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AWS環境のRDS Oracleへ別アカウント、別リージョンから接続する4つの方法

Last updated at Posted at 2025-03-11

1. はじめに

AWS上でホストされるSaaS環境(オレゴンリージョン)から、東京リージョンの別アカウントが所有するプライベートサブネット内のRDS Oracleへのアクセスが必要になるケースの相談がクライアントから増えています。
しかし、リージョンやアカウントが異なる場合には、セキュリティやネットワーク設計の複雑度が飛躍的に高まります。本記事では、それらの課題を踏まえ、複数のAWS接続手法について、それぞれのメリット・デメリット・利用上の注意点を具体的な設定例とともに深堀りして解説します。


2. 要件整理と考慮事項

2.1 セキュリティ要件

  • インターネット経由を極力避けたい
    金融機関やヘルスケアのように機密性の高いデータを扱う場合、エンドツーエンドで暗号化されたプライベート接続が求められます。
  • 認可(アクセス制御)の厳密化
    SaaS側からのみアクセスを許可し、不要なアクセスやIPアドレスからの攻撃をブロックする仕組みが重要です。AWS PrivateLinkではアクセスの受け手側がコントロールを強化できます。

2.2 ネットワーク構成要件

  • 複数リージョン・アカウントにまたがるネットワーク構成
    リージョン間レイテンシは物理距離に比例し、マルチアカウント構成時には各種ルートテーブルの設定や権限の分離が必須です。
  • 高可用性と拡張性
    RDS OracleがMulti-AZ構成であっても、通信経路自体がシングルポイントにならないよう冗長化を考慮する必要があります。

2.3 コスト・運用・拡張性の観点

  • 初期コスト vs 長期運用コスト
    高パフォーマンス・高セキュリティが必要でも、Transit GatewayやDirect Connectは運用コストが大きい場合があります。PrivateLinkやVPNは導入しやすさとコストのバランスが良い反面、拡張性や性能面で制約がある場合もあります。
  • 将来的なネットワーク拡張
    新たなサービスやリージョンが増えたときにシンプルにアタッチできるかどうか、運用チームの負荷も含めて検討しましょう。

3. 接続手法の概要と比較

それぞれの手法を簡単に比較すると以下のとおりです。導入・運用コスト、セキュリティ水準、設定の複雑度など、組織が優先する要件に合わせて選択が必要です。

手法 コスト 複雑性 パフォーマンス セキュリティ 導入期間
AWS PrivateLink 非常に高
Transit Gateway 中〜高 中〜長
Site-to-Site VPN
Direct Connect Gateway 非常に高 非常に高 非常に高

以下では各手法について、具体的なアーキテクチャ構成や設定時の注意点を詳説します。


4. 各手法の詳細解説

4.1 AWS PrivateLink (VPCエンドポイントサービス)

概要

  • PrivateLinkはAWSのネットワーク内部のみで通信が完結するため、最もセキュアな選択肢の一つです。
  • アカウントA(RDSが存在する東京リージョン)側にNetwork Load Balancer (TCP 1521ポート)を置き、ターゲットグループにRDSを指定してVPCエンドポイントサービスを構築。
  • アカウントB(SaaSが存在するオレゴンリージョン)側では、インターフェイス型エンドポイントを作成してDNSで解決し、プライベート接続が可能になります。

注意点 / ベストプラクティス

  • 名前解決: Route 53 Private Hosted Zoneを活用し、ドメイン名を統一管理すると運用しやすくなります。
  • アクセスコントロール: エンドポイントサービスの許可リストを使い、アクセス元のアカウントIDを厳格に指定することで、不正なアカウントからの接続を防止できます。
  • コスト管理: Network Load BalancerとVPCエンドポイントの時間課金およびデータ処理量課金が発生するため、予測値を試算し事前承認を得るなどのプロセスが必要です。

4.2 AWS Transit Gateway (クロスリージョンピアリング)

概要

  • Transit Gatewayを活用すると、マルチアカウント・マルチVPCを一元的に管理できます。
  • リージョン間でTransit Gatewayピアリングを構成すれば、リージョン間のVPC間通信を統一的にコントロール可能です。

注意点 / ベストプラクティス

  • ルートテーブル設計: Transit Gatewayルートテーブルを細分化し、不要なトラフィックが流れないように設定します。
  • 大規模ネットワーク管理: 大手企業が大規模にTransit Gatewayを使う場合、組織のネットワーク設計に合わせて複数のTransit Gatewayをリージョン別に配置し、アタッチのルールを明確にする必要があります。
  • コストと拡張性: トラフィック量が多い場合のデータ転送料と、Transit Gateway自体の時間課金がかさむ点に注意。将来的に複数のリージョンや多くのVPCを束ねる予定があるなら、最初からTransit Gatewayを選択しておく方が運用負荷が低減する場合があります。

