PdMの要件定義はなぜ詰まるのか?AI導入前のリアルな実務と構造的課題
cotoboxの長島です。
先日、社内Slackにこう投稿してみました。
反応は…リアクションがひとつだけ。...おかしい。
どうやら「こんに知財!」の社内認知度は、かなり限定的でした。
知財領域を扱っているとはいえ、実は私自身、知財の知識も経験もまだ浅いです。
それでもPdMとしてプロダクトを企画・開発していく以上、知財との向き合いは避けられません。
この程度で負けるわけにはいかないのです。
AI駆動開発というと、AIにコードを書かせるイメージが先行しがちです。
しかし、PdMの業務——特に「要件定義」はどう変わるのか?
本記事では、AI導入前の“詰まりどころ”を整理しながら、なぜPdM業務こそAIと相性が良いのかを実体験から振り返ります。
要件定義の進め方:これまでどうやっていたか?
私たちは、次のような手法で要件定義を進めてきました。
- BRD/PRDの作成
- ユーザーインタビューやヒアリング
- 業界構造や競合の調査
- ペルソナの設定、ユースケースの洗い出し
- 社内の意見収集と合意形成(CS、営業、エンジニア、経営層)
ちなみに私、ペルソナづくりってちょっと苦手です。
あれって経験と偏見の塊みたいなものができてしまいがちじゃないですか?
AI、というかLLMを使うとバイアスがかかると言われます。ではどっちみちダメなのか?
しかし少なくとも適切にプロンプトを設計すれば、一個人がつくるペルソナよりはよっぽど多様性が担保されると思っています。
このあたりは、また別の機会にじっくり考えてみたいと思います。
これまでどこで詰まっていたのか?
以下のような「詰まりポイント」が多く存在しました。
- 情報のインプットが遅い/不足している/主観に寄りすぎている
- 調査結果や知見が分散しており、再利用しづらい
- 仮説設計が属人化しやすく、暗黙知に頼ってしまう
- 要件文書の構造化に時間がかかり、レビューが遅れる
- チームに共有しても、反応やフィードバックが得づらい
…そういえば、初めて「拒絶理由通知」という単語を見たとき、
「え、誰に拒絶されたの?」と本気で身構えました。
文脈を知らないと、知財用語ってなかなか攻撃力ありますよね。
結果、何が起きていたか?
- 初期段階で仕様が曖昧なまま進行してしまう
- 後工程での大幅なやり直し(「これじゃなかった」問題)
- 開発との距離が広がる(「なんでこれ作るの?」問題)
- 仮説が浅く、リリース後のインパクトが弱い
- 経営層や他部門との目線合わせに時間を要する
振り返って見える構造的な課題
改めて見直すと、問題は個人のスキルや努力ではなく、構造的なものでした。
- 情報の構造化・可視化を支援するツールがなかった
- 複数の仮説を整理・検証するテンプレートがなかった
- 「問いを立てる」工程が属人化しており、再現性がない
- 要件定義に関わるナレッジが分散し、横展開できなかった
PdMとしての実体験とAIとの向き合い方
こういった属人性の問題、私自身も実務の中で経験してきました。
たとえば、PdMの役割を担う人が社内や事業部単位で一人しかいないときは、属人性があっても表面化しにくいものです。
ところが、担当が交代すると、急に情報の粒度や要件定義の深さが変わる。まさに属人化の影響がそのまま現れる形でした。
もちろん、そのレベルの属人化は、ドキュメントのテンプレートやレビューの流れを整備すれば、ある程度は解消できます。
一方で、AIを使ったとしても、使い方や入力がぶれれば、やはりアウトプットもぶれてしまうのは同じです。
私が考える AI駆動開発 とは、「AIに任せればいい」という話ではありません。
むしろ、本来あるべきプロセスを、AIの力で加速させることが本質だと考えています。
たとえば、ChatGPTを使って要件定義の文章を通読させ、論理の飛躍や矛盾を指摘してもらうことで、自分だけでは気づきにくい曖昧さを洗い出すことができました。
また、v0を活用して簡易的なワイヤーフレームを作成し、開発やCSとの合意形成を一気に早めるといった使い方も非常に効果的でした。
こうしたツールの使い方は、決して特別なことではなく、経験のあるPdMであれば自然に取り入れている方も多いと思います。
ただ、大量のデータを処理するとき、手作業でのチェックが得意でもExcelやPythonを使う方が効率的なように、 要件定義やUI/UXの方向性を整理するプロセスにおいても、生成AIは“道具”として非常に相性が良いと感じています。
(ここであえて「生成AI」と言ったのは、今後「予測AI」の話も触れていく予定だからですが、それはまた別の機会に。)
VUCAの時代
加速、加速としつこいですが、なぜそんなに生き急ぐ必要があるのでしょうか。
VUCAという言葉があります。この変化が激しく、不確実で、複雑で、曖昧な世の中。速さは武器になります。
開発にもスピード感が求められます。ダラダラ作っていると、出来上がった頃には要件がズレていることも珍しくありません。
ここ数年、開発プロセスはAIの浸透もあって大幅に加速したと思います。要件定義もそのスピード感に負けない速さが求められると考えています。
次回予告
次回は、これらの課題に対して
AI(ChatGPT、Gemini、v0 など)をどのように活用して乗り越えようとしたのかをご紹介します。
実際に使ったプロンプトや成果物、うまくいかなかった点も含めて、リアルにお届けします。
「PdMがAIをどう使っているのか」 に関心のある方は、ぜひフォローして次の記事もご覧いただければと思います。
今回も「こんに知財!」には社内で誰も乗ってくれませんでしたが、
知財への理解とプロダクトへの向き合い方は、着実にアップデートしていくつもりです。
そして次回も、懲りずに知財ネタをひとつ持ってくる予定です。
(そのうち、Slackでリアクションが2個になる日を夢見て…)
それでは、また次の記事で。