えー、タイトルの通りです。
技術は技術でもコンピュータ系の技術が一切登場しない(はず)なので、投稿場所としてQiitaはそぐわない気がする。身内のAdvent Calender向けです。
こいつを作った話をします。
#お品書き
- 前史
- 原曲の把握
- 合唱譜の作成
- オケの用意
- オケ譜の作成
- 演奏音データの出力
- 合唱音データの作成/加工
- 音データの合成
- 完成
- 作曲の解説
#前史
(P1氏) 2021年3月2日 15:10
@(私) @(L氏) @(K氏)@(M氏) 入学式の曲をみんなで書きましょう!!!
(K氏) 2021年3月2日 15:12
詳細求です!
(P1氏) 2021年3月2日 15:15
VUTD入学式を #武道館-入学式 でやるそうなのですが、音楽部がいないので、入学式の合唱とかをDTMでやってやろうぜという企画です!
ちなみに、メロディしか公開されていません。
メロディの打ち込みは(P2氏)がやってくださいました。投げてくださると思います!
音源は https://youtu.be/xnJy0qrsmUI とか。小節あたまのコード進行とかはおおまかに準拠してもらえると嬉しいです。
(私) 2021年3月2日 15:19
おおお
(P2氏) 2021年3月2日 15:29
(msczファイル)(msczファイル)
なんと、P1氏の呼びかけから僅か19分でプロジェクトが始動しました。VUTDのフットワークの軽さが光ります。
ちなみに、VUTD入学式についてはどこかに解説と振り返りが転がっています。たぶん。
#楽曲の把握
というわけで、まずは対象の楽曲を把握していきます。
弊大学には"校歌"はなく、"運動会歌"と"応援歌"が代わりに使われているようです。
まずは前者から。
原曲に近いであろう、前年度までの式典で配布された楽譜ではメロディのみが示されていました。「作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰」となっているため、後世の人が編曲して合唱にしたとみて良いでしょう。
ざっとYoutubeで確認したところ、どうやら大橋版(女声3部)と、田中版(混声4部)でハモリが違うようです。
ハモリの違いの具体例 中段の三段が大橋版、上下の二段ずつが田中版
どちらの響きも捨てがたい......と一晩悩んだ結果、なんか良い感じにいいとこ取りをすることにしました。
具体的には、まずは単純に両者をマージした7声合唱(=3+4)を考え、和声的な衝突の起きる部分の音を個別に精査して削除しました。出来上がった歯抜けの7声合唱を4声に整理して完成です。
出来上がった合唱譜
#合唱譜の作成
楽曲を把握する間に勝手に出来上がっていたので割愛します。
"応援歌"の方は作詞:大森幸男 作曲:山口琢磨で、入野版(男声3部)とみられるものしか見つからなかったので、サクッと耳コピ。こいつが後で問題になります。
出来上がった合唱譜2
#オケの用意
使用したソフトはMusescore Ver.3.n.mぐらい(nとmは忘れました)。
標準音源を用いたmp3への書き出しで音色もほぼ申し分ないのでそれを利用。
細かい調整を一からしたくなかったので、既に持っていたテンプレートを流用しました。なのでここは秒。
#オケ譜の作成
編成はよくある「3管編成」というやつで、音楽の教科書に載っていそうな管楽器が3人ずついるオケを想定してみました。
古典派に比べればややデカめなのですが、式典ではまあ普通かも。
デカすぎて全体像が見えない
3人ずつとは言いましたが、正確には2人+派生楽器1人ずつですね。
フルート2人+ピッコロ1人、オーボエ2人+イングリッシュホルン1人、クラリネット2人+バスクラリネット1人、ファゴット2人+コントラファゴット1人
ホルン4人、トランペット3人、トロンボーン3人、チューバ1人
打楽器6人(ティンパニ、吊りシンバル、シンバル、スネアドラム、バスドラム、タンバリン)
弦楽器5パート(1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
やり方はシンプルで、楽譜を書く→音で出力→耳でチェック→楽譜を修正→音で出力.......の繰り返しです。コーディングと基本的に一緒。
楽譜とは音に関する記述言語の一種です。Pythonみたいなものだと思ってください。