4.3 AWS Site-to-Site VPN

概要

  • インターネットを経由してIPsec VPNを構築し、安全性を確保する手法です。
  • アカウントAにVirtual Private Gateway (もしくはTransit Gateway)を設定し、アカウントBかSaaS環境側がオンプレミスのVPN機器としてトンネルを作成します。

注意点 / ベストプラクティス

  • 帯域と安定性: インターネット品質に依存するため、レイテンシやスループットは必ずしも保証されません。障害時にはトンネルが切断される可能性がある点を考慮し、冗長化構成(複数のVPNトンネル)を推奨します。
  • 暗号化設定: VPNの暗号化方式(IKEバージョン、暗号化アルゴリズムなど)は最新のベストプラクティスを採用することでセキュリティを確保します。
  • 運用コスト: サードパーティのVPN機器、またはAWS Managed VPNのランニングコストがかかるものの、他手法と比べれば初期コストが低い点が魅力です。

4.4 AWS Direct Connect Gateway

概要

  • 専用線を利用して高帯域かつ低レイテンシを実現する方法です。
  • 東京リージョンのアカウントAがDirect Connect Gatewayを作成し、VPCと関連付けることで専用線経由のトラフィックを受け取ることができます。

注意点 / ベストプラクティス

  • 導入スケジュール: 回線工事やAWS側での回線調整が必要になり、通常は数週間~数か月単位の計画が必要です。
  • 運用の複雑性: 回線障害や容量不足の場合、追加で専用線を敷設するなど大掛かりな作業が発生します。オンプレミス環境に近い運用体制(監視・冗長構成など)が求められます。
  • 費用対効果: 大容量データ転送が恒常的に行われるケースではコスト効率が良い反面、転送量が限定的だと過剰投資となる可能性があります。

5. ユースケース別推奨シナリオ

5.1 高度なセキュリティ要件(金融・ヘルスケアなど)

  • PrivateLinkが第一候補
    インターネット経由を一切排除し、最小限のアクセス範囲に絞り込める点が特に有効。
  • Direct Connect Gatewayも高セキュリティ+高帯域の組み合わせとして最適だが、コスト面と導入期間の問題を考慮。

5.2 大規模企業でのマルチリージョン展開

  • Transit Gatewayによるピアリングを活用
    既存のVPCとの接続をスケールさせやすく、大規模運用をシンプルに管理できる。
  • セキュリティ要件が高い場合はPrivateLinkやVPNとの併用も検討(例: SaaS連携だけPrivateLink、その他トラフィックはTransit Gatewayなどの組み合わせ)。

5.3 コスト優先・迅速導入が求められる場合

  • Site-to-Site VPNが最も導入ハードルが低い
    数時間~数日レベルで接続が確立できるため、PoCや短期間のプロジェクトに最適。
  • 本番稼働後の増強が想定されるなら、将来的にPrivateLinkやTransit Gatewayへの移行設計をあらかじめ検討しておくとよい。

5.4 大容量データ転送・常時接続が必要な場合

  • Direct Connect Gateway
    日々数TB規模のデータ連携が必要な環境では、帯域と安定性の面で専用線が圧倒的に有利。ただし導入に時間とコストがかかるため、ROIの事前評価が必要。

6. まとめ

AWSにおける異なるアカウント・リージョン間の接続手法は多様ですが、セキュリティ要件・パフォーマンス・導入コスト・運用負荷といった観点で最適解が異なります。

  • PrivateLinkはセキュリティと使いやすさのバランスに優れ、SaaS連携や機密度の高い業務に推奨。
  • Transit Gatewayは複数VPC・リージョンを横断する大規模ネットワークで特に有効。
  • Site-to-Site VPNは初期導入を素早く実現する際の定番だが、長期運用ではパフォーマンス・可用性面の検討が必要。
  • Direct Connect Gatewayは専用線の帯域と安定性を最大限活用したい場合の最高峰だが、費用と導入期間が最大のネック。

上級エンジニアやアーキテクトであれば、これらの手法を組み合わせてハイブリッドな構成にすることも検討します。たとえば、「非機密トラフィックはTransit Gateway、機密データはPrivateLink経由」といった使い分けも一般的です。
今後は、AWSのサービスアップデートマルチクラウド戦略の台頭により、クラウド間接続の要件はさらに複雑化していくでしょう。最新のAWSベストプラクティスを追随しつつ、自社や顧客のセキュリティポリシーとビジネス要件に合致するネットワーク設計を見極めることが重要です。

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