている場合
ロリポップなどのレンタルサーバーで、 html フォルダの中に data フォルダを入れている場合、 2.17 の html フォルダが残存してしまう場合があります。
例) 2.13.5 で html フォルダを data フォルダに入れている場合
URL: https://example.com/
DocumentRoot(htmlフォルダ): /home/username/www/example.com
data フォルダ: /home/username/www/example.com/data
2.17 のパッケージを、そのまま上書きすると以下のようになってしまいます。
URL: https://example.com/
DocumentRoot(htmlフォルダ): /home/username/www/example.com
data フォルダ: /home/username/www/example.com/data
2.17 の htmlフォルダ: /home/username/www/example.com/html
このままですと、 https://example.com/html でもアクセス可能な状態になり、セキュリティホールの原因となります。
また、 /home/username/www/example.com/define.php が 2.13.5 のままですのでシステムエラーになってしまいます。
html フォルダの中に data フォルダを入れている場合は、DocumentRoot に html フォルダが残存しないようくれぐれもご注意ください。
どうしても動かない場合は
開発コミュニティ や、こちらのコメント覧でご相談を!