はじめに
みなさん 1on1ミーティング していますか?
※また、様々な1on1があると思いますが、ここでは組織上の上司(もしくはメンターとなる人)と部下(もしくはメンティー)が行うものにフォーカスして話していきます。
組織のマネジメントにおいて1on1が大切である、という事は言われて久しいですね。
おそらく、1on1の導入されていない企業においても、「1on1? なにそれ?」ということは減ってきているのではないでしょうか?
とは言え、この1on1ミーティングについての課題感もよく聞くところで、
- 1on1する側、される側ともに何を話していいのかわからない
- なんだかやっているが変化を感じない
- しっかりと本音で話せていない気がする
- なんだかマンネリ化してきている
- これでいいのかわからない
- とにかく困っている
など、様々な疑問を持ちながら行っていることも多いのではないでしょうか。
自分も定期的に1on1ミーティングをする側、される側、であるので、せっかくの時間を効果的なものにすべく、以下の1on1本たちを改めて読んで1on1を学びなおしてみました。
具体的な質問例やトークスクリプトが書いてある本がほとんどだったので、一冊くらい手元に持っておくと役立つのではないかと思います。
※それぞれの本の感想については触れません。
※Amazonのリンクを貼りますので、是非レビューを見てみてください。
- シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング―
- ヤフーの1on1 - 部下を成長させるコミュニケーションの技法
- 1on1ミーティング - 「対話の質」が組織の強さを決める
- 実践! 1on1ミーティング
- 部下が自ら成長し、チームが回り出す1on1戦術 - 100社に導入してわかったマネジャーのための「対話の技術」
- 職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門 ※これは1on1の本ではないですが定期的に読み直す好きな本です
いくつかの本で共通で書かれているものも多く、上記を読んでわかったこと + 自分自身の経験も交えながら理解を以下にまとめていこうと思います。
気になった方は実際に本を読んでみてください。
なぜ1on1ミーティングなのか?
VUCA1時代では、いわゆる「上意下達」のコミュニケーションでは成果がでにくくなってきました。
(もちろん業種にもよりますが)Webにおけるプロダクト開発においても、1年前に詳細設計まで作った計画をそのまま実行していくことは少なく、UXリサーチ2などを行いながらMVP3を作って適宜修正していくことが多くなってきていると思います。
誰も正解のわからない中、状況に応じて能動的に考え行動できる人間、「自律型人財」が必要と言われています。
何もなくともどんどん行動できる人は、思う存分やってもらえば良いと思います。ただ、誰もがそうとは限らないので、その行動を引き出すためにも、上司と部下で対話を重ねて行く必要があります。
これはダニエル・キム博士の提唱する「成功循環モデル」4をうまく回すためにも必要なことです。
成功循環モデルにおいてグッドサイクルは、 関係の質→思考の質→行動の質→結果の質 とつながった循環をしますが、「関係の質」を向上させる前に「結果の質」からサイクルを始めるとバッドサイクルになってしまいます。
もし、あなたが自組織のメンバーに対して、以下のように思っていたとしたら危険信号であり、マネジメントの「対話不全」によるものが多いかもしれません。
- 上司と部下の間に信頼関係がない
- 主体性のないメンバーばかり
- 問題が起こっても自分で解決できない
- 学びが活かされず、何度も同じ失敗をする
- 期待をかけても成長しない
それらを1on1ミーティングを有効に活用して行くことで個人をとおして組織を良くしていきます。
1on1ミーティングの目的
ここは本によってもいろいろな記載がありましたが、
「短期の成果」だけではなく「中長期的に」メンバーがいきいきと輝いて、本質的・永続的に成果が出続ける関係の質、思考の質をつくること5
を大きな目的としながら、以下の4の段階、フェーズを経ながら**「自律型人材」への成長を支援していく** という旨の記載が多かったです。
A: 上司と部下の間の信頼関係を作る
B: 部下の経験学習を促進する
C: 部下のモチベーションを高める
D: チャレンジを支援する
本によっては、「意思決定に必要な情報を得る」などもう少し実務に寄った記載もありました。
私自身も上司側として実施する1on1ミーティングでも、足元のPJの進捗や判断、といった話題が扱われることもありますが、組織として自律的に行動できる人を増やしていくためにも、大きな目的の部分を厚めに扱っていったほうがいいなと、改めて感じました。
1on1ミーティングを妨げる壁たち
どの本も「浸透は難しい」という文脈がありました。なので、もしみなさまの組織でうまくいっていないパターンがあっても「それは誰もがぶつかる可能性がある壁」ということです。
時間が作り出せない
これが一番多いようです。目的や1on1ミーティングの結果どうしたいか、の共有が上司と部下の間で共通認識されていないため起こってしまいます。
