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エンジニアや上司が"有害な振る舞い"を改善するコツ

※追記: 「難しい人」は概念として用い説明するのに便利な言葉でしたが、誤解を生じたり、本記事のポリシーに沿わない使用(難しい人というラベリングを特定個人に適用する使い方)が容易にされてしまいそうだと分かりました。そのような誤用を防ぐことを最優先とするため、代わりに「有害な振る舞い」という表現を使用し、人ではなく振る舞いに着目するタイトル及び文章に変更致しました。

はじめに

前回の記事「エンジニアの"有害な振る舞い"への対処法」では多くの反応を頂きました。
はてなブックマークのコメントやTwitterを見ると、多種多様な反応がある中で、有害な振る舞いが多くの方によって実際に観測されていること、そしてそれによって実際に心理的ダメージを受けていたり困っているというコメントがいくつもあることが印象的でした。
ただ、その一方でこれだけ有害な振る舞いに対する反発があると、自分の有害な振る舞いによってチームメンバに迷惑をかけているのではないかと不安に思う人もいるのではないでしょうか?
また、上記の反応の中にも自戒というワードや、自分自身が気をつけなければというコメントも多く見られました。
私自身、全く同じ気持ちを抱いて模索しながらメガベンチャー時代を過ごしてきました。そして今でも。
今回の記事では、そのような不安を持っている人や常に自分自身を改善したいという意欲のある人、あるいは既にチームメンバやマネージャーから良くない振る舞いが多いと指摘を受けていて改善したいと思っている人に向けて、改善へのモチベーションの持ち方と私なりの方法論を説明したいと思います。
チーム開発における理想的な振る舞い、つまり改善してたどり着きたい理想形については、チーム開発についてのベストプラクティスを集めた書籍やサイト(たとえばGoogleが提供しているもの)、それから個人のコミュニケーションに関するノウハウ本など既に良質な情報が多く存在するかと思いますので、本記事では特に改善に必要な姿勢と改善サイクルの回し方にフォーカスして説明したいと思います。

本記事の用語について

本記事では「他者への配慮」という言葉をキーワードとして使用します。
コミュニケーションアンチパターンの特徴が100%エゴが主体になっていることでしたから、そうじゃないコミュニケーションをするには他者の視点を想像し、他者に配慮することが重要です。
そのため、有害な振る舞いを改善することは、チームメンバに大きな負担を与えないレベルで他者への配慮ができるようになることと言い換えたいと思います。
なお、他者への配慮を実践する能力はソフトスキルの一部だと考え、本記事で主に能力を話題にするときはソフトスキルという用語も使います。
また、以降は有害な振る舞いを改善する取り組みを、より意味の広い「改善の取り組み」と表現することにします。

改善の取り組みは達成可能なのか?

そもそもエンジニアが技術力とソフトスキルの両方を改善し、高いレベルに持っていくことは可能なのでしょうか?
私の見聞きした経験からすると、可能です。
たとえば私がミドルマネージャーのとき、部下が技術力を伸ばしながら振る舞いも改善していく様は、もちろん個人差は強くありますが、数多く見てきましたし、そもそも私の上司もマネージャーはそういう部下の改善を引き出すことが当たり前の責務だとして求めていました。
また、『Googleのソフトウェアエンジニアリング』の「監訳者まえがき」ではこのように書かれていました。

私がGoogleに入社した際に最も印象に残っていることの1つは、同僚のソフトウェアエンジニアたちの飛び抜けた優秀さでした。彼らは卓越したプログラミング能力と確かな技術知識を持ち、人間的にも親切で尊敬できる人たちでした。

そして本文69ページではもっと踏み込んで以下のように書かれています。

しかし、専門家であることと、思いやりがあることとは、相互に排他的ではない。Googleのソフトウェアエンジニアリングの職務等級におけるリーダーシップの項は、このことを明確に述べている。

これは技術レベルと他者への配慮が相互に排他的ではない、つまり片方が高い時にもう片方が低くなるという道理はなく、両方を高めることは可能だとGoogle幹部陣は明確に述べているわけです。

