一般に、SSDと言ったら、2.5inch SATAか、NVMeのM.2か……容量も、1TBぐらいが標準なのだろうか?
自動運転の開発の現場では、一日20TB以上、1台の車でロギングすることがある。HDDだったら安いだろう! と思っても、秒速5GB(40Gbps)の世界なので、SATAの速度(6Gbps、実際はもっと遅い)では間に合わない。
自動運転でなぜ高速SSDを使うのか?
答えは簡単、「とりあえず生(RAW)データ」を記録したいからだ。人によっては、「いやいや、圧縮して保存すれば4Kといえどそんなデータにならんだろう」という人もいるが、
- 4Kカメラ 30fps*複数台のデータを、リアルタイムで圧縮できるか?
遅延してはならない、フレーム欠落もダメ。しかもGPU台数には制限ある(車載なので)。 - どの程度圧縮すればいいかわからない
自動運転時には、RAWデータを使う。圧縮したら、AI認識結果が変わる可能性あり。
AI利用などを考えると、とりあえずRAWで取っておけば、圧縮で問題ないことが評価できれば、後々で圧縮すればよい。が、先に圧縮しておくと、設計判断をしたタイミングで、それ以前に記録したデータが使えなくなってしまう可能性がある。
そもそも、なんで記録しておく必要あるのか? というと、開発中に、何度もテストをして、設計したロジックの確からしさを評価したいからである。HIL/SILで、車載ECUに対してのテストデータをインジェクションするテスト方法が一般的であるから、同様にやりたければそのデータが必要となるのだ。
車載専用のSSDというのはある?
あるのかもしれないが、聞いたことはない。HDDについては、円盤を回転させ、シークヘッドを移動させる構造上、振動には弱い。なのでそれ専用のものがあるのかもしれないが、SSDについては、可動部がないので振動の心配は大きくない。
大容量SSDとは?
数年前、まだ低容量のSSDしかないときは、大量のデータを記録できるように、複数のM.2 SSDをRAID0で組んで、大きいSSDを構築していた(例:4TB*4=16TB)。
RAIDとは、サーバーなどで用いられる複数ドライブを束ねる技術である(雑説明)。なので、その機能を使っている。……車載で大丈夫なの? というと、なかなかいいものではなかった(強引にやっているため、信頼性が落ちていた)。
現在では、入手性がよく、高速で、大容量のSSDと言えば、U.2 SSDである。
今のところ、15TB、30TBあたりが入手できる。Mouserでいくつか扱いがある。大体、Kingston、Solidigm、Micron。Amazonでは、M.2→U.2変換するものが売っている。
ただ、そもそもこのU.2 SSDという製品は、恐らく(というかほぼ)サーバーなどのデータセンターでの利用を目的として作られている。なのでそれなりに熱が発生することが考えられるのと、コネクタ部分の挿抜回数に限りがある可能性がある。
他にも、E1.LやE3.Sと言ったかなり限定的な(マニアックな)用途のSSDも存在するが、あまりに一般的ではない製品なので、ここでは割愛
U.2 SSDはどう使うの?
基本はデータセンターなので、ラックマウントNASの表にさす。
しかし、車載機ではないので、使うとしたら、特殊な機材が必要となる。
ニッチな業界であるが、ICY DOCKというメーカーが、U.2 SSD用のものを作っている。
PCIeに取り付け、抜き差し可能なものがある。MB111VP-B
これはとても使いやすいが、SSDの筐体の都合上、7mmのU.2 SSDしか使用できない。高性能で大容量のU.2 SSDは、大体15mmなので、ちゃんと使えるかどうかは確認が必要。
一方で、デスクトップPCのフロント2.5inchドライブベイにさすようなものもある。MB021VP-B
ただ、後ろの面からSlimline SAS(SFF-8654)コネクタで通信させる必要がある。これはPCIeなどから変換できるが、ケーブルを介すとNVMeの信号減衰が起こってしまうようで、動作が非常に不安定となる可能性がある。私の場合は、10回に1回ぐらいSSDを認識する、と言った具合で不安定だった。
Amazonでは、抜き差しを必要としなければ比較的(?)手軽に手に入る。
これに関しては……何の問題もなくU.2 SSDを認識する。なので諸問題に対応できる手段だが、SSDの挿抜には対応していない部分がネック。ちなみにこれにPCIeケーブルを延長したら、認識しなくなってしまった。なので、PCIeの延長は即動作不安定につながるようだ。
速度については、SSDでそれぞれ異なるが、大体R/Wそれぞれ40Gbpsぐらいの性能が出たらいいな、ぐらいに思っておくとよい。
最後に
U.2 SSDは、高速で大容量なSSDとして注目? されている。スピードもあるので、M.2より大容量を選ぶならあり……かもしれないが、そもそもこんな機材を個人で使おうというのはちょっと時期早々。値段も高いので。
車載ロギング用としては、とても良い。しかし、運用的には、
- 取り出しやすいこと
- ちゃんと冷却できること
- 入手しやすいこと
- 安価であること
などを考量すると、導入するかは一度正確に見てみたほうがいいのではないだろうか。
今日はここまで。