はじめに
HDDやSSDなどでディスク障害が疑われる場合,まず確認するのは,ディスク自体が持つ自己診断機能「S.M.A.R.T.」の情報だろう.Windowsにおいて,S.M.A.R.T.情報を確認する上で強力なツールとして,ひよひよ氏が公開している「CrystalDiskInfo」がある.
「CrystalDiskInfo」は非常に多くのディスクに対応し,Windows ServerのServerCoreインストールであっても動作するが,OSがブートできなくては使用することができない.そこで,Windows オペレーティング システムのインストール、展開、修復に使われる,RAM上で動作する軽量Windowsの「Windows PE」を用いて,CrystalDiskInfoを起動するだけのブータブルUSBを作成する方法を説明する.
なお,Windows PEの構成に必須の「Windows ADK for Windows 10 Version 1511」はインストールが完了しているものとする.
1. [展開およびイメージング ツール環境]の起動
スタートメニューから,[展開およびイメージング ツール環境] を右クリックし、[管理者として実行]
管理者として実行しないと,DISMコマンドが使用できない.
2. Windows PE ファイルのコピー
作業用のフォルダ(E:\)にWindows PEのファイルをcopypeコマンドを用いてコピーする.
32bit用のWindows PEの場合は
copype x86 "E:\WinPE_x86"
を実行
64bit用のWindows PEの場合は
copype amd64 "E:\WinPE_x64"
を実行(以降は64bit用で説明)
3. イメージのマウント
Windows PEのイメージファイル(boot.wim)を作業用のフォルダにマウントする.
dism /Mount-Image /ImageFile:"E:\WinPE_x64\media\sources\boot.wim" /Index:1 /MountDir:"E:\WinPE_x64\mount"
4. パッケージの追加
「WinPE-WMI」パッケージを追加する.
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /add-package /packagepath:"C:\Program Files (x86)\Windows Kits\10\Assessment and Deployment Kit\Windows Preinstallation Environment\amd64\WinPE_OCs\WinPE-WMI.cab"
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /add-package /packagepath:"C:\Program Files (x86)\Windows Kits\10\Assessment and Deployment Kit\Windows Preinstallation Environment\amd64\WinPE_OCs\ja-jp\WinPE-WMI_ja-jp.cab"
5. 日本語パッケージの追加と適用
5.1 インストールされている言語の確認
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /Get-Intl
en-USがインストールされている
5.2 日本語ローカライズパッケージの追加
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /add-package /packagepath:"C:\Program Files (x86)\Windows Kits\10\Assessment and Deployment Kit\Windows Preinstallation Environment\amd64\WinPE_OCs\WinPE-FontSupport-JA-JP.cab"
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /add-package /packagepath:"C:\Program Files (x86)\Windows Kits\10\Assessment and Deployment Kit\Windows Preinstallation Environment\amd64\WinPE_OCs\ja-jp\lp.cab"
5.3 Windows PEの日本語化
- UI 言語,システムロケール,ユーザーロケール,入力ロケールを設定
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /Set-AllIntl:ja-JP
- 入力ロケールを設定
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /set-InputLocale:0411:00000411
- タイムゾーンを設定
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /Set-TimeZone:"Tokyo Standard Time"
- キーボードドライバの設定
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /Set-LayeredDriver:6
- セットアップで使われる既定の言語を設定
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /Set-SetupUILang:ja-JP
- セットアップで使われる既定の言語を設定
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /Gen-LangINI /distribution:"E:\WinPE_x64\media"
5.4 インストールされている言語の確認
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /Get-Intl
日本語が選択されている.
6. CrystalDiskInfoのイメージへの追加
hiyohiyo氏のページより,CrystalDiskInfoのポータブル版(zip)をダウンロードする.
http://crystalmark.info/download/
なお,通常版,Shizuku Editionのどちらを用いても構わない.(以降はShizuku Editionで説明する)
ダウンロードしたzipファイルを展開し,「CrystalDiskInfo6_7_4Shizuku」フォルダを「CrystalDiskInfo」にリネームして「E:\WinPE_x64\mount\Program Files\」以下にコピーする.
7. スタートアップスクリプトの修正
Windows PE起動時にCrystalDiskInfoを自動起動するようにスタートアップスクリプトを修正する.
「E:\WinPE_x64\mount\Windows\System32\startnet.cmd」を以下の内容に変更する.
wpeinit
@echo off
"x:\Program Files\CrystalDiskInfo\DiskInfoSx64.exe"
echo WindowsPEをシャットダウンするには「wpeutil shutdown」を使用してください。
@echo on
8. イメージのコミットとアンマウント
今までの作業用のフォルダの変更箇所をイメージファイル(boot.wim)にコミットして,アンマウントする.
dism /Unmount-Image /mountdir:"E:\WinPE_x64\mount" /commit
※64bitのWindows PEでは,64bitネイティブのアプリケーションしか動作しない.
9. ISOイメージの作成
Makewinpemediaコマンドを用いて,ISOイメージファイルを生成する.
Makewinpemedia /iso "E:\WinPE_x64" "E:\WinPE_CDI_x64.iso"
※直接USBフラッシュメモリに書き込むには,次のコマンドラインを実行する.
Makewinpemedia /ufd "E:\WinPE_x64" F:
(「F:」はUSBフラッシュメモリのドライブ文字とする)
その他
デバイスドライバが必要な場合は,イメージ編集中に
dism /Image:"E:\WinPE_x64\mount" /Add-Driver /Driver:[infファイルのあるフォルダ]
とすることで,デバイスドライバを含めることができる.
詳しくは次の参考ページを参照してほしい.
- Windows 8.1 Updateに対応したカスタマイズしたWindows PE 5.1を用意する(その2)
https://infra20th.wordpress.com/2014/07/10/windows-8-1-update%E3%81%AB%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%97%E3%81%9Fwindows-pe-5-1%E3%82%92%E7%94%A8%E6%84%8F%E3%81%99%E3%82%8B-2/ - MSDN - オフラインの Windows PE イメージにデバイス ドライバーを追加する
https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/dd799289(v=ws.10).aspx
参考ページ
- MSDN - DISM イメージ管理のコマンドラインオプション
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/windows/hardware/dn898549.aspx - MSDN - DISM の地域と言語サービスのコマンドラインオプション
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/windows/hardware/dn898550.aspx - MSDN - Makewinpemediaのコマンドラインオプション
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/windows/hardware/dn898587.aspx - @IT - 管理者必携のトラブルシューティングツール「Windows PE 5.0」の起動用USBメモリを作成する (2/2)
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1402/13/news133_2.html - 量産メモ帳 - Windows 10 で Windows PE のディスクイメージを作成する。
http://rms-099.hatenablog.jp/entry/2015/10/06/000000