$ \frac{22}{7} = 3.\underline{142857}$は、古代より$ \pi $の近似として知られてきました。真値の約$ 1.0004 $倍であり、割と精度の高い近似といえます。しかし、$ \pi \fallingdotseq 3.14\textbf{1}... $まで覚えていなければ$ \pi < \frac{22}{7} $とはわからないでしょう。というわけで、個人的に納得のいく方法で$ \pi < \frac{22}{7} $を示してみました。
概略(πを上から抑える)
以下の方法をとりました。
- $ x \in [1,\infty) \Rightarrow 0 \le f(x) $かつ$ \displaystyle \frac{\pi ^ 2}{6} + \sum_{n = 1}^\infty f(n) = q \in \mathbb{Q}$を満たす$f(x)$をガチャして探す
- WolframAlphaに突っ込んで、$q < \frac{1}{6}\bigr(\frac{22}{7}\bigl)^2 $を満たしていれば3に進む。そうでなければ、1に戻る
- $ f(x) $が目的に沿っていることを手計算で確かめる
その結果、$f(x) = \frac{1}{(x+4)(x+5)^2(x+6)} - \frac{1}{630 \cdot2^x} $を得ました。
具体的な値を求めます。
\begin{align}
\displaystyle \sum_{n = 1}^\infty f(n) & = \sum_{n = 1}^\infty \Biggr( \frac{1}{(n+4)(n+5)^2(n+6)} - \frac{1}{630 \cdot2^n} \Biggl) \\
& = \frac{1}{2}\sum_{n = 1}^\infty \biggr( \frac{1}{n+4} - \frac{1}{n+6} \biggl) - \sum_{n = 1}^\infty \frac{1}{(n+5)^2} - \sum_{n = 1}^\infty \frac{1}{630 \cdot 2 ^ n} \\
& = \frac{1}{2}\biggr( \frac{1}{5} + \frac{1}{6} \biggl) - \biggr(\frac{\pi^2}{6} - \frac{1}{1^2} - \frac{1}{2^2} - \frac{1}{3^2} - \frac{1}{4^2} - \frac{1}{5^2} \biggl) - \frac{1}{630} \\
& = \frac{4607}{2800} - \frac{\pi ^ 2}{6} \geq 0
\end{align}
手計算でもできる範囲ではないでしょうか。私は計算機に頼りましたが。
よって、
\begin{align}
\frac{\pi ^ 2}{6} \leq \frac{4607}{2800}
\end{align}
を得ました。左辺が有理数だと不快な気持ちになるので、等号を除きます。
\begin{align}
\frac{\pi ^ 2}{6} < \frac{4607}{2800}
\end{align}
そして、
\begin{align}
1 &< \frac{96800}{96747} = \frac{1}{6}\biggr(\frac{22}{7}\biggl)^2 \biggr(\frac{4607}{2800}\biggl)^{-1} \\
\frac{4607}{2800} &< \qquad\qquad\ \frac{1}{6}\biggr(\frac{22}{7}\biggl)^2 \\
\therefore\ & \frac{\pi ^ 2}{6} < \frac{4607}{2800} < \frac{1}{6}\biggr(\frac{22}{7}\biggl)^2
\end{align}
よって、$ \pi < \frac{22}{7}$を得ました。
本当に非負?
ところで、$ f(x) $が非負だと示したいです。そのために、以下の$g(x)$を考えます。このとき、$g'(x)$は以下のようになります。
\begin{align}
g(x) & = \ln\Biggr(\frac{(x+4)(x+5)^2(x+6)}{630\cdot2^x}\Biggl) \\
g'(x) & = \frac{1}{x+4} + \frac{2}{x + 5} + \frac{1}{x+6} - \ln (2)
\end{align}
$g'(x)$は$x \in (-4 ,\infty)$で明らかに単調減少なので、
\begin{align}
\displaystyle 1 < x' \Rightarrow \int^{x'+1}_{x'}g'(x)dx < \int^2_1 g'(x)dx
\end{align}
が成立します。
$ g(1) = 0 $と$ g(2) - g(1) < 0 $を考慮すると、$ x \in \mathbb{N} \Rightarrow g(x) \leq 0$です。式変形すると$ 0 \leq f(x) $となります。よって示せました。
余談
あ!なんだか急に、以下の式を示したくなってきました。
\frac{\sqrt[4]{972180}}{10} < \pi
というわけで、$\zeta(4)=\frac{\pi^4}{90}$($\zeta $はリーマンゼータ関数)を利用して、$\pi$を下から抑えます。
\begin{align}
f(x) & = \frac{1}{(x+4)^4} - \frac{1}{900 \cdot \bigr(\frac{3}{2}\bigl)^x} \\
g (x) & = \ln\Biggr(\frac{(x+4)^4}{900\cdot\bigr(\frac{3}{2}\bigl)^x}\Biggl)
\end{align}
がんばって計算すると、以下のことがわかります。
\begin{align}
x \in \{1,2,3,4,5,6\} & \Rightarrow g(x) < 0 \\
g(7) - g(6) & < 0
\end{align}
上から抑えたときと同様の議論をすると、$ x \in \mathbb{N} \Rightarrow 0 \le f(x)$とわかります。
\begin{align}
\displaystyle \sum_{n = 1}^\infty f(n) & = \sum_{n = 1}^\infty \Biggr( \frac{1}{(n+4)^4} - \frac{1}{900 \cdot \bigr(\frac{3}{2}\bigl)^n} \Biggl) \\
& = \sum_{n = 1}^\infty \frac{1}{(n+4)^4} - \sum_{n = 1}^\infty \frac{1}{900 \cdot \bigr(\frac{3}{2}\bigl)^n} \\
& = \biggr( \frac{\pi^4}{90} - \frac{1}{1^4} - \frac{1}{2^4} - \frac{1}{3^4} - \frac{1}{4^4} \biggl)- \frac{1}{450} \\
& = \frac{\pi^4}{90} - \frac{560377}{518400} \geq 0
\end{align}
上から抑えたときと同じように整理します。
\frac{560377}{518400} < \frac{\pi^4}{90}
分母・分子ともに6桁になってしまいました。さて気になるのが、$\frac{\sqrt[4]{972180}}{10} < \pi$の真偽です。上式の左辺と比較すればよいので、そうします。
\begin{align}
\biggr(\frac{560377}{518400}\biggl)^{-1} \frac{1}{90}\biggr(\frac{\sqrt[4]{972180}}{10}\biggl)^4 = \frac{13999392}{14009425} &< 1 \\
\frac{1}{90}\biggr(\frac{\sqrt[4]{972180}}{10}\biggl)^4\qquad\qquad\qquad &< \frac{560377}{518400}
\end{align}
うわあ。 WolframAlphaの便利さをひしひしと感じます。とにかく、$\frac{\sqrt[4]{972180}}{10} < \pi$は真だとわかりました。
$3.14 < \frac{\sqrt[4]{972180}}{10}$なので、$ \pi < \frac{22}{7} = 3.\underline{142857}$とあわせると、$ \pi $の冒頭3桁が$3.14$であることがわかりました。