SmartHR Advent Calendar 2023 シリーズ2の3日目です。
SmartHRでエンジニアリングマネージャーをやっている shooen です。Qiitaへの投稿は久しぶりです。
みなさん兼務はしたことありますか?兼務って良いですよね。人的リソース不足に陥っても、誰かを兼務にすることであら不思議、なんとかなりそう、何も問題はないみたいな感覚になりますよね。
組織変更に柔軟に対応でき、あらゆる課題が一瞬で解決できてしまう。
誰しもがそのあま〜い甘い蜜の香りにつられて兼務という選択肢を選んだ、経験したことがあるのではないでしょうか。
今回はそんな兼務の魅力について、つらつらと書いていこうと思います。
まあ、兼務に対する一般的な考えについてはたくさん記事がありますし、いろんな書籍でも触れられているので、ここでは自身の経験を振り返り、そこから学んだことや気づきをシェアできればと思います。
先に結論
兼務はやめとけ。
自身の兼務の振り返り
- 2023年1月から2チームのチーフを兼務(2兼務)
- 2023年7月から2チームのチーフを兼務しつつ、エンジニアリングマネージャーに就任(3兼務)
- 2023年9月から上記に加えてもう1チームのチーフを兼務(4兼務)
- 2023年10月に1チームの兼務解除(3兼務)
振り返ると、2023年は1年を通して兼務してたのですね。
SmartHRで「チーフ」という役割はいわゆるプレイングマネージャーになりますが、プレイングとマネジメントのバランスはチーフによりますし、チームの状態にもよります。プレイング:マネジメントが 5:5 の人もいれば、 2:8 や 6:4 の人もいます。
自分の場合は、周りと比べて相対的にマネジメントへの関心が高かったり兼務だったりということもあり、プレイング:マネジメントは 1:9 あるいは 0:10 という感じでした。
今回は私の経験に基づいた話になるので「マネジメント」に主眼をおいた内容となる旨、ご了承ください。
それぞれの時期を軽く振り返ってみます。
2023年1~6月 2チームのチーフ兼務(2兼務)
以前からあった分析レポート機能の開発チームに加え、1月から新たに発足したスキル管理機能の開発チームを兼務することになりました。
いずれのチームも開発スタイルはスクラムを採用しています。スキル管理チームのように0→1フェーズでスクラムってどうなの?という議論もあるかもしれませんが、実際やってみてどうだったかはイベント「0→1をスクラムでやってみた -スキル管理機能の作り方-」や「BtoB SaaS企業4社が語る、開発の現場」で発表しているので、興味ある方はイベント資料をご覧ください。
2チームに対する自身のリソースの割き具合は「分析レポートチーム:スキル管理チーム=4:6(または3:7)」ぐらいだったと思います。
スキル管理チームは、ほとんどのメンバーが一緒に仕事するのは初めてだったり、チームの開発スタイルもこれから作り上げていくというフェーズのため、チームビルディングだったり、スクラムマスターとしての立ち回りだったりと、比較的コミットする時間が多かったと記憶しています。
自身としても0→1のチームに入ることが初めてでしたし、さらに0→1でスクラムを採用することも自身だけでなく社内でも初の試みだったので、いろいろな意味でドキドキしながら仕事をしていました。
分析レポートチームについては、スクラムイベントは基本参加、たまにPRレビューをする、それ以外はピープルマネジメントやスクラムを通してのプロジェクトマネジメントをするという感じでした。
2023年7~8月 エンジニアリングマネージャーと2チームのチーフ兼務(3兼務)
7月からはタレントマネジメント領域のエンジニアリングマネージャーに就任しました。
エンジニアリングマネージャーは担当の領域に含まれる複数のチームを管掌し、担当領域や領域を跨いだ単位での組織戦略を考えたり遂行していく役割です。
管掌するチームは自身がチーフを担っている2チームとなったので、新たなチームとの関わりが生まれるということにはならなかったです(そうしなかった、というのが正しいかもしれません)。
ここからが比較的大変というか、仕事の仕方やマインドセットが難しかったですね。
どういうところが難しかったかというと、まずは単純に兼務数が多いこと。3兼務となるとリソースの配分が 4:3:3 や 5:3:2、あるいは 6:2:2 などになるかと思いますが、3や2ってまぁ少ないですよね。その中でバリューを出していくというのは簡単ではありませんでした。そして2兼務のときと比べてコンテキストスイッチのタイミングが増えるので、そこのオーバーヘッドによる時間のロスも馬鹿になりませんでした。多分10のうち2〜3はそのオーバーヘッドに持っていかれていたと思います。
マネージャーに就任したので新たなことにチャレンジしていきたい、していかなきゃという気持ちがありつつも、この状況下では当然満足の行くコミットはなかなかできず、もどかしい思いをしていました。
あとは、マネージャーとチーフだと考える粒度が異なると言いますか、チーフは基本的には「チーム」という単位で物事を考えるけれども、マネージャーは上記の通りもう少し広い範囲(私の場合はタレントマネジメント領域という単位)を対象に考えていく必要があるので、そのコンテキストスイッチが難しかったです。
メンバーから見て私は自チームのチーフであり、かつ自チームを管掌しているマネージャーでもあるので、「今チーフとして発言しているのかマネージャーとして発言しているのかわかりにくい」ということもありました。
この時期は分析レポートチーム、スキル管理チームともに、私は参加するMTGを絞ったり、ファシリテーターなどローテーションで担当するタスクはそのローテーションから外してもらうなどしました。
2023年9月 エンジニアリングマネージャーと3チームのチーフ兼務(4兼務)
