はじめに
「シカゴにはピアノの調律師は何人いるか?」「東京都内にマンホールはいくつあるか?」といった、
実際に調査したり正確な数字を把握したりすることが難しいような内容を、何らかのロジックを用いて
短時間で概算を出すことをフェルミ推定といいます。
最近では、Googleやコンサルティング会社の入社試験にも出題されたりするそうです。
フェルミ推定とは
フェルミ推定の考え方として、以下の特徴が挙げられます。
- 正確な数字を算出することを目的としない。
- どんなに少ない情報からでも仮説を立て、結論を導き出す。
- 結論を出す時間を限定する。
婚活サイトの利用者数を推定してみる
それでは、このフェルミ推定を使って婚活サイトの利用者数を推定してみます。
前提条件
・ある特定のサイトの利用者数ではなく、婚活サイト市場全体の利用者数を対象とする。
・カジュアルなマッチングサイトではなく、結婚を前提に考えている人を対象とする。
アプローチ
婚活サイト利用者数算出のアプローチはいくつか存在すると考えられますが、
例えば以下の式によって算出されると思います。
婚活サイト利用者数 = 年代別人口 x 未婚率 x 婚活サイト利用率
この式にそって、それぞれの概算を計算します。
年代別人口
婚活サイトの主な利用者を男女とも20歳〜50歳と仮定します。
日本の人口ピラミッドはつぼ型の傾向がありますので、
人口約1億2000万人に対して、以下のようなセグメントと割合を考えます。
セグメント | 割合 | 人口 |
---|---|---|
0〜20歳 | 20% | 240万人 |
20〜40歳 | 30% | 360万人 |
40〜60歳 | 30% | 360万人 |
60歳〜 | 20% | 240万人 |
そして、それぞれのセグメントを単純に2で割ると、年代別では以下のようになります。
年代 | 割合 | 人口 |
---|---|---|
20代 | 15% | 180万人 |
30代 | 15% | 180万人 |
40代 | 15% | 180万人 |
また、男女比を1:1とすると、各年代男女とも90万人と考えることができます。 |
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 90万人 | 90万人 |
30代 | 90万人 | 90万人 |
40代 | 90万人 | 90万人 |
未婚率
次に各世代別の未婚率を考えてみます。
男性の方がやや婚期が遅いと考えられますので、男性の方を多めに設定しました。
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 70% | 60% |
30代 | 50% | 40% |
40代 | 30% | 20% |
婚活サイト利用率
まず、婚活手段として考えられるものを挙げてみると、
- 婚活サイト
- 婚活パーティ
- 友達の紹介
- 職場
- お見合い
- 結婚相談所 ・・・などがあると思います。
もちろん複数の手段で活動されている人も多いと思いますので、
全て足して100%になることはありませんが、
ここでは婚活サイトを利用している人を30%と仮定します。
計算する
以上の結果から、アプローチの式に当てはめて計算します。
婚活サイト利用者数 = 年代別人口 x 未婚率 x 婚活サイト利用率
男性
|年代|人口 x 未婚率 x 利用率|利用者数|
|:---:|:---:|:---:|:---:|---:|
|20代|90万人 x 70% x 30%|18.9万人|
|30代|90万人 x 50% x 30%|13.5万人|
|40代|90万人 x 30% x 30%|8.1万人|
|||40.5万人|
女性
|年代|人口 x 未婚率 x 利用率|利用者数|
|:---:|:---:|:---:|:---:|---:|
|20代|90万人 x 60% x 30%|16.2万人|
|30代|90万人 x 40% x 30%|10.8万人|
|40代|90万人 x 20% x 30%|5.4万人|
|||32.4万人|
合計で 約73万人 という概算が算出されました。
ところで、Diverse社の運営する youbride は先日、利用者数が100万人を突破しました。
また、他社の同様のサイトが10サイト程度は存在すると考えられます。
その中でいくつかのサイトを掛け持ちで利用している人を考慮しても、
婚活サイト市場全体としては100万人以上は利用しているのではないかと思われます。
概算が少なかった原因としては、
- 50代も含めるべきではなかったか?
- 婚活手段が性別、年代、地域によって差があるのではないだろうか?
といったことが考えられます。
また、年代別人口や未婚率については、総務省の統計データから正しい数字が公開されていますので、
それらを用いることでより精度の高い数字に近づくでしょう。
さいごに
近年はビッグデータ解析の手法や環境も整い、以前と比べて大量のデータを早く正確ににデータを
分析できるようになりました。とは言っても、何らかの調査を行う際にとりあえずデータを集めてみたり
分析してみたりということを先に始めてしまうと、時間はかかる、使われないデータになるかもしれない、
そして本来の目的を見失ってしまうということも往々にしてあると思います。
そこで、例えばフェルミ推定のようなツールを使って、数字は不明だとしても仮置きし、まず全体像を
捉えてからそれを分解して仮説検証(分析)を繰り返していくことの大切さを学んだので投稿しました。