はじめに：この記事でわかること
この記事では、GitHub Actions の Self-hosted Runner（Windows）上で Git Bash のパス変換による不具合に遭遇した際の対処方法を、実際の事例ベースでわかりやすく解説します。
「aws s3 cp が突然Segmentation fault！？」「でもLinux runnerでは問題ない…」そんなときの原因とベストプラクティスをまとめました。
背景と課題：Git Bash の自動パス変換は善か悪か？
Git Bash は Windows 環境でも UNIX ライクな操作を提供してくれる便利ツールですが、一方で 「自動パス変換」という罠が存在します。
例：
/my/path → C:\my\path
# 勝手に変換される：
# (1)ドライブレターC:がつく
# (2)スラッシュがバックスラッシュに）
特に aws, docker, kubectl など WindowsネイティブのCLI に引数が渡る場合、この変換が原因で クラッシュや想定外の動作を招くことがあります。
発生した問題・エラーログ：Segmentation faultの正体
実際のGitHub Actionsジョブの例：
- name: Upload artifacts to S3
shell: bash
env:
ARTIFACT_TOP_PATH: ./tmp
S3_ARTIFACT_PATH: s3://{target-bucket}/{target-folder}
run: |
echo "S3_ARTIFACT_PATH: $S3_ARTIFACT_PATH"
aws s3 cp $ARTIFACT_TOP_PATH $S3_ARTIFACT_PATH --recursive
エラーログ（一部抜粋）：
Segmentation fault aws s3 cp $ARTIFACT_TOP_PATH $S3_ARTIFACT_PATH --recursive
Linux runnerでは発生せず、Windows Self-hosted Runnerでのみ発生 → Git Bashのパス変換が主犯格でした。
解決方法：MSYS_NO_PATHCONVで自動変換を抑制！
対策コード：
- name: Upload artifacts to S3
shell: bash
env:
ARTIFACT_TOP_PATH: ./tmp
S3_ARTIFACT_PATH: s3://{target-bucket}/{target-folder}
run: |
export MSYS_NO_PATHCONV=1
aws s3 cp $ARTIFACT_TOP_PATH $S3_ARTIFACT_PATH --recursive
解説ポイント：
-
MSYS_NO_PATHCONV=1を設定することで、Git Bash の「自動パス変換」をオフにできます。 - Git Bash 特有の挙動を無効化し、aws CLI に正しいパスが渡るようになります。
補足Tips：PATH更新と変換無効化を前処理で自動化
より堅牢な環境整備のため、Windowsランナーかどうかを判定し、PATHを再読み込み＆MSYS_NO_PATHCONVを自動設定する前処理も有効です。
実践コード例：
- name: Tweaks for Windows Self-Hosted Runners if needed
shell: bash
run: |
echo " === Step 1: Check OS ==="
if [ "$OS" = "Windows_NT" ]; then
echo "[IMPORTANT] This is Windows runner. Adding some magic dust now"
echo " === Step 2: Invalidate Auto PATH translation ==="
export MSYS_NO_PATHCONV=1
else
echo "=== Step [SKIP]: This is not Windows runner."
fi
まとめ：WindowsランナーではMSYS_NO_PATHCONVをデフォルトで使おう！
- Git Bash のパス変換は便利な反面、ネイティブCLIツールと組み合わせるとバグの温床になりやすいです。
- 特に GitHub Actions の Self-hosted Runner（Windows） では、
MSYS_NO_PATHCONV=1をセットしておくのがベストプラクティスです。 - 最初からこの対策を入れておくことで、想定外のクラッシュを未然に防ぐことができます。
参考リンク
- Qiita記事: Git Bashでのパス変換問題とMSYS_NO_PATHCONV活用例
- AWS re:Post記事：aws s3 cp が時々セグメンテーション違反をスローする