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海外駐在に直面したギャップ

Last updated at Posted at 2022-09-13

はじめに

 約4年間ドイツに駐在して、そこで体験した日本とは違う経験をご紹介しようと思います。
 ただし本記事は私が体験した話をもとに書いているので、ここに書いたことが全てのケースで起こるとは限りませんのでご注意ください。

業務概要 

 まず私の簡単な職務履歴となります。
 インフラ関連(PC、サーバー、ネットワーク)のプロジェクトにアサインされることが多く、あまりシステム開発などのいわゆるアプリ系プロジェクトにはアサインされたことがほぼありませんでした。
 駐在前は、ITサポートからお客様のITインフラ機器刷新や事務所移転などをお手伝いさせていただくことがほとんどでした。

駐在先での業務概要

 IT部門のマネージャーとしてアサインされ以下のようなことを行っておりました。
  対象:ヨーロッパ・ロシア地域にある全オフィス
  タスク:・部門所属スタッフの管理
      ・ITインフラ保守運用
      ・業務システムの問合せ一次窓口
      ・プロジェクトの実行(地域内及び全社グローバルなプロジェクト)
      ・組織運営業務 等
 業務内容としては、他のブログなどでも確認できるようなIT駐在員としては一般的な業務内容と思います。
 今までは導入側のエンジニアとして働いていた経験しかなく、駐在先で受入側つまりは社内エンジニアに立場が変わったことと業務システム問合せ一次窓口を担当することは私には初めての経験でした。

労働環境の違い

 それではまず「労働環境の違い」をご紹介します。

労働スペース

 よく映画等のワンシーンで見る様な個室型のオフィスが多いようですが、私が駐在先のオフィスは日本のようなオープンスペースに机が並んでいる形のオフィスでした。具体的な一人当たりの面積は不明だったのですが、一人当たりの労働スペースは日本より広く、デスクが大きく従業員全員自分のスペースで余裕をもって働ける環境でした。
 ただ、レイアウトを変更するごとに労働局の審査があり、机と机の間のスペースできちんと人が椅子を気にせず歩けるほど余裕があるか、窓から入る採光は十分なのかなど、かなり厳しく確認をされていました。
 日本とは異なり、隣の人の距離感広いため、非常に働きやすかった印象を持っています。

勤務

 少し前に日本でも話題になっていたと思いますが、定時退勤は当たり前で一日働ける労働時間も最大10時間と法令で定められています。また、日曜日の労働は基本的に禁止されており、働く場合は事前に労働局の許可が必要という話を聞いたことがあります。ちなみに、日曜日の労働については宗教上の都合が強いようで、一般企業のみならず小売店なども日曜日は全てクローズとなり、町はレストランしか開いていない状態となります。休暇については日本とは異なり、短くても2週間、長く取得すると約1か月ほど休暇を取得します。
 そのため、仕事で問題が起こっていても定時に帰宅してしまう人も多かったり、担当者が休暇していると休暇から戻ってくるまで待つなど、そういったギャップには非常に苦労しました。
 最近日本も36協定を順守強化が進んできた為、かなり労働時間に関しては欧米に似てきてあまり変わらなくなってきたのかなと感じております。早く休暇のほうも欧米化してほしいものです。

働き方の違い

続いて働き方の違いの紹介します。

分業制

 前項で少し触れましたが、担当者が休暇を取得しているとその人が担当している業務が止まることがあります。それは分業制が一般的であり、日本的なチーム対応しているところが少ないからのようです。これは企業だけではなく、外国人局などの行政機関もそのような対応をしていました。社内限らず何か質問してもその人が担当ではないと、「私は担当ではないので、○○さんに聞いて」とたらい回しに合うことがしばしばありました。
 そのため、仕事でプロジェクトなどを進めていく上では、だれが何を担当しているか把握し、かつスケジュールなどを組み立てる際に休暇などを把握して行いと円滑な進行が難しかったです。
 少し話が脱線しますが、ドイツで子供が生まれた際に外国人局での手続きが必要だったのですが、通常1-2週間ぐらいで完了する手続きが約1か月ぐらいかかったことがあります。理由を確認したところ、担当者が休暇中だったと言われびっくりしたのは今でも覚えています。