私が関わってきた会社でも、特にソフトウェアエンジニアリングとしての様々なトレードオフについて広い視野を持って考察できる技術力の高いエンジニアが、関係する人たちのこともしっかり視野に入っておりソフトスキルも高いというケースは結構見ました。
これはシンプルに技術力とソフトスキルというのは別々の能力であって、両方できる人、片方だけできる人、両方できない人それぞれが存在してもおかしくないと考えれば自然かなと思います。
言い換えると、チームに貢献する技術的内容のレベルとは別に、その内容を伝えるためにもっと他者に配慮した言葉の発し方や振る舞い方はないか?という探求をし、改善を進めることは技術的レベルとは無関係に可能だということです。
ただし特定の個人が実際に改善できるかどうかは(個々人で固有の事情があるため)別問題であり、それは本記事でも繰り返すように各人の判断となります。
また、先天的要因で本人の努力とは関係なく改善が難しいケースもあることにも注意が必要です。
(世の中のエンジニアの技術力とソフトスキルに相関関係はあるのか?などという統計的な議論に興味が行く読者もいらっしゃるかもしれませんが、私はそれに必要なデータを持っておらず、本記事の目的に必要な情報でもないのでスコープ外としたいと思います。)

対象読者

本記事で想定する読者は「はじめに」で書いたとおりですが、いずれの場合も主体的に改善に取り組みたいと考えている人を対象にしたいと思います。
また、本記事中の「フィードバックを受けるコツ」でも触れるのですが、改善の取り組みは常に自身の精神的健康が脅かされる危険があります
普段は攻撃的な人でも(たとえば改善の取り組みで)負担がかかると何かしらのきっかけで途端に折れて抑うつ状態(や最悪の場合うつ病)になってしまう、ということは(私の読書経験を通じた知識ですが)よくあることです。
ですので固い表現にはなりますが、本記事の内容を実践することで生じることは全て自己責任であり、筆者は一切の責任を負えません

自己責任で精神的健康を失わずに実践するコツは、主体的であること(他責思考にならないこと)と、自己否定に囚われず自分を客観視できることです。
そしてこの2つは意外と簡単ではありません。
たとえば自己を悲観し自らを難しい人(有害な振る舞いをする側の人)だと堂々と名乗って他者に関わろうとするのは危険な徴候です。
自虐を免罪符に何を言ってもいいような錯覚に陥り、主体性を失う恐れがあるからです。(初心者なので、を免罪符に好き放題構ってもらおうとするのと似ています。)
逆に、既に改善の取り組みを自分なりに進めようとしており、この記事で参考になる部分が無いか探してみよう、くらいのスタンスの人はこの記事の読者に向いていると思います。
また、主体的に取り組む自信はあるが、いまいち行動を起こすモチベーションを持てていない人、背中を押してくれる材料が欲しい人などにも本記事がお役に立てるかもしれません
一方、主体的になる自信を持てないという方は、この記事をそっと閉じていただければ幸いです。(次の節で触れますが、この記事を正義の棍棒として他者に振り回しても期待した効果は得られないと思いますし、そのような使われ方は私の本意ではありません。)

そして改善の取り組みという言葉は、響きはポジティブですが、実際に取り組む立場になればそれは泥臭く大変な作業になります。
しかも現実は厳しく、大変な努力をしたにも関わらずほとんど改善できなかったという結果になる可能性も常にありますし、最悪の場合、むしろ逆効果になったなどという可能性すらあります。
ということで、心に余裕を持ち、主体的に軌道修正できる人でないと取り組むことは難しいです。

