意外と知られていない AWS の調達についてです。
AWS のリセール(請求代行サービス)とは
AWS のリセールとは、リセラーが利用者に AWS を販売することです。利用者はリセラーと契約することで AWS を利用します。AWS への支払いはリセラーが行うため、請求代行サービスとも呼ばれます。
リセラーについては「AWS リセール」「AWS 請求代行」等で検索してみてください。これらを利用するメリット・デメリットは以下の通りです。
一般的な話の記載にとどまります。実際に契約する際には、各リセラーのサービス内容や利用規約等をよく確認してください。
メリット
AWS 利用料が安くなる
直接契約で利用する場合より、利用料が安くなります。 5% 前後のディスカウント(割引)が多いようです。少しでも利用料を安くしたい場合は検討の価値アリです。非常に大きなワークロードであれば、直接契約でもディスカウントを受けることができる可能性があります。
なぜ安くなるのか?
リセラーは AWS から大幅なディスカウントを受けています。数多の利用者による AWS リソースへのコミット、後述のサポート受付などにより、リセラーは通常より安い価格で AWS を提供できます。そのディスカウントの一部を利用者への料金割引として還元しているという仕組みです。
請求書払いができる
AWS は通常クレジットカードでの支払いとなります。請求額が多い場合は特別に請求書払いへ切り替えることもできますが、クレジットカードの登録ができない場合に利用できます。
円建てで支払いできる
通常はドル建てでの支払いになります。社内稟議や支払いフローとしてこれが許容できない場合に利用できます。一方リセラー経由でも為替レートの変動に対して影響を受けるため、注意が必要です。
追加コストなしでサポートが利用できる
直接契約した際に無料で利用できる「ベーシック」サポートプランでは、アカウント・請求・サービスクォータ緩和についてのみケース起票ができます。開発時のサポートや運用時のトラブルシュート等が必要な場合、有料のサポートプランへの加入が必須です。
一方リセラーは自身のポータルサイトを用意しており、追加コストなしでサポートを利用することが可能です。またリセラーで解決できない問題は、AWS へ取り次いでくれます。
リセラーの構築・運用サービスが受けられる
リセラーが AWS の構築・運用サービスを行なっている場合は、そのサービスの利用にリセラー払い出しのアカウントが必要、もしくはリセラー払い出しのアカウント所持により有利に話が進められるといったケースがあります。
デメリット
ルートユーザーが利用できない
ルートユーザーはリセラーが管理し、利用者は Administrator
権限相当の IAM ユーザーを受け取ります。そのためルートユーザーが必要な作業はリセラーへ作業依頼する必要があります。
ルートユーザーはいつ使う?
以下のような場合です。最もよくあるケースは、バケットポリシーを誤って設定し S3 バケットに誰もアクセスできなくなった際の復旧などです。
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/IAM/latest/UserGuide/root-user-tasks.html
ただし上記以外にもルートユーザーが必要なケースが考えられます。例えば以下ドキュメントでは AWS Fargate
の「タスク廃止の待機時間」の設定変更にルートユーザーを要求しています。
待機時間を設定するには、ルートユーザーとして
put-account-setting-default
またはput-account-setting
を実行します。
利用できない AWS サービスがある
有名な例では、リセラー自身が利用者のアカウントを管理するために利用しているため AWS Organizations
が使えないなどです。こちらはリセラーの上位プランや追加オプションの契約で開放できるケースが増えてきました。
他にも サービスデリバリープログラム (SDP) 認定の関係で、リセラーによっては再販できない、割引が適用されないサービスがあるので丁寧な確認が必要です。
リセラー契約の前に想定ワークロードを作成し、問題ないか相談しましょう。
AWS サポートに直接起票できない
リセラーはリセール条件より、利用者からの問い合わせを自社のポータルサイト等で一次受付し、回答する義務があります。また利用者はマネジメントコンソールからサポートケースを起票することはできません。
サポート回答の品質やリードタイムはリセラーによって変わります。AWS でないと回答できないケースは取り次いでくれるものの、直接起票と比べるとストレスを感じる可能性は増えるでしょう。
マネジメントコンソールから料金を確認できない
利用者やリセラー自身も特殊なディスカウントを受けているため、マネジメントコンソールの Billing から料金を確認することができません。
リセラーの料金確認ポータルが使いにくい以外に、自家製のコスト分析ツールが導入できないなどのリスクも考えられます。
まとめ
上記から AWS の調達にあたっては以下戦略が最適だと考えられます。
- リセラーを利用する
- 小~中規模のワークロードである
- 請求や支払いに条件がある
- リセラーのサポートや構築・運用サービスを受けたい
- AWS と直接契約する
- 大規模なワークロードである
- サポートや利用サービスにこだわりがある
- リソースは自社でコントロールしたい
個人的にはリセラー契約の場合に、優秀な AWS サポートに直接ケースを起票できないのが痛手だと感じたことがあります。検討の際には注意していただきたいです。合わなければリセラー変更や AWS との直接契約も視野に入れてほしいと思います。