これを解消するために良いエクササイズだなと思ったのは、**「実施者が自分の言葉で1on1ミーティングの目的を語ってみる」**というものです。普段から1on1ミーティングを実施している人でもパッとすぐにはでてこなかったりするなと思いました。
不要だと思っている
これは、「そもそも実施しなくていいや」というパターンですね。短期、中長期で組織を見たときに課題となる、なりそうなものがなかった場合には、不要ということもあるかもしれません。または別の形で1対1でよく会話ができているということもあるかもしれませんね。
ここは、1on1ミーティングのフォーカスを絞ることで意義が見えてくることもあると紹介している本もありました。
タスクを4つの象限にわけて、
第一象限:緊急で重要なもの
第二象限:緊急ではないが重要なもの
第三象限:緊急だが重要ではないもの
第四象限:緊急でも重要でもないもの
としたとき、普段後回しにされがちな第二象限を重点的に話し合う、などの決めを行うことで「そこを話す機会は少なかったね」と意義が生まれる場合はあるなと思いました。
テーマがみつからない/やったはいいがあまり広がらなく段々とやらなくなっていく
基本的にはメンバーが、話したいこと、上記の第二象限の話題を中心的に話す、などがありますが、以下のようなテーマを事前に出しておくと良さそうです。
テーマ例
目的部分C(部下のモチベーションを高める)へのテーマ
- 現在のモチベーションについて
- メンバー自身が動機づけられる働き方やこだわりたい価値観について
- メンバーを観察していて上司が感じた変化、成長した点について
- 現在担当している業務の、本人のキャリアや人生における価値について
- メンバーが本当にやりたいこと、強みについて
目的部分D(チャレンジを支援する)へのテーマ
- 本人がチャレンジしたい中長期の目標や、身につけたい能力・スキルの取得などについて
- 積みたいキャリアや将来のことについて
- メンバーのメンバー育成に関する課題について
- ミッションやビジョン、戦略への理解・関わり方について
- 現在のチームをもっと良くするための方法について
- 人生のミッションについて
経験学習
1on1ミーティングの本を読んでいると、必ずといっていいほど「経験学習」がでてきます。
「経験学習」という言葉は、主に人材育成の領域で用いられており、自分が実際の経験したことから、それを省察することでより深く学びを得るという考え方です。
組織行動学者のデービッド・コルブはこうした学びを、体系化された知識を受動的に習い覚える知識付与型の学習と区別し、「具体的経験→省察的観察→抽象的概念化→能動的実験」という4つのプロセスからなる成る「経験学習モデル」理論として提唱しました。
この、経験学習モデルのサイクルを回していくことによって、学びを獲得していくというものです。
1on1ミーティングではこの経験学習のモデルを活用しながら、対話によって具体的経験から内省を引き出し、気づき(抽象概念化)を得てもらってと行動につなげてもらう(能動的実験)ということを実施していきます。
1on1ミーティングへの事前準備
自分と相手のタイプを把握してみる(ソーシャルスタイルの活用)
ソーシャルスタイルとは、1968年にアメリカの産業心理学者であるデビッド・メリル氏が提唱したコミュニケーションの理論のことで、「人の行動の傾向、コミュニケーションのとり方には4つタイプに分類できる」いうものです。
もちろん、あくまでも大まかな傾向を参考程度に、というところですが、自分のタイプと相手のタイプを知ることで特性に応じたコミュニケーションを取りやすいという良い点があります。
「この人は〇〇タイプだから△△のはずだ!」と決めつけてかかるのはよくないですがうまく活用することで相互信頼の獲得に寄与するでしょう。
4つのタイプとは、Driving(ドライビング) / Expressive(エクスプレッシブ) / Amiable(エミアブル) / Analytical(アナリティカル) です。
それぞれの詳細は触れませんが、ウェブ上にはソーシャルスタイルの診断6も数多くあるので、試したことない方は是非ググってみて自分のソーシャルスタイルを把握してみてください。
気持ちを落ち着ける
これは忙しい方だと意外と難しいかもしれません。
上司の機嫌が悪いと、メンバーは萎縮して本音で対話できなくなってしまいます。
1on1ミーティングを良い時間にするためにも、気持ちを整えて望むことが大切です。
これは私の実体験ですが、1分間の瞑想なども有効だと理解しているのでしっかりと気持ちを落ち着けた上で1on1ミーティングに望むことを心がけたいと思います。
1on1ミーティングの実施
実施していく上で大きな流れは、以下。
- ウォームアップ
- テーマ決め
- 話を聞く
- クロージング
ウォームアップ
1on1ミーティング開始時の入り口。最近の出来事などや感謝などの話題を切り出していきます。
いわゆるアイスブレイクです。
直近の業務内容などに絡ませることができるとレコグニション7にもつながるのでより良さそうです。
テーマ決め
基本的には、メンバーに選んでもらいます。