それでは前置きが長くなってしまいましたが、本題に入りたいと思います。
まずはモチベーションの持ち方からです。

人を動かすためには目の前のマシュマロを取らない

人間、誰しも他者が自分の期待通りに動いてくれたら嬉しいと思うでしょう。
たとえば自分の子どもに頭が良くなって欲しいと思っていたら、子どもが熱心に勉強する姿を見たら嬉しくなるはずです。
でも、子どもが実際には全然勉強していなかったとき、「勉強しなさい!」と叱ることが教育のアンチパターンであることはよく知られていると思います。
これは子どもに勉強してほしいと思ったとき、子どもが勉強に向かうように直接操作しようとする言葉です。
前回の記事のコミュニケーションアンチパターンで、自分の意見を理解してもらうために一方的に特定の本を読むように要求するのも同じ構図です。
他者から操作されたいと思う人なんて滅多にいないでしょう。
むしろ反発したくなるはずです。

ではどうすればよいのか?
子どもが自ら勉強したいと思うように導けばよいのです。
典型的には外発的動機付けと内発的動機付けの2種類があります。
外発的動機付けは、勉強をしっかりしたらお小遣いやプレゼントなどのご褒美を与えることでやる気を引き出す方法です。
内発的動機付けは、子どもが勉強そのものを楽しいと思い、外部から何も報酬が与えられなくても勉強したくなる状態です。
持続性や発展性の観点では内発的動機付けが理想ですが、最初のきっかけづくりとして外発的動機付けが用いられることもあります。
これらのより詳細な方法論は教育関係の文献に任せるとして、たとえば勉強する過程で子どもが興味を持ったことや達成感を得たことに対して、しっかり耳を傾け、面白いね、凄いね、などと共感し、承認欲求を満たしてあげることが有効な方法の一つです。
マネージャーであればエンジニアに対しても、その人が興味を持っている技術や出せた成果に対して、しっかり詳細を聞いて理解したうえで、面白いですね、凄いですね、と声掛けして興味や達成感を一緒に共有する(=共感する)手法が有効なのは想像しやすいかと思います。

しかしいずれの方法も他者を直接操作するやり方に比べて難しいですし大変です。
しかも、実際に自分の期待通りに動いてくれるとは限りません。(子どもの勉強の例を考えてもそれは明らかですね!)
このやり方は目の前のマシュマロを我慢する行為に似ています。(参考: マシュマロ・テスト
しかも我慢したのに結局追加のマシュマロが来なかったなんてこともよくあります。
ただ、経験的にはやはり我慢強く粘った方が、のちのち多くのマシュマロを手に入れることができます。
いろんな人から継続的にもらえたりします。
期待値で考えたら、他者を操作しようとせずに他者を配慮したやり方の方が見返りが多いということですね。

他者に配慮することの報酬は、承認欲求が満たされる機会が増えること

さて、他者を直接操作せずに、他者に配慮し自ら動いてくれるように導くことは難しく我慢強さが要求されることが分かりました。
なのになぜそこまでして他者に配慮する必要があるのでしょうか?
もちろん、チームの生産性を低下させないためというのが正論としてはあります。(前回記事の冒頭を参照)
ただ、気持ちとしてはもうひと押し欲しいですよね、そう、自分自身への報酬が。
ずばり、他者に配慮することで得られる自分への報酬は、他者が自分の承認欲求を満たしてくれる機会が増えることです。
自分が他者に配慮するほど、他者が自分に興味を示し、共感してくれる機会が増えます。
さらに、自分が他者に共感を示し、他者の承認欲求を満たせば好循環が生まれます。
そして行き着く先として定常的に承認欲求が満たされている状態となり、そもそも自分の承認欲求など気にならなくなって、ますます他者に気をかける余裕が出てきます。
逆に繰り返し有害な振る舞いによって他者を攻撃してしまっていると、自分に共感してくれる他者がどんどん減り、承認欲求への渇望感が強まり、場合によってはその渇望感から自分の優位性(たとえば特定分野の技術力)を執拗にアピールしてしまい、ますます他者から嫌われる悪循環に陥ります。

既に悪循環に入ってしまっているという人の場合、そこから立て直すことに絶望感を感じるかもしれません。
実際、現実は厳しいですので本当に立て直すのが難しいケースもあるでしょう。
ただ、自分が悪循環に入ってしまっているから今こうなっているんだ、と客観的に認識するだけでも心に余裕が出てくるかと思います。
そしてもし心の余裕を持てたら、次節の内容の実践に踏み出せるかもしれません。

