たまーにしか使わない知識ってあるじゃないですか。そういうのは大抵、いざ使おうとすると全部忘れているのが常であって、それに対する有効な対処策は忘れないうちに文書に書いてネットに上げることです。というわけで今回のお題はOSPFのエリア!
本稿ではIPv4用のOSPFv2 (RFC2328, Google翻訳) を扱います。IPv6用のOSPFv3 (RFC5340, Google翻訳) は扱いません。
エリア6種
OSPFのエリアは以下の6種類です。ここは暗記必須です。
エリアの種類 | 英語表記 | できること | |
---|---|---|---|
1 | バックボーンエリア | Backbone area | 外部ASとの接続 |
2 | 標準エリア | Standard area | 外部ASとの接続、トランジットエリア |
3 | スタブエリア | Stub area | |
4 | NSSA | Not so stubby area | 外部ASとの接続 |
5 | トータリー・スタブエリア | Totally stub area | |
6 | トータリーNSSA | Totally NSSA | 外部ASとの接続 |
普通の端末を接続するのは、どのエリアでもできます。
バックボーンエリアは、一つのASに一個しかない「エリア0」です。それ以外のエリアはゼロ個の場合もあれば、複数個の場合もあります。
トータリー・スタブエリアはCisco独自です。
トランジットエリア
バックボーンエリア以外の全てのエリアは、バックボーンエリアに直接接続するのが基本です。
。。。ではあるのですが、何事にも例外はあって、バックボーンでないエリアにさらに別のエリア(孫エリア)を接続することも可能です。この場合、仮想リンクという機能を使います。孫エリアとバックボーンエリアの間に入るエリアをトランジットエリアと呼びます。トランジットエリアになれるのは標準エリアだけです。
外部AS
外部ASとは、要はOSPFが通っていない領域です。外部ASはEIGRPでもRIPでも別枠のOSPFでも何でも構いません。外部ASとの間のルーティングは、スタティックルーティングでもBGP4でも構いません。
外部ASとの接続を持てるのは、バックボーンエリアと標準エリアとNSSAとトータリーNSSAです。スタブエリアとトータリー・スタブエリアはダメです。
外部ASには二種類あります。0.0.0.0/0に繋がっているASと、そうでないASです。0.0.0.0/0に繋がっているASはバックボーンエリアか標準エリアに繋ぐのが基本です。その理由は、後述するデフォルトルートへの集約です。
エリアの種類と傾向
標準エリアよりもNSSA、NSSAよりもスタブエリアのほうが、ルータの負荷が低いです。また、Totallyがつくエリアのほうが、つかないエリアよりも負荷が低いです。負荷が低いのと引き換えに、限られたことしかできないし、経路制御が大雑把になります。
ここでいう「経路制御が大雑把になる」とは、エリア境界 (ABR) で「デフォルトルートへの集約」が行われるということです。
- バックボーンエリアと標準エリアでは、デフォルトルートへの集約は行われません。
- TotallyがつかないスタブエリアとNSSAでは、ABRが外部ASへの経路をデフォルトルートに集約してエリア内に配信します。
- Totallyがつくトータリー・スタブエリアとトータリーNSSAでは、それに加えて自AS内の他エリアへの経路もデフォルトルートに集約して配信します。
以上!ここまでの知識では本番系ネットワークの詳細設計や障害対応、受験などには不足ですが、ポンチ絵をレビューする程度のミッションなら何とか乗り切れるかと思います。幸運を祈る。
参考文献
J. Moy (1998)
OSPF Version 2
https://tools.ietf.org/html/rfc2328 (Google翻訳)