9月にアジャイルコーチングユニットという新たなチームが発足し、そこのチーフを担うこととなりました。
アジャイルコーチングユニットはすんごく雑に一言で表すと「開発チームをより良くしていく」チームです。メンバーは私ともう一人の2名体制で、社内で比較的アジャイルに詳しい、関心の高い、且つ現在コーチングを学んでいるメンバーで構成しています。
アジャイルコーチングユニットについては別途会社のブログなどで紹介しようと思います。
このチームは私含めてメンバーが2人であることや、開発チームではないのでこのチーム自体がプロダクトを開発したりスクラムをやるということはないので、チームのマネジメントにはそれほど負荷はかかりません。
それよりも、チーム活動の一環として社内では初の「専任スクラムマスター」としての活動をしているため、専任スクラムマスターとしての振る舞い、スクラムマスターのステークホルダー、スクラムマスターの評価など、いろいろと暗中模索という状態で、それらについてガッツリ考えたいけれどもなかなか時間を確保できないというツラミがありました。
他チームへの関わり具合はこのタイミングでは大きくは変わっていません。
2023年10~12月 1チームの兼務解除(3兼務)
10月より分析レポートチームのチーフ兼務が解除となりました。
それにより、分析レポートチームのスクラムイベントやメンバーとの1on1がなくなり、ここで空いたリソースは主にマネージャー業務へ割くようにしました。
兼務をこなすには
1年を通して兼務をしてきたわけですが、幸いなことになんとかやってこれました。これは自身の力だけでなく周りの理解・協力・能力に助けられてきたからです。
なんとかやってこれたとはいえいろいろと試行錯誤したので、その経験を振り返り、兼務をする上で特に大事だと思ったことを残しておきます。
自分じゃなきゃ駄目なこと以外は積極的に移譲する
チーフ(あるいはマネージャー)が「やらなければならないこと」や「やった方がうまくいく」ことだったり、自分ならではのバリューを発揮できることに注力しようと意識していました。
わかりやすいところで言えばMTGで、そこに自分が参加することで他の人には出せないバリューを出せるか、というのは常に考えて、参加する・しないを決めていました。
それ以外のことはできるだけ周りに移譲しました。
少し攻めたケースだと、チームのスローガンを考えるのをメンバーに移譲したりもしました。チームのスローガンはチーフがやったほうがうまくいく側面もあると思いましたが、チームスローガン自体は前例があったのと、チームメンバーの(チームビルディング的な)能力を鑑みて「いけるのでは?」と思いチームに相談しました。
チームの理解もあり、あるメンバーが音頭を取ってスローガンを決めてくれました。
関係者と相談・調整し、認識を揃える
上述の移譲も周囲の理解を得られないとできません。理解を得ないまま自分勝手に移譲してしまうとそれは移譲ではなく放棄になってしまいます。
私は兼務が増えることが決まったタイミングで、自身がチームにおいてどこにコミットしてどこにコミットしないかをチームに相談させてもらい、意見を伺いつつタスク調整して、最終的にこれで行こうという認識合わせをしました。
これがないまま有耶無耶にコミットを減らしていくと、認識のズレが生まれてタスクがこぼれ落ちたり、余計なコミュニケーションコストが発生したり、ゆくゆくは信頼関係が瓦解していくでしょう。
強い気持ちで期限を決め、サクセッションに向け動く
この1年はなんとかやってこれたものの、ここから先も兼務でうまくやっていけるかというとその自信は全くありません。
兼務は刺激的でエキサイティングな側面はあります(これには個人差があります)が、まぁ総じてツラいです。兼務をする人だけでなく、その人の周りにもツラい思いをさせてしまいます。
それを乗り切る一つの要素が「兼務がいつ終わるか」という兼務期間のゴールを設定し、そのゴールを死守できるようサクセッション(継承)を進めることです。
ゴールが見えないマラソンはツラいです。でもゴールが見えているとそこまでは頑張ろうという気になれますよね。
あとはそのゴールが近づいてきたときにゴールが遠くに行ってしまわないよう、次誰にバトンを渡すかを決めておきましょう。
そして、そのゴール(可能であれば後継者も)を周囲に共有しておきましょう。「いついつには私はいなくなります」「いついつにはチーフを誰かに交代します」というように。
兼務が当たり前の状態ではなく、あくまで一過性のものであることを自身も周りも強く認識することで、意識を兼務解消後に向けることが多少なりともできます。
そもそも兼務を発生させないようにするには
兼務をこなすためにということでつらつらと書いてきましたが、そもそも兼務しないで済むならそれが一番です。
兼務を発生させないために何ができるかをざっくりと書いてみます。
採用
兼務という選択肢を取ることになる大きな要因の一つは「人手不足」です。
今に最適化するのではなく少し先を見据えた配属を考え、それを実現するための採用戦略を取りましょう。(言うは易し行うは難し...)
育成
いきなり「マネジメントやって」と言われて「はい、やります」と言える人はなかなかいません。
まずはマネジメントの仕事の透明性を上げたり、マネジメント経験のキャリアへの影響をちゃんと伝えていったりすることが大事だと今は痛感しています。
そしてただ伝えるだけでなく、マネジメントを口伝ではなく体系的に育成する仕組みを整えていく必要があるでしょう。
就任した瞬間からサクセッションを考える
文字通りです。チームやマネージャーに就任した瞬間から後任者を考えましょう。
サクセッションには時間がかかります。早め早めの行動を。
経験的に、自分が就任してから1年経っても後任者候補がいない状態はマズイと思ったほうが良さそうです。
さいごに
それでは、よい兼務ライフを!ノシ