悪循環を断ち切る方法

悪循環を断ち切るのに有効なのは、まずは小さな一歩から、です。
たとえば、以下の3つです。

  1. 積極的に挨拶をする
  2. 相手にダメージを与えたと気づいたらすぐに謝る
  3. 感謝の言葉をたくさん伝える

1は、自分はあなたを攻撃する意志はなく、あなたの存在を快く受け入れていますという極めて基本的なアピールです。
オフィスで会ったときも、ビデオ通話に入室したときも、自分から挨拶していくのが有効です。
自分から挨拶することは少しハードルがありますが、挨拶を返すのは簡単ですよね?
実は自分から挨拶をするのは、相手が自分に挨拶しやすくするという配慮なのです!
まさに他者への配慮を実践する第一歩です。
そして単純ながら、これがコミュニケーションアンチパターンを踏んだときのダメージを僅かでも減らしてくれるはずです。

2は、ついコミュニケーションアンチパターンを踏んでしまったとき(厳密にはそれによって実際に相手がダメージを受けたとき)、悪意は無かったこと、あなたに負担をかけてしまったことを気にかけています、ということを伝える薬のような言葉です。
もちろん、アンチパターンを踏んでは謝るという頻度が高いほど「面倒くさい人」と思われますが、堂々と有害な振る舞いを繰り返す人に比べたら何倍もマシだと思います。
相手に悪いことをしたと思ったら即座に謝る、というのは簡単かつ強力な対処法です。
なお、謝るときは誠実に、かつさらっと終わらせることがコツです。重たく繰り返すほど面倒くさい人になります。(お節介なアドバイスですみません。)

3は、万能の効果を持つ魔法のような言葉です。
コミュニケーションアンチパターンを踏んで、誰かが渋々あなたのために動いてくれたときでも、それに対して感謝の言葉を伝えたら相手のダメージは多少ながらも癒やされます
Slackであれば「ありがとうございます!!」の一言でも十分ですし、ビデオ通話や対面であれば最初の挨拶で「あのときはありがとうございました。本当に助かりました。」と言葉を交わしてからアイスブレイクや本題に入ればバッチリです。
もちろん、たびたび相手にダメージを与えては回復させるのを繰り返すのはやっぱり「面倒くさい人」ですが、相手にダメージを与えても無自覚で平然としているような人に比べたら何倍もマシです。(なお、意図的な常習犯はその限りではないです。)
感謝の言葉は本当に万能で、全ての人が活用できる素晴らしい言葉だと思います。

ここで少し自分が今いる会社のことを話そうと思うのですが、副業で入ってから実際に入社を決めるか悩んでいたとき、いろんな個性を持つ人がいながらも、ここの1、2、3をしっかりできる人ばかりだったのが印象的でした。(それどころか自分が足を引っ張らないようにしなければと身が引き締まる思いでした。)
マネージャー視点でも、この1、2、3ができていれば、たとえ今後チーム内でコミュニケーションアンチパターンが見られたとしても、みんなで頑張れば良いチームでいられるという希望を持つことができます。
それくらい、大事な要素だと思っています。

なお、既に悪循環が進んで完全に人間関係が冷え切ってしまっているという人の場合、このような小さな一歩すら難しいこともあるかもしれません。
その場合、たとえば職場が自分の世界の全てだとは思わず、まずは他の手の届く(趣味などの)コミュニティで好循環を作ることを目指す、という選択肢もあります。
自分と同じ趣味嗜好を持っている人の集まりの方が他者に配慮するハードルはぐっと下がるはずです。
まずはそこで成功体験を積んで、他者に配慮する習慣を身につけることがおすすめです。
そうしてから再挑戦してみると結果が変わるかもしれませんし、もし無理なら転職で人間関係をリセットしてからやり直すのも良い選択だと思います。

コミュニケーションアンチパターン集との良い向き合い方

前回の記事ではコミュニケーションアンチパターン集を掲載しました。
そしてこれが薬にも毒にもなるかもしれないと書きました。
それは、コミュニケーションアンチパターンと向き合う姿勢によって変わると思ったからです。

