はじめに
新入社員との1on1で法改正対応がどういうものかを質問されて、そういえばこんな記事を以前書いたなと思い出しました。
ただ、初学者にはそもそも業務システムに法律がどう絡んでくるのか?といったもっと根本的な話がイメージできないと思ったので、本記事でその辺りの話をまとめます。
法改正対応が必要な業務とは?
説明のための雑な分類ではありますが、業務はざっくり以下の2つのように分類できます。
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要件が法律によって厳格に定義されておらず、裁量が大きい業務
- 例:給与の額や通勤手当のルールなど (厳密には最低賃金の規定や非課税上限額など関連する規定は存在します)
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法律によって要件が (上記と比較して厳格に) 決められている業務
- 例:社会保険料の定時決定・随時改定、年末調整など
本記事では後者のことを「法定業務」と呼び、法定業務のシステム化と法改正対応が必要な理由について概要を述べます。
なぜ法改正対応が発生するのか
法律が要求・要件の前提条件となる
一般的にシステムを構築するときは、実装に入る前段階として以下のようなことを定義すると思います。
(要求定義とか要件定義とかいうやつ)
- システムを用いてどのような業務を達成したいか
- そのためにどのような機能が必要で、どのような業務運用を実施するか
法定業務をシステム化するということは、これらの前提条件が法律によってある程度固められてしまうということです。
結果として、機能の実装方針としては以下のようになります。 (これまた雑な分類ですが…)
- 法律要件に合わせて作りこまれた機能を実装する
- 法定業務以外でも利用できる汎用的な機能で、法定要件を満たす運用も可能なように実装する
法改正によって、その前提条件が変化する
このように、システムの要件が既存の法律を前提として定められているため、法改正によってシステムの機能や業務運用に対する要件の前提条件が変化するというのが法改正対応が生じる理由です。
法律の変更による影響箇所を除いては既存運用を担保しつつ、改正後の法律を満たすよう仕様を改めなければなりません。
乱暴な例えですが、商品の価格から消費税込みの金額を計算する機能があったとして、元々の仕様が「価格の1.08倍を返す」という仕様だった場合、消費税が10%に改定されたタイミングで「価格の1.1倍を返す」という仕様に改定しなければいけないわけです。
※ 前節の2.の場合は、システム的な対応なしに法改正後の運用を担保できることもあります。
(先の消費税の例えだと、古いシステムでもなければ税率をパラメータとすることで対応しているのではないでしょうか。たぶん。)
まとめ
- システム化対象となる業務には、要件が法律によってある程度厳格に定まっているものとそうでないものがある
- 法定業務をシステム化する場合、その法律がシステムの要求・要件の前提条件となる
- 法律が変わることでその前提条件が変化することとなるため、法改正対応が必要