前書き
IT業界の人事評価でOKRが採用されているという話をよく耳にします。
しかし、当のエンジニア達は、何それ美味しいの? みたいな話も聞きますし
OKRやってます! っとお聞きしたけれど実態はOKRではないという会社さんもまれに居られるようなので、
(KRが測定できない + 定量的でもないケース… 会社の目標と関係ない部署目標…)
エンジニアのよりよい環境と成長のために、
馴染みの深いMBOも踏まえて、私の調べた範囲で解説できればと思います。
要約
- | MBO | OKR |
---|---|---|
誕生 | 1954年 | 1970年代 |
提唱 | ピーター・ドラッガー | アンディ・グローブ |
方法 | 本人の自主性に任せることで、自主性や主体性の発揮を促す | 優先すべき事項の明確化や、社内の連携の強化 |
目的 | 社員の成長とモチベーションの向上が狙い | 全社的な目標の達成が狙い |
共有範囲 | 上司 - 部下 | 会社 - 部署(チーム) - 個人 |
完了の基準 | 100% | 70~80% ※Googleは60~70% |
問題点 | - 目標から外れる業務はやらない or クオリティを下げてしまう。 - 評価に結びつけてしまうと、目標を低めに設定してしまう。 |
- 全社的な目標(戦略・方針)を変更すると、部署や個人の目的も変えざるを得ないので、全社的な目標を変える自由度が減る。 - 目標は高くする必要はあるが、ある程度現実的でないと、目標が高すぎてモチベーションが低下する人が発生する。 - 評価に結びつけてしまうと、積極的な冒険をためらってしまう。(大胆で危険を冒す文化の欠落) |
MBO = Management by objectives (目標による管理)
MBOとは
- 個々の担当者に自らの目標を設定、申告させ、その進捗や実行を各人が自ら主体的に管理する方法
- 本人の自主性に任せることで、主体性が発揮されて結果として大きな成果が得られるという
人間観/組織観に基づくものである - 自主的に計画、行動するので、社員の成長に繋がる。
- 認められること、役に立つことを意識することで、モチベーション向上にも繋がる。
歴史
- 1954年にピーター・ドラッガーが自身の著書『現代の経営』で提唱
- ピーター・マクレガーによってY理論によって論的基盤を与えられる。
- 1960年代以降多くの米企業に広まっていった。
- 1970年代には徐々に行動評価尺度に代替されていく
(例えば、1963年に開発された行動アンカー尺度,Smith)。 - 1980年代以降は米国でMBOが議論されることが少なくなっていった。
手法 (一例)
- 担当者は組織に合う客観的に測定できる具体的な数値目標を上司と相談して決める
- 担当者は各目標から実際の行動を計画
- 担当者は計画を実行
- 期中に上司と面談し、客観的な評価やフォローをもらう。
- 目標を見直し、新しいものを設定。
問題点
- 目標から外れる業務はやらない or クオリティを下げてしまう。
- 評価に結びつけてしまうと、目標を低めに設定してしまう。
OKR = Objectives and Key Results (目標と主要な結果による管理)
OKRとは
- 目的とその結果を定義し、追跡することで、管理する手法
- 組織の目標から、部署、個人と繋げていくことで、全社的に達成したい目標へ集中することができる。
- 目的(定性的)とその結果(定量的)を定義することで、
個々の担当者が一連の作業の優先事項に集中することができる - 難易度の高い目標をあげて、明確なゴールを設定することで、達成に向けて
個々の担当者の愛着が上昇するという研究結果もある - 1ヶ月から、3ヶ月の期間を決めて行い、70 ~ 80 % (Googleは60~70%)で目標を完了とみなす
歴史
- 1970年代 インテルCEOのアンディ・グローブが提唱
- 1999年 Googleの社外重役のジョン・ドーアがIntelで学んだOKRを紹介し、Googleも導入
- Googleを辞めた社員がシリコンバレーの他の企業へ転職した際に、OKRがさらに普及
Objectives(目標)の条件
- 大掛かりな目標であること(チャレンジングなもの)(ムーンショット)
- 定性的な目標であること (!= 定量的)
- 会社(or 部署 or チーム)のためであること
Key Results(主要な結果)の条件
- 測定可能かつ、定量可能であること
- Objectives(目的)を達成可能にするものであること
- 困難であるが、不可能ではないこと
手法 (一例)
- 会社の目標を 3 個までリスト。
- 会社の目標について 3~4 個の主要な成果を決める。
- 会社の主要な成果を満たすために、部署(チーム)として目標を 3 個までリスト
- 部署(チーム)の目標について 3~4 個の主要な成果を決める。
- 部署(チーム)の主要な成果を満たすために、個人の目標を 3 個までリスト。
- 個人の目標について 3~4 個の主要な成果を決める。
- 各目標と主要な成果を全員(社内全員という意味)で共有。
- 定期的に 0 ~ 100 % の尺度で各主要な成果を更新していく。
- 週ごと、月ごとなどに上司と面談し、レビューしてもらう。
- 主要な成果が客観的に 70 ~ 80 % (Googleは60~70%) に達したらそれを完了とみなす
- 目標を見直し、新しいものを設定。
問題点
- 全社的な目標(戦略・方針)を変更すると、部署や個人の目的も変えざるを得ないので、
全社的な目標を変える自由度が減る。 - 目標は高くする必要はあるが、ある程度現実的でないと、
目標が高すぎてモチベーションが低下する人が発生する。 - 評価に結びつけてしまうと、積極的な冒険をためらってしまう。(大胆で危険を冒す文化の欠落)
まとめ
MBOもOKRも人事評価のための手法ではない。
MBOは本人の自主性に任せることで、自主性や主体性の発揮を促すという方法。
社員の成長とモチベーションの向上が狙い。
OKRは目標と結果を定義して、目標に集中(結果を追跡)するための方法。
優先すべき事項の明確化や、社内の連携の強化によって、全社的な目標の達成が狙い。
人事評価はMBOかOKRというふうに、手法にこだわるのではなく、
仕組みや本質を理解し、自社の状況に合わせて、
最適な手法を検討し決定することが大事だと思う。
参考文献
詳細
目標による管理
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%AE%E6%A8%99%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%AE%A1%E7%90%86
MBOとPM
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2015/04/pdf/040-041.pdf
OKRとは? 【Google、Facebookが使う目標管理ツール】KPI・MBOとの違い、導入・運用・目標設定方法について解説
https://www.kaonavi.jp/dictionary/okr/
OKRを設定する
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/set-goals-with-okrs/steps/introduction/
How leaders stimulate employee learning: A leader–member exchange approach
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1348/096317909X468099
インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152080043/agnozingdays-22/
Keys to OKR Success: A Q&A with the Man Who Introduced OKRs to Google, John Doerr
https://blog.betterworks.com/keys-okr-success-qa-john-doerr/
The history of OKR - Objectives and Key Results
https://visual.ly/community/infographic/business/history-okr-objectives-and-key-results