毒になるパターン

たとえば以下の姿勢だと、毒になると思います。

  1. コミュニケーションアンチパターン集そのものに依存し、書かれている事に盲目的に従う
  2. コミュニケーションアンチパターンを額面通りに受け取り、それらの行動を起こさないことだけに注意を払ってしまう
  3. コミュニケーションアンチパターンは無価値であり、有害な振る舞いが多い人こそ実は技術面でチームに最も貢献していると考えている

1は、他責思考になるリスクをはらんでいます。
確かにコミュニケーションアンチパターンを参考にするのは振る舞いの改善に有効だと思いますが、記載したのはあくまで具体例で、状況依存であり変化する余地が多く残されています。
そのため盲目的に従い、依存し、結果としてうまくいかなかったとき、コミュニケーションアンチパターン集を信じたのが間違いだったと怒りが爆発するパターンが考えられます。
それはまさに他責思考です。
あくまで自分の意志で、自分の頭で考えながら有害な振る舞いを改善するのが重要であり、コミュニケーションアンチパターン集はそのための一つの道具に過ぎません。

2は、他者への配慮、他者の視点という本質を見失ってしまったパターンです。
先ほど書いたようにコミュニケーションアンチパターンは状況によって変化する余地が多くあります。
額面通りに受け取り、自分がアンチパターンに該当する振る舞いをしないことだけに意識を集中することで、本来意識を向けないといけない他者のことを忘れてしまうのです。
いわゆる努力が空回りするパターンです。
コミュニケーションアンチパターンを活用する際の本質は他者への配慮であり、自分の振る舞いに対して他者がどう反応しているのかを常に観察し、他者にダメージを与えていないか内省することです。
これは、自動車を運転する時に常に周囲に気を払っているのと似ています。
他者への配慮がうまく、相手にダメージを与えない人は、他者の反応に対して常に敏感です。
幼い頃から習慣になっている人は、車の運転に慣れている人と同様、さほどエネルギーを費やさずに周囲に気を払うことができているかもしれません。
ただ、運転免許を取得したばかりの人が運転で物凄く疲れるのと同様、最初は他者への配慮で疲れるのは仕方のないことだと思います。
なお、他者への配慮のレベルが非常に高い人の中には、改善し続けるため常に気を張り続けている人も存在します。
つまり他者への配慮というのは技術力と同様、絶え間ない努力によって高められる、純然たる高度なスキルだということです。
その努力を怠って自分への評価が高まらないのであれば、それは技術力の研鑽を怠った人の評価が高まらないのと同じです。

3については、本記事を活用する前提として書いた「改善の取り組みは達成可能なのか?」の節の内容と食い違った考え方ですので、本記事があなたのお役に立つことはできなさそうです。(そっと記事を閉じましょう。)

薬になるパターン

まずはコミュニケーションアンチパターンに囚われず、あらゆる場面で相手の様子を観察してみましょう。
観察などというと仰々しいかもしれませんが、他者に配慮できる人は常日頃からやっていることです。
特にノンバーバルな部分(表情や動作、声のトーンなど)に注目してみましょう。
様子は相手のコンディションにも左右されるので、普段から簡単に雑談をして確かめておくのも良いやり方です。
また、スクラム開発では毎朝のデイリースクラムでお互いの体調を報告し合うのも有効です。
今日はなんか反応が悪いな、とか口調が暗いな、と思ったとき、自分の振る舞いが原因ではなくてそもそも相手のコンディションが悪かった、ということはよくあります。
いずれにせよ相手に興味を持ち続けることは基本でありながらとても重要な姿勢です。

そして一区切りついたら自分の振る舞いと周囲の人達の反応を振り返ってみましょう
その時の参考資料としてコミュニケーションアンチパターン集を使うのです。
あくまで振り返りの際に気づきを得るためのツールということですね。
改善の取り組みの本質は、とにかくあなたの振る舞いが他者に大きな負担をかけているシーンは無かったか?を常に振り返ることなのです。

