はじめに
こんにちは、株式会社GxPのヘルスケア事業部でマネージャーをしている豊田です。
この記事はグロースエクスパートナーズAdvent Calendar 2024の15日目の記事です。
私は前職で15年以上、半導体業界でエンジニアとして幅広い経験を積んできました。市場サポート業務から、半導体の製造プロセスを最適化するためのサービス設計に至るまで、多岐にわたるプロジェクトに携わり、様々な課題解決に取り組んできました。
これらの経験を通じて、組織の安定性や充実した環境の中で成長を実感する一方で、年々、意思決定の遅さや市場変化への柔軟な対応の難しさといった課題にも気づくようになりました。
そうしたなかで、よりスピード感のある環境で自身の経験を活かしたいという思いから、GxPへの転職を決意しました。
本稿では、安定した組織から機動性の高い組織に身を移す中で得た気づきや学びを元に、現在携わっているプロジェクトにおける経験を共有したいと思います。特に、キャリアの方向性を模索されている方々にとって、意思決定の基準や新しい挑戦のきっかけを提供できれば幸いです。
プロジェクトの概要
デジタルトランスフォーメーション(DX)の可能性は計り知れません。業務負担の軽減、サービスの質の向上、そして利用者へのきめ細やかな情報提供の実現など、多くの課題解決に貢献する可能性を秘めています。特に、データ駆動型の業務運営を実現するための基盤づくりという観点で、大きな期待が寄せられています。
私たちが携わっているシステムは、業務プロセスをデジタル化し、効率的にフロー管理するための革新的なソリューションです。このシステムでは、担当者が計画や指示を入力すると、それらの情報が自動的に構造化され、最適化された業務フローとして他の関係者に提供されます。これにより、関係者は明確なフローに従って業務を遂行でき、人為的なミスを防ぎつつ、業務効率と安全性の向上を同時に実現することが可能になります。
個人としての役割
私は現在、システムの開発プロセスの最適化とアジア市場への展開戦略の立案・実行を主導する立場にあります。これには、ヨーロッパに拠点を置く開発会社との密接な協力が欠かせません。特に、国際的なプロジェクトでは、双方の組織間での理解不足や期待値のズレが、プロジェクト進行のボトルネックとなることが少なくありません。異なる国や文化の中で連携を深めるには、単に言語の壁を越えるだけでなく、前提知識や業界特有の背景を共有した上での議論が必要です。このため、日々のコミュニケーションでは、正確で的確な情報伝達と、相手の状況や意図を汲み取り互いの視点を調整する姿勢を大切にしています。
大企業とスタートアップの協業
映画「フォードVSフェラーリ」は、自動車業界の巨人フォードが、小規模ながら高い専門性を持つレーシングチームと協力し、世界最高峰のレース、ル・マン24時間レースに挑戦する実話に基づいた物語です。この映画は、大企業と中小企業それぞれの強みを活かした理想的なコラボレーションの姿を描いています。大企業単独では実現困難な、大胆なリスクテイクと迅速な意思決定を、中小企業のアジリティが補完することで、最終的な勝利を手にする過程が印象的に描かれています。
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資金力とアジリティが生んだ迅速な開発
フォードはレースに勝つため、GT40(ちなみに、車高が40インチ(約101.6㎝)だったことから”GT40″と呼ばれています)という新型車両を設計するプロジェクトを立ち上げました。レーシングチームは、大企業の膨大なリソースを活用し、競争力のあるエンジンを短期間で車体に搭載することに成功しました。この場面は、フォードの資金力が専門チームの柔軟な対応力を最大限に引き出し、迅速な改良を可能にした象徴的なシーンでした。そして、この後マイルズは、小規模チームが発揮するアジリティを最大限に活かし、試行錯誤を繰り返しながら、GT40の設計を改良し続け、短期間で試作車から戦闘力の高いレーシングカーに仕上げました。この柔軟性が、最終的にフォードの勝利に繋がる重要な要素となりました。 -
チームメンバーの個々の裁量と迅速なアクション
小規模チームのメンバーはそれぞれが自分の役割を果たしつつ、問題が発生した際には即座に対応し、素早くアクションを起こしました。例えば、マイルズとその仲間たちは、レース中に車両のトラブルや変更点を瞬時に判断し、適切な対応をすることができました。これにより、フォードは競技中でも素早い修正や改善を行うことができ、大企業の通常のプロセスでは実現できない機動力を発揮しました。
このように、映画「フォードVSフェラーリ」における中小企業のアジリティは、大企業の資金力やリソースに加え、素早い意思決定と柔軟な対応力が競争を勝ち抜く鍵となる重要な要素として描かれています。
現場での実践
私たちの現場でも、この映画と同様の構図が見られます。大企業は確立されたブランド力や豊富なリソースを背景に、長期的な視点で大規模なプロジェクトを推進する力がありますが、一方で、市場の変化への迅速な対応には特有の課題も存在します。一方、私たちの組織は、フラットな構造を活かし、迅速な意思決定と柔軟な対応を行うことで、大企業の強みを補完し、プロジェクト全体のスピードと品質向上に貢献することを目指しています。この両者の特性を最大限に活かし、相互補完的な関係を築くことで、システムのグローバル展開を成功に導けるため行った事例を紹介します。
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組織間連携の強化:コミュニケーションハブ
大規模プロジェクトではよく見られる課題ですが、私たちはこれを早期に特定し、改善に向けた取り組みを進めています。特に、責任の所在が不明確な場合にはこの問題が顕著です。これに対して、責任の所在を明確に定義するには時間がかかりますが、プロジェクトを遅延なく進めることが重要です。このために、ボトルネックを特定し、調整役を設けることで、プロジェクト全体がスムーズに進むような仕組みづくりを大切にしています。これにより、関係者全体がメリットを享受できる形を目指しています。具体的には、部門間で定期的にミーティングを開催し、プロジェクトの進行状況を客観的にまとめたレポートを作成しています。
さらに、コンパクトな開発チームを活かし、メンバー間で密なコミュニケーションを取りながら、問題発生時にも即座に対応することができました。 -
適切なKPIの設定
システム導入をゴールと考えるケースは少なくありませんが、私たちの最終的な目標は、システムが現場で正しく、かつ広く使用されることにあります。そのためには、システム導入後の実際の活用度や、ユーザーの満足度、業務効率の向上といった成果を具体的に測るための 適切なKPI(重要業績評価指標) の設定が不可欠です。
現在のプロジェクトの進行に伴い、KPIの設計と運用をより精緻化する必要性を強く感じています。
適切なKPIの設定と運用を通じて、プロジェクト全体を一貫性を持って推進し、早期の軌道修正や成果の最大化を可能にする体制を構築していきます。このような取り組みは、プロジェクトの成功に直結する重要な要素と考えています。
今後の展望
この協業モデルは、大企業の持つ「安定性」と弊社の持つ「機動性」を結集し、双方にとって大きなシナジーを生むものです。今後もこの協業モデルを実践し続けることで、失敗と成功を重ね、持続的な成長を目指します。
結びに
大企業での勤務は安定性や充実した福利厚生などの魅力がありますが、急速な変化が求められる現代において、機動性の高い環境で働くことも非常に価値のある選択肢となり得ます。私の経験が、キャリアの方向性を模索している方々にとって何らかの示唆となれば幸いです。キャリアに迷われている方は、ぜひ一歩踏み出して新しい可能性を探してみてください!