論文紹介
論文:メタクッキー--感覚間相互作用を用いた味覚ディスプレイの検討
著者:鳴海 拓志, 谷川 智洋, 梶波 崇 他
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tvrsj/15/4/15_KJ00007408751/_pdf
どんなもの
視覚・嗅覚・味覚の間の感覚相互作用を使ってクッキーの風味を様々に変化させるシステム(メタクッキー)
→プレーンクッキーの見た目と匂いを変えることで、プレーンクッキーとは異なる食味を認識させることができた。具体的には、システムによって味が変化したと答えた人は79.3%、味が選択したものに変化した人は7割だった。ただ、クッキーとしてなじみのないキノコ味においては、キノコ味と感じた人は4割にとどまった。
→風味を認識するための要素として記憶や経験も重要な役割をはたしている可能性を示した。
先行研究と比較してすごいところ
これまでの情報提示技術は視覚と聴覚を対象にしたものが多いが、この論文では味覚ディスプレイを用いている。化学物質の合成で味を提示するシステムは存在するが、「味」は化学物質の反応だけではない。実際には「味」は味覚以外の感覚(嗅覚・視覚・触覚・聴覚)を含んだものとして知覚する。この論文では、化学情報を変化しなくても他の情報(視覚と嗅覚)を変えることで味を変化させた。
技術や手法のキモ
味覚情報を提示するときに味覚以外の感覚を付随して味覚の元となる化学信号を変えずに、付随の情報(見た目と匂い)だけを変化させることで、味の認識だけを変化させる手法。
カメラによって認識可能なARマーカのついたクッキーを作成した。クッキーを食べるときに、クッキー認識部のカメラがマーカー付きクッキーを認識し、クッキーと被験者の鼻や口との間の距離を計算する。これによって、クッキーと被験者の距離に応じた強さのにおいを提供する。(クッキーを食べている最中には強い匂いを提示する)
2台のカメラを使ってクッキーを認識して、マーカ付きクッキーの上に重ねて実写のクッキーを表示させる。これによって、被験者はマーカ付きクッキーを手にしてるのにも関わらず、選択した味のクッキーを手にしているかのような感覚になる。
検証方法
被験者はHMDに2つのカメラと嗅覚ディスプレイが取り付けられた装置を装着して、マーカー付きのクッキーを食べてもらう。
被験者に食べたい味を選択して、メタクッキーシステムでその味を選択する。1枚のクッキーを手に取ってテクスチャと匂いをつけて見てもらってから食べてもらう。その後プレーンクッキーも食べてもらう。
被験者に味の評価を質問紙に記入してもらう。(システムによって作られた質感と匂いがあったときに感じた味がプレーンクッキーと同じだったか、違った場合何味と感じたか回答してもらう)
議論
プレーンクッキーにマーカを焼き付けることで、味は常識的な味の範囲であり感覚間相互作用の効果に影響がないのは本当なのか。(香ばしさが増すということは影響しているのでは?)
食感を同じにすることはできないのか?(結果の自由回答に「食感を気にしなければほとんど選択したクッキーの味だった」とあった)
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食品の味がする印刷物を作るシステム