さらなる改善サイクルを回すために

本来、他者への配慮というのは終わりなき改善の繰り返しです。
実際、自分がチームメンバに対して既に十分に配慮できているという自信のある人は、そうそういないと思います。
私自身そのような自信は全くありませんし、この記事を書くことで他者に配慮することへの意識が高いと周囲に思われるであろうことにプレッシャーも感じます。
ただ、それでも折れずにこのような記事を書くことができているのは、以下の経験が大きく作用しています。

  1. 8年間360度評価を受け、どう振る舞ったら評価が高まるのかを経験することができた
  2. 信頼できる部下と上司の両方から、2年以上厳しい内容も含めて多くのフィードバックを受けてきた

1によって量的指標と定性的なフィードバック(コメント)を、そして2によって部下と上司両サイドからの感情が込められたリアルタイムのフィードバックを受け取ることで、自分がどのように周囲から見られているのかについて比較的高い解像度で感じ取ることができていました。
これは、自分が普段から有害な振る舞いをしていると思われていないか?という漠然とした不安に比べると段違いに安心感があります。
たとえば、医師からあなたはガンかもしれませんとだけ言われると強い不安を感じるのに対して、あなたのガンはステージ1で手術はほぼ確実に成功し手術後の全再発率は3%ほどです、と言われると将来の見通しがある程度立って不安が小さくなる、というのに似ています。
また、周囲の人が自分を素晴らしい人間だと思ってくれてたらいいなという願望が勝手に膨れ上がることも防止してくれます。
今の自分はまあ、この程度だよね、という身の丈を知れるわけです。
身の丈を知ること、つまり自分に対して楽観も悲観もしないことが安心感に繋がります。

回りくどい説明になってしまいましたが、不安を感じずに改善サイクルを回すコツは、常にフィードバックを受けられる環境に身を置くことです。
360度評価制度については、小さな企業だとつけた数値から個人を特定されたり、そのような懸念や局所的な人間関係からつける数値が歪むリスクもあるため、ある程度以上の規模の企業じゃないとその制度の恩恵に与ることはなかなかできないと思いますが、もしあるのであればラッキーだと思って活用しましょう。
また、自分の弱みをさらけだし、改善したい意志を伝えることで、相手次第ではありますが、フィードバックをもらえる関係性を作れる可能性があります。
もちろん普段からフィードバックを受けることで精神的に辛い瞬間が生じることもあります。
相手のコンディションによってはフィードバックに強い感情がのせられたり、偏った内容となることもあり、ある程度の覚悟と心の余裕が必要です。
ただ、それは手術の痛みと同じようなもので、常にまとわりつく漠然とした不安に比べればずっといいものだと思います。

フィードバックを受けるコツ

ただ、ある程度コツをおさえておかないと、フィードバックを受けるのにはリスクがあります。
それは、自分が求めていないフィードバックに振り回されて精神的に追い込まれたり、フィードバックに依存的になってうまくいかなかったときにフィードバックをしてくれた人を恨むという他責思考に走ってしまうリスクです。
このリスクを最小限にするためにも、以下の3点に注意するのが良いと思います。

  1. フィードバックを受ける目的と自分が目指すゴールを明確にし、共有する
  2. フィードバックを受ける際は常に自分が主体的でいられるような信頼できる人を選ぶ
  3. 自己否定に陥らないように常に自分を客観視する

