はじめに
ほぼほぼ1年前の2023年2月19日、その数日前に起きたJAXAの次期国産基幹ロケットH3初号機が2023年2月17日の発射シーケンス中に「フェールセーフ」して発射が中断した状況にかこつけて、IT用語「フェールセーフ」について記事を書いたので、今回のSLIM(スリム: Smart Lander for Investigating Moon)月面着陸成功をお祝いして、太陽電池が作動しない状況をめぐって報道されている「ミニマムサクセス」について確認してみました。
「ミニマムサクセス」
goo辞書 ミニマムサクセス(minimum success) とは?
主に宇宙科学の分野における、目標に対する達成基準の一。難易度により設定された三段階の基準のうち、第一段階にあたり、最低限の目標を達成すること。→フルサクセス →エキストラサクセス
「サクセスクライテリア」
サクセスクライテリア(成功基準)とは? 4つの宇宙開発事例で考える技術開発における成功と失敗- sorabatake
JAXAが公開している「成功基準(サクセスクライテリア)作成ガイドライン」では、「成功基準とは、『ミッション目標に対する達成の度合いを計るための基準』である。」と定義しています。
JAXA 成功基準(サクセスクライテリア)作成ガイドライン
アウトプット目標のサクセスクライテリアとしては、フルサクセスの設定が基本であるが、必要に応じてミニマムサクセス、エクストラサクセスも設定することができる。サクセスレベルの目安は以下の通りである。
① フルサクセス【必須】
予定していた要求を満たし、計画通りの成果を得ること。
② ミニマムサクセス【任意】
挑戦的なミッション目標を設定するため、独立した複数ミッション機器を搭載する場合等では、その一部の機能喪失が生じた場合でもクリアできる最低限の目標として設定することができる。なお、過剰に保守的な目標にならないよう注意が必要である。
③ エクストラサクセス【任意】
フルサクセスを達成した上で、さらにそれを上回る成果を得ること。ただし、単に目標を設定するだけではなく、上回る成果を得るために克服すべき課題とその対策を明らかにする必要がある。
JAXA ミッション要求書作成ガイドライン
まとめ
今回のSLIM(スリム)月面着陸ミッションにおいては、太陽電池電源の喪失によりミッション時間が大幅に制限されるリスクがありますが、下記の基準には該当しているということですね。
② ミニマムサクセス【任意】
一部の機能喪失が生じた場合でもクリアできる最低限の目標として設定
業務システムのリリースにおいては、隠れたる瑕疵を除いては正常稼働が基本線なので、「ミニマムサクセス」のような段階的成功基準は一般的ではない気がしますが、あった方がよい気がしました。
例えば、直接は内容が異なりますが、ぎりぎり炎上状態を消化(消火)して納期に間に合ったとかは、これは結果的には全機能正常稼働であれば「フルサクセス」、納期遅延が基準書許容値以内ではあったがギリギリセーフは「ミニマムサクセス」とかですかね。
世界5ヵ国目の月面着陸おめでとうございます!