ここで話を引き出すときはオープンクエスチョン8で聞いていくのがいいとありました。
オープンクエスチョン:「何から話しましょうか?」
クローズドクエスチョン:「話したいテーマはありますか?」
また。厳密なプランでなくてもいいですが、その日の1on1ミーティングが終わったときにどうなっていればいいか?というゴール設定をておくことも、相手の心理的安全性を確保するという観点でも有効です。
ゴール設定の例
- 「課題を言葉にして、次の一歩を決めれればいい」
- 「もやもやをすべて吐き出す」
私自身、クローズドクエスチョン側の質問を使ってしまうので、オープンクエスチョンのほうも試していきたいなと思いました。
話を聞く
文字通り話を聞いていきます。ここで上司側の話す量の目安は2割と言われています。
相手に質問をしたときに、普段考えてない質問であればあるほど返ってくるのには時間がかかります。。
沈黙を大切にするという心構えをしましょう。
沈黙を大切にする、は本当に相手のタイプによってはとても考えてくれる人もいるので意識しないとこちらから「例えばー」という感じで話を勧めがちになってしまうなと思いました。
また、「話す量の目安は2割」わかっているものの、つい話し過ぎてしまいます。
改めて気をつけようと思いました。
クロージング
最後の数分で実施します。
気づき、学びを得た上で次回につなげていきましょう。
以下のようにクロージングの例がのっていました、
- 「まだ途中ですが、そろそろ時間ですね」
- 「ここまで話してみたところで、どんなことに気づきましたか?」(気づきの言語化)
- 「そんなことに気づいたんですね、それを踏まえて、小さな一歩、何から始めていきましょうか?」(行動)
- 「いいですね!それ、いつからやっていきましょうか?」(期日)
- 「ぜひやってみてください。今日の感想はどうでしたか?」
両名合意のもとだったら良いですが、上司の都合でミーティングの終了を伸ばすのは避けましょう。
1on1ミーティングを実施していく上で大切なスキル
何よりもまず、相手と向き合う姿勢(スタンス)を大切として
-
ティーチング
-
コーチング
- 傾聴
- 質問
- 承認
-
フィードバック
を実施していきます。
この、ティーチング、コーチング、フィードバックの3点は複数の本に記載されていた1on1ミーティングの重要な要素です。
基本の「スタンス」で大事なポイント
相手の可能性を信じましょう。その上で、相手を知りたい、興味があるという姿勢で話を聞いていきます。
その際には相手の変化を見落とさないようにする(リモートでの1on1ミーティングでも画面onなので表情がわかるように)
相手にも安心できる、何でも話していい場であると思ってもらえることが大切です。
「メンバーがなかなか話してくれないんだよね」というパターンは、スタンスや場作りに問題が生じている可能性があります。
コーチング
コーチングは特にどの本もボリュームが多く、内容も深いのでここには全て書ききれないですが、特に以下の点は気をつけていきたいなと思った所です。
相手もなにかに悩んでいるときは「自問」を繰り返しているものです。相手がしていない「自問」をニュートラルな立場で質問するようにしていきましょう。
特に注意なのが、「コーチが言いたいことを言わせる」のはコーチングではないということです。
※質問型ティーチング、とも言える。
この部分は私自身も気をつけないといけないなと思った部分です。
傾聴
- 相手の話を評価、判断、否定せずに最後まで聞いて受け止めましょう
- 相手が明らかに間違っていても、言い訳を聞いて受け止めてから、間違いを伝えます
- 「そんなふうに思っていたんだね」→「でも、これは〇〇という理由で違うと思うよ」
- 自分の成功体験を語るのは避けましょう
- 話しやすくする「返し」を使しましょう
- 相槌、頷き、繰り返し、要約、言い換えの5つです
- 「他には?」「それで?」「というと?」などは、相手の「真意を引き出す」のに有効な質問です
- 言葉だけでなく、相手の思いや気持ちも受けとめましょう
- 話し方やトーン、話している表情のサインも受け止め、普段との違いなどをみて、共感を示しましょう
質問
問題そのものではなく、問題を抱えている相手にフォーカスしましょう。
相手に話してもらうことで、オートクライン効果(自分の発信によって、自分の潜在的な考えや想いに気づくこと)を引き出します。
- 質問によって相手の答えを規定しないようにしましょう
- 基本メンバーは上司に喜んでもらおうとしてしまいます
- 質問には相手のための質問と自分のための質問がありいます
- 質問されたほうが、自分の頭を整理できたりするのが良い
- 「この問題を抱えていま、どんな気持ち?」「乗り越えたら何が手に入る?」
「話をしていて思ったのですが、このようにしたいと思います」といってもらうことは一つのゴールです。
業務に関する問題解決型の対話だと、上司が、具体的なところを掘り下げていって、こうすればいいのではないか?という示唆、指示をする、となりがちなので気をつけましょう。
相手の視点を変えるテクニック
- 時間軸を変える
- 「今」は難しい問題、このプロジェクトの3年後のゴールはどこだっけ?
