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Supershipの名畑です。2024年夏アニメが始まりましたが異世界スーサイド・スクワッドがエンタメに徹していて見ていて楽しい。ハーレイ・クインはやっぱり最強。

はじめに

Googleによる生成AIモデルGemmaの後継であるGemma 2が先日リリースされました。

 2月に発表した「Gemma」は20億パラメータと70億パラメータの2サイズでの展開だったが、Gemma 2は90億パラメータと270億パラメータの2サイズ。
 270億パラメータ版は、「そのサイズクラスで最高の性能を発揮し、2倍以上の規模のモデルに匹敵する性能を実現」するという。90億パラメータ版でも、米Metaの「Llama 3」の80億パラメータ版などを上回る性能を示すとしている。

参考:Google、オープンな生成AIモデル「Gemma 2」リリース 270億パラメータモデル追加 - ITmedia NEWS

Gemma 2を手元のMacBook(M2)で動かした過程を記事に残します。

2024年2月に書いた記事「Googleによる生成AIモデル「Gemma」をMacBook(M2)で動かしてみた」の最新版です。

コードはすべてPythonです。

私の環境

PCはMacBook Pro(Apple M2 Proチップ)です。
OSはmacOS 14 Sonomaです。

acceleratetorchtransformersを入れておきます。

$ pip install accelerate torch transformers        

私の環境でのバージョンはそれぞれ0.32.12.3.14.42.4でした。

$ pip list | grep -e accelerate -e torch -e transformers
accelerate         0.32.1
torch              2.3.1
transformers       4.42.4

モデル

gemma-27b(270億パラメータ)とGemma 9b(90億パラメータ)があります。そしてそれぞれにinstruct-tuned(指示調整)されたものが用意されています。

本記事ではgemma-2-27b-itを用いて話を進めていますが、初回の実行時は約54.5GBのモデルをダウンロードする必要があります。さらにコードの実行にも時間がかかります。

そのため、動かすこと自体が目的であればgemma-2-9b-itで進めていただければと思います。
各コードに2箇所あるgemma-2-27b-itgemma-2-9b-itに置き換えるだけです。
コード例も本記事の最後に記載しております。

ライセンスの認証

今回はHugging Face経由でモデルを入手して実行します。
そのためにまずはHugging Faceのアカウントを作成します。

GemmaGemma 2は同一権限のため、Gemmaですでに権限付与済みの場合はこの手順は不要です。また、モデル毎に権限を取得し直す必要はありません。

アカウントを作成してログイン後、先述したモデルのいずれかのページに行くとGemmaへのアクセスのためのライセンス承認が求められます。

gemma_1.png

Acknowledge licenseを押します。

gemma_2.png

Access Requestのページに遷移しますので、フォームに名前等を記入していきます。
規約も読んで最後のAcceptを押します。

モデルのページに戻ると、以下のようにアクセス認証が得られたことが確認できます。

gemma_3.png

アクセストークンの作成

モデルをダウンロードする際のユーザー認証のためにHugging Faceのアクセストークンを作成します。

Hugging FaceSettingsに移動し、さらにAccess Tokensに移動します。

ここでNew Tokenを押します。

gemma_4.png

Nameはわかりやすくgemmaとしました。Roleは読み取りだけなのでreadにしました。

トークン情報をハードコーディングするのはセキュリティ的によろしくないので、自環境の環境変数にセットしました。

まず設定ファイルを開きます。私の環境ではzshrcです。

$ open ~/.zshrc

生成したアクセストークンの値を記録します。
私はHUGGING_FACE_TOKENという名前にしました。

export HUGGING_FACE_TOKEN=ここにアクセストークンの値を書く

PYTORCH_ENABLE_MPS_FALLBACKの指定

今回のコードをそのまま実行すると、以下のエラーが出ます。

NotImplementedError: The operator 'aten::isin.Tensor_Tensor_out' is not currently implemented for the MPS device. If you want this op to be added in priority during the prototype phase of this feature, please comment on https://github.com/pytorch/pytorch/issues/77764. As a temporary fix, you can set the environment variable PYTORCH_ENABLE_MPS_FALLBACK=1 to use the CPU as a fallback for this op. WARNING: this will be slower than running natively on MPS.

要は「MPS(Metal Performance Shaders)だと行えない処理があるが、その際はCPUを使うという回避策があります。その代わりに遅くなりますが」というものです。

指示通り、環境変数として以下の指定をしておきます。

export PYTORCH_ENABLE_MPS_FALLBACK=1

コードの先頭に以下を書くことでも回避できるのですが、Pythonのドキュメントに「On some platforms, including FreeBSD and macOS, setting environ may cause memory leaks.」という記載があるので避けておきました。

import os
os.environ["PYTORCH_ENABLE_MPS_FALLBACK"] = "1"

サンプルコードの実行

サンプルコードを動かしてみます。

サンプルコードから以下4点を変更しています。

  1. アクセストークンの取得と指定する。
  2. MacBookGPUを使用するためにdeviceとしてmpsを指定している。
  3. そのまま実行すると以下のwarningが出るため、max_new_tokensを指定する。今回は50としました。これらの値について詳しくはドキュメントをご覧ください。
    • UserWarning: Using the model-agnostic default max_length (=20) to control the generation length. We recommend setting max_new_tokens to control the maximum length of the generation.