1について、たとえば単に有害な振る舞いを改善したいという目的では解像度が足りません。
最低限、自分がチームにどのような貢献をしたいのかを共有しないと、せっかくフィードバックをもらってもあれこれ数多くの要望を受け取るだけになり、消化しきれなくなってしまいます。
特にこれはフィードバックをする側の配慮やソフトスキルが足りない場合に起こり、あなたの一挙手一投足について良くないと感じられた点を何もかも指摘され、最悪自分は駄目な人間だというネガティブ思考が生じて精神的に追い込まれてしまう可能性があります。
何もかも指摘されてしまうのは、フィードバックをする人の中で指摘の目的と指摘事項の優先度づけができていないためです。
そこを明確にしてあげる必要があります。
具体的に自分がどういう役割を持つチームメンバを目指すのか、周囲とどういう関わり方をして、どのような頼られ方をしたいかなどを明確にした方がいいと思います。
私の場合は、スクラム開発におけるそれぞれの役割を担っていた際に、自分が役割を通してチームをどういう状態にしたいのか、そして役割を通してチームメンバとどのような関係性になりたいのかを共有したうえでフィードバックを受けていました。
また、ミドルマネージャー時代は部下と上司に対して、自分が目指すチームのビジョンと、ビジョンを達成するために部下と上司、それから同部門のミドルマネージャーたちとどのような関係性が必要だと考えているかなどを共有したうえで、フィードバックをもらっていました。
それでも相手のコンディションによってはいわゆるゴールから外れるような要望もたくさん飛んでくることがあったりしますが、それは相手を思いやって寛容に受け取る必要があります。

2は、フィードバックを受け取る時は徹底的に主体的でなくてはならないという前提を守るためです。
他責思考になったらフィードバックをやり取りする関係性は終わりだと考えた方が良いです。(いわゆる親友なら一時は他責思考になっても喧嘩を通して仲良くなったりすることもあると思いますが、仕事仲間でそれをやるのは難しいですよね。)
この人だったら全てのフィードバックを文句を言わずに受け取れそうだ、という状態が理想です。
もちろん、文句を言わずに受け取りさえすれば良くて、そのフィードバックを実際に活用するかは改善の主体であるあなた自身です。
フィードバックの内容を盲信せず、相手の性格やコンディションを推察し、内容に偏りがあると判断する責任を持つのもあなたです。
私の場合、受け取ったフィードバックを主体的に優先度づけしたり、そういう脳内の優先度づけを会話中に随時相手に伝えながらさらなるフィードバックをもらったりなど双方向にやり取りもしていました。
いずれにせよ、「悪いのはお前だ」という他責思考にならなければOKです。そこが一番大事です。

3は、自分は駄目な人間だと強く責めてしまう状況を回避することが目的です。
問題点を自分ごととして捉え、自分に原因があると考える「自責思考」はとても大事な姿勢ですが、そこから外れて自分をネガティブな言葉で否定することは抑うつ状態にも繋がる危険な行為です。
そういう危険があるときは、自分が駄目な人間である、というような呪いの言葉は封印しましょう。
そしてこの際にも1が有効です。
改めて目的とゴールを見直し、自分がどの位置にいるのか、そしてそのゴールは本当に自分が達成可能なものなのかを振り返りましょう。
達成できなさそうなのであればゴールをずらしたり、場合によってはゴールを破棄してフィードバックの取り組みを諦めるのも勇気ある選択といえるでしょう。
実はこの危険性は、経験は無いものの、私の心理学の知識からすると、かなり高いかもしれません。
もしこの記事を読み、実践し、このような状態になる人が出てしまったらと思うと怖い気持ちもあるくらいです。
自分の精神的健康が脅かされていると感じたら、是非とも軌道修正しましょう。
いったん立ち止まってフィードバックを「休止」するのもありだと思います。
そしてそのような判断ができることを含めての主体性を持てていることを確認してから、改善に取り組んでください。(そうじゃない人は潔く諦めましょう。)

そして最後に、フィードバックをくれる相手に常に感謝の気持ちを持つことが大事です。
これは相手に伝えるためというより、自分の精神的健康のためです。
もし感謝の気持ちが萎えてしまってきているなら危険な徴候です。
なぜならこの取り組みはあなた自身がやりたいと思って始めたことのはずだからです。
そのときは1、2、3がちゃんと満たされた状態になっているか、振り返りましょう。

※ここで書いたのはあくまで私なりの方法論です。状況が恵まれている場合、ここまで条件を揃えなくても親身なサポートを受けられる環境がある方もいらっしゃると思いますし、それはもう個々人の取り組みにお任せします。