スケジュール/タスク管理

 ITは万国共通な為、「プロジェクト管理」という概念はもちろんありますがかなり煩雑印象を持っています。社内/社外に関わらずプロジェクトのスケジュールを考えてもガントチャートなどはあまり出てきたことがありません。常に完了予定日や作業進捗を確認しなければプロジェクトを掌握ができず、向こう側より適宜報告が来ることは稀なことでした。一度散々ヒアリングしていても急遽予定よりかなりの前倒しで完了したことがあり、事前調査は何だったのかと思ったことがあります。
 これはその環境というか国民性の違いかなと個人的に勝手に理解していますが、「完了すればよい」という考え方が強いに感じていました。プロジェクトもとりあえず導入にして何か問題あれば、発生時に適宜対応してもらうことが多かったです。
 タスクの管理についてもかなり煩雑で、問合せをしても連絡が返ってこなかったりと日本の様にとりあえずレスポンスするというのがあまりないような気がしました。
 そのため、日々の進捗確認が私の中ではかなり大事な管理タスクとなっており、こういった経験したためか、かなり根気強く仕事ができるようになったと最近感じております。

ドキュメント

 自分でファイルサーバーを漁り資料を探したりしていたのですが、マニュアルがあまりないと感じておりました。
 マニュアルの作成を依頼しても、なかなか提出してもらえないことが多かったです。理由を聞くと「作成の必要性が理解できない、私は既にその業務をできているから今さらマニュアルは不要では?」と言われました。これは先ほど触れた「分業」文化の影響なのかなと考えております。確かに業務は遂行できているので問題はないのですが、その人が病気になったり、休暇取得中で不在になった時などは考えていないのかなと思いました。
 ただ、管理者としてはIT運用責任者も担っているため、マニュアル作成はかなりしつこく依頼をしていきました。最初は作成意図や効果を理解してもらえなかったため、なかなかひどいものでしたが、いざその人が忙しくほかのスタッフに作業を依頼する際に作成したマニュアルが役に立ち、意図や効果を理解してもらえました。
 ローカルITベンダーとのプロジェクトでも提案資料以外ドキュメントが出てこないことはいつもでした。構成図などをドキュメントで欲しいといっても口頭での説明だけだったり、複雑じゃないからそんなの必要ないというようなことで、導入は進むけどこちらの環境のヒアリングや整理などを全くしないので、なかなか作業が完了しないということもよくありました。

コミュニケーション

 コミュニケーションは、正直日本よりだいぶ楽に感じました。
 日本では「○○部長と打合せ」というシチュエーションはかなり緊張しますし、身構えると思います。言い方一つ間違えれば気分害してしまう恐れ等など、色々な緊張感を感じて打合せに臨む方々多いと思います。
 海外ではどうしても英語でのコミュニケーションになるため、敬語などの概念があまりなく、職位が上の人と話すにも日本より気軽さがあります。立場上どうしても各部署の部長クラスの人たちや社外の偉い人たちと話す機会が多く、最初は英語に自信がなかったので緊張はしましたが、帰国前ではかなりフランクに話すことができていたと思います。
 ただし、「連絡」という観点では社用携帯を渡しても退勤後の連絡は一切応じない人が多いです。IT部門では業務時間外でも障害対応など行う必要があるので私の連絡はほとんどのスタッフが受話してくれておりました。ただ、受話しないスタッフもいたのでそういう人たちには携帯は不要なのでは?とよく直接していたことがあります。あくまで会社支給の携帯電話は仕事をするもので業務時間外は対応不要と考えているのかなと思います。

駐在をしていて気づいたこと

 ドイツ人だけではなく色々な人種と仕事をすると日本では考えられない感覚での出来事が多く発生します。ただ、仕事の仕方は文化の違いからきているところが大きいと私は考えています。そのため、コミュニケーションする人たちを理解すると共に文化も理解する必要があります。労働時間や分業制も我々からは不便なことではありますが、その中で生きていれば当たり前です。そこを考えても文化の差でしかない為、改善するのは難しいです。そういった条件を理解した上で、どのように仕事をしていくのかが大事なのではないかと思います。
 パンデミックが発生した際に強く感じたのが彼らは「割り切りが上手」なのではないかと思います。何かうまくいかなかったり、できないことに対面した際に彼らは常に「できなかったらしょうがない」、「他のやり方を考えよう」という様な前向きなとらえ方が多かったです。事柄にもよりますが「どうする?」、「原因は?」など起こったことに対して固執するより、取れる策の中で次のアクションをどうするかという前向きな姿勢は「効率的」と思いました。

最後に

 以上が私の体験したことの一部となります。 
 書き出したらこのほかにもいろいろ出てきましたので、もし機会があればまた投稿させていただきます。
また、繰り返しになりますがあくまで私の経験であり同じようなことに直面するとは限りませんのでご注意ください。

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