Dockerのマルチステージビルドとは?
Dockerのマルチステージビルド(Multi-stage Build)は、Dockerイメージを効率的に作るための方法です。簡単に言うと、複数のステップ(ステージ)を使って、イメージを小さく、安全に作るテクニックのことです。
普通のDockerビルドでは、1つのDockerfileですべての作業を済ませます。しかし、マルチステージビルドでは、ビルドの作業を分けて、最後に必要なものだけを残します。これによって、無駄なものが入らない、軽くて安全なイメージを作ることができます。
なぜマルチステージビルドが必要なのですか?
アプリを作るとき、たとえばプログラムをコンパイル(ビルド)するには、特別なツール(例:コンパイラやnpm)が必要です。でも、そのアプリを動かすときには、そういったツールは必要ありませんよね。
普通のDockerビルドだと、ビルドに使ったツールまで最終的なイメージに入ってしまいます。これは問題で、以下のようなことが起こります:
- イメージが大きくなる:必要ないものが入るので、サイズが無駄に増えてしまいます。
- セキュリティが心配:余計なツールがあると、悪用されるリスクが上がります。
マルチステージビルドを使えば、ビルド専用のステージでツールを使ってアプリを作り、最終ステージにはアプリだけを入れることができます。これで、イメージが小さくなり、安全性も高まります。
マルチステージビルドの基本的な流れ
マルチステージビルドでは、Dockerfileに複数の「FROM」という命令を書いて、ステージを分けます。各ステージは独立していて、前のステージから必要なものだけを次のステージに持ってくることができます。
基本的な流れは、次のようになります:
- ビルドステージ:アプリを作るための準備をします。ここでツールを使ってアプリをビルドします。
- 実行ステージ:できたアプリを動かすための環境を用意します。ここにビルドしたものだけをコピーします。
具体例で理解してみましょう
Go言語で簡単なWebサーバーを作る例で、マルチステージビルドを見てみましょう。
普通のDockerfile(マルチステージではない場合)
FROM golang:1.16
WORKDIR /app
COPY . .
RUN go build -o main .
CMD ["./main"]
この場合、Goのコンパイラやツールがすべてイメージに入ってしまいます。
その結果、イメージが大きくなってしまいます。
マルチステージビルドのDockerfile
# ビルドステージ
FROM golang:1.16 AS builder
WORKDIR /app
COPY . .
RUN go build -o main .
# 実行ステージ
FROM alpine:3.14
WORKDIR /app
COPY --from=builder /app/main .
CMD ["./main"]
ビルドステージ(AS builder
)でアプリを作り、
実行ステージで、できたアプリ(main
)だけを軽いイメージ(alpine
)にコピーします。
コンパイラなどの不要なものは残さないので、イメージが小さくなります!
マルチステージビルドのメリット
マルチステージビルドには、以下のようなメリットがあります:
- イメージが小さくなる:不要なツールが入りません。
- 安全性が向上する:攻撃されにくいイメージになります。
- ビルドが速くなる:キャッシュをうまく使って効率化できます。
- 管理が楽になる:ビルドと実行を分けてスッキリします。
まとめ
Dockerのマルチステージビルドは、イメージを小さく、安全に作るための便利な方法です。ビルドと実行を分けて考えることで、無駄をなくし、効率を上げることができます。
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マルチステージビルド実行ステージ推奨イメージ
マルチステージビルドの実行ステージで最も使用されているイメージは、アプリケーションの種類や要件によって異なりますが、ベストプラクティスとして以下のイメージが推奨されます。これらは軽量性とセキュリティを重視しつつ、アプリケーションの動作に必要な最小限のコンポーネントのみを含むものです。
推奨イメージ
以下に、代表的なケースごとのベストなイメージ選択を説明します。
Go言語のアプリケーション: scratch
イメージ
-
特徴:
scratch
は完全に空のイメージで、何も含まれていません。 -
理由: Goは静的にコンパイルされたバイナリを生成するため、ランタイムや追加のライブラリが不要です。そのため、
scratch
を使うことで最も軽量で安全なDockerイメージを作成できます。 - メリット: イメージサイズが最小限になり、不要なツールやライブラリがないため攻撃対象が減ります。
Javaのアプリケーション: gcr.io/distroless/java
(Distroless Javaイメージ)
- 特徴: Googleが提供するDistrolessイメージで、Javaランタイム(JRE)と必要なライブラリのみを含みます。シェルやパッケージマネージャーなどの余分なツールはありません。
- 理由: JavaアプリケーションにはJREが必要ですが、Distrolessイメージは不要なコンポーネントを排除することでセキュリティを向上させつつ、軽量性を保ちます。
- メリット: セキュリティと軽量性のバランスが優れており、Javaアプリケーションに特化した選択肢として広く採用されています。
その他の言語やフレームワーク: alpine
(※またはdistroless
)イメージ
- 特徴: Alpine Linuxは非常に軽量なディストリビューションで、多くのアプリケーションに対応しています。
- 理由: PythonやNode.jsなど、ランタイムが必要な言語に対して、Alpineは最小限のサイズで必要な依存関係を提供します。ただし、musl libcを使用しているため、一部のアプリケーションで互換性の問題が発生する可能性があります。
-
代替案: 互換性に問題がある場合、
debian-slim
やubuntu-minimal
などの軽量なイメージも検討できます。
ベストプラクティスのポイント
マルチステージビルドの実行ステージでイメージを選ぶ際は、以下の原則を守ることが重要です。
- 軽量性を重視: イメージサイズを小さく保つことで、デプロイの効率が向上し、リソース使用量が減ります。
- セキュリティを強化: シェルやパッケージマネージャーなど、不要なツールを含まないイメージを選び、攻撃対象を最小限に抑えます。
-
アプリケーションの要件に合わせる: ランタイムが必要な言語(例: Java、Python)では必要なコンポーネントのみを含むイメージを、ランタイムが不要な言語(例: Go、Rust)では
scratch
を選びます。 - Distrolessイメージの活用: GoogleのDistrolessイメージは、主要な言語(Java、Python、Node.jsなど)に対応しており、セキュリティと軽量性を両立させる優れた選択肢です。
結論
マルチステージビルドの実行ステージで最も使用されるイメージは一概には定まりませんが、ベストプラクティスとしては以下の選択が一般的です:
- Go:
scratch
- Java:
gcr.io/distroless/java
- その他:
alpine
(※またはdistroless
)
これらを適切に選択することで、安全で効率的なDockerイメージを構築できます。アプリケーションの特性に合わせて、最適なイメージを選んでください。