難しい上司(マネージャー)を脱する方法

前回の記事で、難しい上司(マネージャー)に対処することは難しいと書きました。
しかしマネージャー自身が有害な振る舞いを改善できるかは本人と環境次第であり、難しいとは限りません
ただ、一人のチームメンバの立場に比べたら難しいと思います。
なぜならマネージャーは基本的に自身の上司から強く成果を求められているためです。
マネージャーの成果は、多くの場合チームの成果そのものです。
そのためマネージャーは常にチームを直接操作したくなる欲求と戦う必要があります
たとえば上位組織の求める成果とは違う方向にチームが走ってしまっているとき、もっとも直接的な解決策がマイクロマネージメントによってチームメンバそれぞれを直接操作することだからです。
相手にする人数が多い分、そしてチームとして連帯している分、直接操作せずに、チーム自身が成果につながる動きをするように導くのは難しいです。
さらに、チームメンバからなめられて自分に従ってくれなくなるという恐怖心も常にあります。
そのため、自分の弱みを隠すために十分な情報を与えないままチームメンバに一方的な指示を出してしまったり、なめられないように強い言葉で威圧して自分に従わせようとするマネージャーがいてもおかしくありません。
しかしこれは上述した通り、完全に目の前のマシュマロを取る行為です。

では、目の前のマシュマロを取らないやり方とは何でしょうか?
それは部下からなめられるという恐怖心を捨て、正直に自分を見せ、明確なビジョンを伝え、ビジョン実現のために協力して欲しいと頼る姿勢を見せ、そしてフィードバックを通じてチームの軌道修正を図りながらも、成果が出たときには感謝の言葉を伝える、という、文章にするだけでも長ったらしいですが、こういうやり方が一つの具体例です。
自分がチームメンバだった時代を思い出せば想像できると思いますが、部下というのは思ったよりも上司がこなす仕事の量や技術レベルにこだわっていません。
それよりもずっと、自分を頼ってくれて、自分の努力や成果をしっかり見てくれて、そして評価してくれるような上司を求めています。
これを理解することが、弱みを隠さず正直に部下と接することの恐怖心を克服する第一歩になると思います。

しかし環境がそれを許さないケースもあると思います。
たとえばそのようなチーム運営自体を否定するような上司や組織だったら変えようがありません。
あるいは会社の資金繰りが大変で今までのマネージメントを変える少しの余裕もないという状況もあり得るかもしれません。
ただ、もしマネージャーをやっていて以下のような本を1冊も読んだことが無いのであれば、少なくとも1冊は読んでみることをお勧めしたいです。
マネージャーとしての世界観が変わるかもしれません。

最後に、具体的な改善の取り組みのコツは、マネージャーであっても本記事で既に書いた内容と共通です。
もし環境が許せば、改善に取り組むという選択肢を検討してみてください。

おわりに(コメントを書く前のお願い)

今回はエンジニアやそのマネージャーが有害な振る舞いを改善したいという人向けの記事となっています。
中には自分も改善に取り組もうと思ったものの難しさを感じ、相談したくなる人もいるかもしれません。
ただ、あらかじめのお断りとなってすみませんが、このQiitaコメント上で具体的な相談にのることはできません。
なぜならあなたの普段の行動が実際に有害な振る舞いとなっているのかどうかはチームメンバの感じ方次第である以上、私(や他のQiitaユーザー)のようなインターネット上の赤の他人が判断し適切なアドバイスをすることは困難であり内容が偏るリスクがあるためです。
ですので個人的な相談のコメント、及びそれに対して個別のアドバイスをするコメントは控えていただけますと幸いです
相談相手はチームの状況をしっかりわかっている人がベストですが、どうしても職場の関係者に相談できない場合、外部のカウンセリングやメンタリングなどのサービスを受けてしっかり個別の事情をヒアリングしてもらったうえで相談してもらうのが良いと私は思います。
いずれにせよ、どうすればよいのか考え、行動する主体はあなた自身です。
その際、取り組みのヒントとして、本記事が少しでもお役に立つことができれば幸いです。

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