はじめに
「ポモドーロ・テクニックが効かなくなった気がする」
そんな感覚を覚えたのは、GitHub Copilot を導入してからだった。
集中力はもはや“時間”ではなく“判断体力”に依存する――
本稿では、生成AIを導入した私たちの作業時間がどのように変化したのかを振り返り、古典的な時間管理術との乖離を整理する。キーワードは「集中の再定義」と「AIとの共進化」である。
1. 伝統的な“90分×3セット”理論とは何だったのか
かつて「90分×3セット」は集中力管理の黄金比とされていた。
これは東大受験生、プロ棋士、アスリートの練習時間など、脳科学的な集中持続時間から導かれた理論だ。
- 90分:深い集中状態(フロー)を保てる最長時間
- 3セット:朝/昼/夕のタイムブロックでの生産性ピーク
この時間割を支える手法のひとつがポモドーロ・テクニックである。
25分作業 + 5分休憩 を4セット行い、1時間に1度長めの休憩を取る
これは、「集中の持続時間を意図的に短く制限する」ことで疲労を防ぎ、継続的なパフォーマンスを保つことを目的としたものだ。
2. 生成AI導入後、集中力の意味が変わった
Copilot、ChatGPT、Cursor。
あらゆる補完・提案ツールが登場したことで、コードを書く行為は「覚えていることを打ち込む」から「判断して取捨選択する」に変化した。
たとえば従来は30分かかっていた処理の実装が、AI補完によって10分で終わるようになる。
ただ、その分「そのコードで本当に良いのか?」という判断時間が増える。
✅ 判断疲労が“新しい集中の敵”に
AIが出したコードを「信じる/疑う/再調整する」というメタ認知的負荷が強まったことで、集中力の構成要素は変質している。
時代 | 主な集中負荷 | 回復手段 |
---|---|---|
従来 | 長時間のタイピング・記憶 | 目を閉じる、糖分補給 |
現在 | 判断・選択・文脈理解 | 外出、無意識モードの導入 |
3. 現代に合った“新・集中設計”の提案
私は現在、以下のような時間割にシフトしている:
🔁 午前:45分×2ブロック(AI補完+レビュー)
- 最初の45分はノンストップでAI補完を走らせ、ロジック検証に集中
- 10分の散歩 or ストレッチ(判断体力の回復)
- 2セット目でレビューと改善に注力
☕ 昼:意識的に“脳を空にする”時間
- 食後はあえて無生産時間を挟む(スマホもAIも禁止)
- 最近は瞑想を取り入れている
🔁 午後:30分×3スプリント(対人作業や文章)
- 思考の“連射”が必要な資料作成・議事録・レビュー返信などを中心に
4. AI時代における“ポモドーロ再設計”のヒント
以下に、現代にフィットするポモドーロのアレンジ例をまとめる。
従来型 | 改良型(AI時代Ver.) | 説明 |
---|---|---|
25分作業 + 5分休憩 | 40分集中 + 8分脱メタ認知 | 40分で判断疲れが蓄積、休憩は“頭を使わない”行為が重要 |
1日4ポモドーロ×2ブロック | 午前:判断系 / 午後:発信系 | 頭の使い方を午前・午後で分離させる |
記録なし | ChatGPTに相談して記録 | 「考えすぎて詰まったら話す」が正義 |
おわりに:集中とは“持つ”ものではなく“使い方を選ぶ”ものへ
もはや“集中力があるかどうか”の時代ではない。
どんな集中を、どこに配分するかが鍵であり、それを支える時間設計は個人最適化の余地がある。
ポモドーロも、時間管理ツールも、単なる手段である。
生成AIと共に働く時代において、自分なりの集中スタイルをアップデートすることこそが、生産性の鍵である。