コードは以下です。公式サンプルコードからの変更箇所はコメントに記載済みです。

from transformers import AutoTokenizer, AutoModelForCausalLM
import torch
import os  # 追加

hf_token = os.getenv("HUGGING_FACE_TOKEN")  # 追加
tokenizer = AutoTokenizer.from_pretrained(
    "google/gemma-2-27b-it",
    token=hf_token  # 追加
)
model = AutoModelForCausalLM.from_pretrained(
    "google/gemma-2-27b-it",
    device_map="auto",
    torch_dtype=torch.bfloat16,
    token=hf_token  # 追加
)

input_text = "Write me a poem about Machine Learning."
input_ids = tokenizer(input_text, return_tensors="pt").to(torch.device("mps"))  # toのパラメータを変更

outputs = model.generate(**input_ids, max_new_tokens=50)  # max_new_tokensを追加
print(tokenizer.decode(outputs[0]))

モデルに対して「Write me a poem about Machine Learning.」という文字列を渡しています。
訳すと「機械学習についての詩を書いてください」ですね。

前述の通り、初回はモデルのダウンロードが必要となります。

結果は以下でした。出力長がmax_new_tokensの値に従うため、途中で切れていますね。

In realms of data, vast and deep,
Where patterns hide and secrets sleep,
Machine Learning, a beacon bright,
Unveils the truth with digital light.

Algorithms, like curious minds,
Explore the data, seeking finds

日本語に翻訳すると以下です。

データの領域、広く深い
パターンが隠れ、秘密が眠る場所で
機械学習は明るい灯台のように
デジタルの光で真実を明らかにする

アルゴリズムは好奇心旺盛な心のように
データを探り、発見を求めて探求する

前回記事同様の感想になりますが、詩的、かな。

会話形式の入力プロンプト

公式の説明を参考にし、入力文の指定箇所を以下のように変更します。

# input_text = "Write me a poem about Machine Learning."
input_text = """
<start_of_turn>user
Write a hello world program<end_of_turn>
<start_of_turn>model
"""

モデルに対して「Write a hello world program」という文字列を渡しています。
Hello Worldのプログラムを書いてください」ですね。

本当はサンプル通りにchat_templateを用いた方がいいのでしょうが、以下のエラーが出たのでinput_textにすべて指定しました。

ValueError: Can't infer missing attention mask on mps device. Please provide an attention_mask or use a different device.

chat_templateの形式についてはtokenizer_config.jsonに書かれているので、よければ合わせてご参照ください。

結果は以下です。

print("Hello, world!")

This program will print the text "Hello, world!" to the console.

Explanation:

  • print() is a built-in function in Python that displays text on the screen

きちんとHello Worldのプログラムを書いてくれています。
解説もセットです。

日本語の入力プロンプト

input_text = """
<start_of_turn>user
日本の都道府県を5つ教えてください<end_of_turn>
<start_of_turn>model
"""

日本の都道府県を5つ教えてください」という問いかけをしてみました。

結果は以下です。終端を示す<end_of_turn>と<eos>は省いています。

日本の都道府県を5つですね!

  1. 東京都
  2. 北海道
  3. 大阪府
  4. 神奈川県
  5. 愛知県

どうでしょうか?

実行回数が少ないので単純に比較できるものでもないでしょうが、前回記事における7bと2bの回答と違って正しいです。

gemma-2-9b-itでの実行

9b-itで同じことを行ってみました。ちなみにモデルの容量は約18.5GBでした。

コードの変更箇所は以下の通りです。2行あるgemma-2-27b-itgemma-2-9b-itに変更しています。

tokenizer = AutoTokenizer.from_pretrained(
    # "google/gemma-2-27b-it",
    "google/gemma-2-9b-it",
    token=hf_token
)
model = AutoModelForCausalLM.from_pretrained(
    # "google/gemma-2-27b-it",
    "google/gemma-2-9b-it",
    device_map="auto",
    torch_dtype=torch.bfloat16,
    token=hf_token
)

結果は以下でした。

日本の都道府県を5つ紹介しますね!

  1. 東京都 (東京)
  2. 大阪府 (大阪)
  3. 愛知県 (名古屋)
  4. 北海道 (札幌)

またmax_new_tokensの値が小さいので途中で切れてしまいました。()内がなにを意味するかはわかりませんが、4つ目までは正解です。

最後に

この環境で動かすにはかなり重い処理ではありますが、手元でこの高品質モデルを動かせるありがたさを強く感じます。

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