Musescoreの内部では、入力した楽譜のデータに合わせて、あらかじめ録音された音源の波形を合成して出力してくれます。
音源は、各楽器に合わせた音色が何十種類も登録されているので、それらを適切に設定すればオケの演奏音が構築できるわけです。
本当はチャンネルごとの音量比とか、リバーブとかディレイとか(残響です)を細かくチューンアップするべきなんですけど、今回はテンプレートなのでほとんど飛ばしました。
Musescoreというエディタは優秀で、スペースキーを押すだけで記譜と音再生を切り替えられます。
コーディングに例えるなら、jupyter notebookみたいなもんですかね。いつでもワンクリックで(面倒なコンパイル不要で)部分的な実行結果を確認できるという感じです。
個人的なこだわりは、同じ楽器が2人いる場合に必ず2チャンネル割り当てていることですね。1チャンネルにすれば見易くはなりますが、1stと2ndで強弱を変えたい時などに困ります。
ティンパニ(音程つき大太鼓)は音源が貧弱なので、2チャンネル重ねて音圧を増強してます。
弦楽器は5パートに10チャンネル使い、各パートに2つの音色を割り当てて合成しています。なんかどの音色も単体ではしっくりこないんですよね。
#演奏音データの出力
適当に3番まで作り終えたら、出力します。Exportボタンを押すだけなので割愛。mp3かwavで保存できます(以前はwavだけで不便でしたね)
(私) 2021年3月18日 19:53
よっっっっっっしゃあああできたぞおおおおおおおおおoozorato.mp3
ここまでわずか16日でした。なかなかの突貫工事。
ちなみに、応援歌の方はP1氏が作りかけた吹奏楽編成のデータを引き継いで、最後まで補筆しました。こちらもExportするだけ。
#合唱音データの作成/加工
P2氏がUTAUで歌声(独唱)を生成→RadioLineやらSoundEngineやらで加工→P1氏がさらになんかのDAWで加工してくれました。私はノータッチでした。
ちなみに、独唱から合唱への加工は、波形をミリ秒単位でずらして合成することで実現しています。正直、100msぐらいまでの遅延は人間にとって”同時"に感じるんですよね。音響工学的には全く同じ波形を数ms~数十msずらせば、複数人が同時に話しているように聞こえるみたいですね。面白い。
ちなみに、応援歌は男声3部合唱を後から混声4部合唱に変更したため、どこの音をどこのパートに割り振るかちょっと困りました。しかも、真ん中のパートが途中でdivisi(2つに分かれて分担)していたので問題がややこしくなり。始めから素直に4部にすりゃよかった。
#音データの合成
オケと合唱の音を合成して、リバーブ(残響)、ディレイ(反響)、コンプレッサー(音圧調整)をかけたら完成です。
これは......誰がやってくれたか忘れました。たぶんP2氏だと思います。
#完成
ここに上がっているのは、演奏音データ、つまりinstrumentalバージョンですね。
こちらに当時の様子が。やっぱり大勢の方に聞いてもらえるのは嬉しいです。
#作曲の解説
##大空と
大学歌みたいなものなので、荘厳に演ってやろうと思いました。ロマン派以降のフルオーケストラのサウンドです。
テイストとしてはかなり盛大な祝典感が大事かなと思っています。序奏で思いっきり壮大に幕を開けてみました。
1番はそれでも控えめなテンションで進めてみて、後半で重厚に盛り上げていきます。
2番では軽快さを出して意外さを誘ってみます。最後の方で木管が上がったり下がったりするやつが、個人的なお気に入りです。
3番は賛美歌のような祈りの雰囲気で始めます。意外性が大事。すっと音が消えた次の瞬間、天使のラッパを皮切りに、雪崩れ込むように大海原のようなシーンにつづけました。ドラマチック性が出せた気がして今でもニマニマしてます。
最後はリズム感よく進めて、壮大なエンディングへ。ややお涙頂戴ではありますが良い感じにできたなぁと思っています。
##ただ一つ
こちらは応援歌なので、マーチングバンドのようなテイストでまとまっています。
吹奏楽に加えて、打楽器の種類が変わっています。リズムを打つ太鼓は、底が浅くてマーチング向きな楽器を取り入れています。
基本的にはP1氏のテイストを踏襲しつつ、ブラスの華やかなファンファーレ感を大事にしてみました。
マーチングは初めてだったのですが、それっぽくできたでしょうか......
#最後に
どう考えてもQiitaじゃなくてnoteとかに書くべきだった。