モナドは
$\mathcal{C}$を圏とする.
組$(T,\eta,\mu)$が$\mathcal{C}$上の モナド とは, 関手$T:\mathcal{C} \to \mathcal{C}$および自然変換$\eta: 1 \to T$, $\mu: T^2 \to T$が以下を満たすこととする.
$\mu \circ \mu T = \mu \circ T \mu$
$\mu \circ \eta T = 1 = \mu \circ T \eta$
以下の図式を考えると良い.
http://ja.wikipedia.org/wiki/モナド_(圏論)#.E5.AE.9A.E7.BE.A9
あるいは, 以下のstring diagramを考えても良い.
monad pic.twitter.com/dOOZviGmOM
— みょん (@myuon_myon) 2014, 12月 26
モナドとは関手と自然変換の3つ組$(T,\eta,\mu)$であるが, 言葉を濫用して$T$をモナドと呼ぶこともある.
自己関手の圏の
関手圏 $[\mathcal{C},\mathcal{C}] = \mathcal{C} ^ \mathcal{C}$ をここでは自己関手の圏と呼んでいる.
関手圏 $[\mathcal{C},\mathcal{D}]$ とは, $\mathcal{C} \to \mathcal{D}$なる関手とそれらの間の自然変換のなす圏のことをいう.
上で定義したモナド$T$は$\mathcal{C} \to \mathcal{C}$なる関手であるから$\mathcal{C}$の自己関手の圏における対象である.
モノイド対象
圏の対象に特別な代数構造が入っているような状況を考えたい.
すなわち, ある圏の対象$X$がモノイドや群であるということを, どのようにして定義すればよいであろうか? という問題を考える.
モノイドであれば, モノイド演算(積)と単位元の存在, および諸法則が成り立つことを考える.
一般化元とSetのモノイド
当然ながら一般の圏は対象から元を取ることができないので単位元の存在, つまり対象に特別な元が存在することは要請できない. しかし, これを射の言葉で扱うことを考える.
集合圏では, terminal objectは1点集合である. よって, $1 \to X$なる射は1の元をXの元に移すからこの射と$X$の元を同一視できる. さらにdomainを一般化して, 射$B \to X$を, Xの(B上) generalized object , あるいは一般化元とよぶ.
モノイド対象の話に戻ろう. Setの対象$X$がモノイドとは, 積$\mu : X \times X \to X$と(一般化された)単位元 $e : 1 \to X$が存在して, 以下を満たすことである.
結合律: $\mu (\mu(x,y),z) = \mu (x,\mu(y,z))$
単位元律: $\mu(e,x) = x = \mu(x,e)$
ここで$x,y,z \in X$である.
$\mu \times 1 : X^3 \to X^2$などを用いて元を使わない形でかけば, 上のモノイドの定義は更にSetでない圏へ一般化することができる.
モノイド対象
有限limitをもつ圏$\mathcal{C}$の対象$X$が モノイド対象 とは, モノイド演算$\mu : X^2 \to X$と単位元$e: 1 \to X$が存在して, 以下を満たすことである.
結合律: $\mu \circ (\mu \times 1) = \mu \circ (1 \times \mu)$
単位元律: $\mu \circ (e \times 1) = 1 = \mu \circ (1 \times e)$
ただし上では$1 \times X \cong X$によって自然な同一視をしている.
さらなる一般化
上では直積を標準的な積構造として採用した. つまり, モノイドの積 ``2つの元をとって積を返す" 射を作るために直積からの射で考えた.
ところで圏$[\mathcal{C},\mathcal{C}]$では, 上のモナドの定義を見れば分かるとおり$T^2 = T \circ T$のように, 関手の合成を積構造のようにみる必要がある.
この考え方を更に進めて, 直積とは限らない(が圏の構造と上手く両立する)積をもつ
圏を定義しよう.
monoidal圏
$(\mathcal{C}, \otimes, I)$がmonoidal圏とは, 圏$\mathcal{C}$, $\otimes : \mathcal{C} \times \mathcal{C} \to \mathcal{C}$なるfunctor, $I \in Ob(\mathcal{C})$なる3つ組で, 以下を満たす.
- associator: natural iso $\alpha_{x,y,z} : (x \otimes y) \otimes z \to x \otimes (y \otimes z)$ が存在する
- left unitor: natural iso $\lambda_x : I \otimes x \to x$ が存在する
- right unitor: natural iso $\rho_x : x \otimes I \to x$ が存在する
- pentagon identity:
$\alpha_{w,x,y \otimes z} \circ \alpha_{w \otimes x, y, z} = 1_w \otimes \alpha_{x,y,z} \circ \alpha_{w,x \otimes y, z} \circ \alpha_{w,x,y} \otimes 1_z : ((w \otimes x) \otimes y) \otimes z \to w \otimes (x \otimes (y \otimes z)) $ - triangle identity: $1_x \otimes \lambda_y \circ \alpha_{x,I,y} = \rho_x \otimes 1_y$
identity lawsは図式参照(cf. monoidal category - nLab)
monoidal圏では, 新たにtensor product $\otimes$というfunctorが定義に入れられている.
上の定義は, 有限limitをもつ圏$\mathcal{C}$に対し, $(\mathcal{C}, \times, 1)$に定まるmonoidal圏の構造を自然に拡張したものといえる.
ここで, $([\mathcal{C},\mathcal{C}], \circ, 1_{\mathcal{C}})$はmonoidal categoryになることに注意しておく. (最後の結論で用いる)
モノイド対象再び
monoidal圏 $(\mathcal{C}, \otimes, I)$ の対象$X$が モノイド対象 とは, 積$\mu : \mathcal{C} \otimes \mathcal{C} \to \mathcal{C}$および単位射$\eta : I \to \mathcal{C}$ を備え, 以下を満たすもののことをいう.
結合律: $\mu \circ \mu = \mu \circ \mu \circ \alpha : (\mathcal{C} \otimes \mathcal{C}) \otimes \mathcal{C} \to \mathcal{C}$
単位元律: $\lambda = \mu \circ (\eta \otimes 1)$, $\rho = \mu \circ (1 \otimes \eta)$
モナドは単なる自己関手の圏におけるモノイド対象だよ
$\mathcal{C}$上のモナドは, 圏$[\mathcal{C},\mathcal{C}]$(をmonoidal圏とみたとき)のモノイド対象と同じ概念であることが分かる.
何か問題でも?
何か問題でも?