- そこから見たときの今の問題はどんなふうに見える?
- 立場を変える
- 「相手の〇〇さんの立場に立ってみたら?」というと視点が変わることもある
- 制約条件を取り払う
- 予算、納期。人員。今までのやり方
- 「ではそれがなくて、何でもできるとしたらどうする?」
- 質問によって、見え方、捉え方がかわると行動の選択肢も変わる
承認
認めるのは、相手の存在、人となりを認めましょう。 成果ではなく、プロセスを褒める。成果は外側、プロセスは内側(その人そのもの)となります。
褒めるメッセージは 「私はこう見てますよ」というI(アイ)メッセージで伝えましょう。
自己承認と他者承認において、自己承認のオイルの話がとてもわかり易かったです。
- 自己承認のオイルが重い
- 他者承認のオイルは軽い
- 自己承認のオイルでコップが満たされると他者承認はいらなくなる
フィードバック
ここはフィードバックのフレームワークSBI など知らない点もあったので参考になる箇所が多かった。
フィードバックのフレームワークSBI
- Situation どのような状況で
- Behavior どのような言動が
- Impact どのような影響を周囲に与えているか
の頭文字をとってSBI9。
例:「先週の戦術立案ミーティングでの〇〇さんの△△という発言は、随分視座が上がったように感じました。とても頼もしいです」
フィードバックのプロセス
1.許可を取る
- 「感じたことをフィードバックしてもいいですか?」
2.SBIでフィードバックする
- Iメッセージでのフィードバックに気をつけましょう
- 人づてに聞いたことも、それを聞いて自分がどう思ったか?を伝える
3.相手の見解と認識を確認する。(一方的なフィードバックにしない)
- 「そのことについてどうおもいますか?」
必ず「期待」→「要望」の形で伝えましょう
ネガティブフィードバックをする際は必ずフィードバック・シナリオをつくってしっかり準備してからフィードバックすることが大切です。常に特に相手の人格を尊重しながら伝えましょう。
その他:1on1ミーティングを実施する際に
最初は質問リストを手元においてやるのがいい
よく使うような質問リストは、もともと準備しておいたほうがいいとあります。
理由1
慣れている人なら問題ないとのことですが、「質問を思い出しながら質問する」という形だと質問を思い出すことで相手の話を聞き漏らしてしまう可能性があるからです。別のことを考えていることは相手にも伝わります。
理由2
質問集を見ないでやると、普段よく使っている思考で慣れている質問になってしまうためです。
得てして上司の立場だと、業務上「普段慣れている思考と質問」は、情報収集、仮説検証、アクションを訊く質問、誘導尋問、原因論型の質問になってしまいがちです。
コーチングも体得スキル、最初、なれるまでの間は補助輪を使いましょう、という話でした。
おわりに
2022年も終わるので、今までの振り返りも兼ねて割と頻繁に実施している1on1について学びなおしてみました。
それぞれの本でも共通して言っている所も多く、基本やっていることとあまりずれてないながらも、あらためて型通りに立ち返ってみよう、だとか、この辺の質問やテクニックは使ってみようかな?とか勉強になることが多かったです。
個人的なメモのようなものですが、何か少しでもお役に立てれば幸いです。ぜひ皆様も興味が湧いたら本も読んで新たな気持ちで2023年も1on1していってみてもらえばいいなと思います。
今年もありがとうございました。
-
「Volatility(ボラティリティ:変動性)」「Uncertainty(アンサートゥンティ:不確実性)」「Complexity(コムプレクシティ:複雑性)」「Ambiguity(アムビギュイティ:曖昧性)」の頭文字を取ったもの。参考 ↩
-
上司、部下、チーム内の「関係の質」を高めることで、仕事に前向きに取り組めるようになり「思考の質」が向上。自発的に動くことで「行動の質」が向上、それら行動することで「結果の質」が高まり成果が得られる。それは関係の質を更に強固にして、循環していく。というものです。参考リンク ↩
-
様々な目的があったなかで、企業としての成果を短期、中長期の時間軸で語っていてこれが一番しっくりしました。技術的負債に関する観点も似たようなところがあると思っています ↩
-
[部下や上司へのフィードバックに有効な「SBIモデル」とは?]( ↩